『喝采』（かっさい、The Country Girl）は1950年に書かれ、1954年にドラマ映画化された作品。クリフォード・オデッツの舞台劇『The Country Girl』（1950年）をジョージ・シートンが映画化。フランクをビング・クロスビー、ジョージーをグレース・ケリー、バーニーをウィリアム・ホールデンが演じ、グレイス・ケリーがアカデミー主演女優賞を、ジョージ・シートンが脚色賞を受賞した。衣裳はイーディス・ヘッドが手がけた。日本でも 1955 年に『喝采』の邦題で公開。
主人公は酒浸りで落ちぶれたかつての名優。再起をかけたバックステージもので、演劇作品を作り上げていく過程を主軸にし、そこに夫婦の有り様を巧みにより合わせたドラマ、実力派キャストが、セリフ劇の醍醐味（だいごみ）を味わわせてくれる好舞台だ。加藤健一事務所では2017年に上演し、2019年、再演となる。かつての名優・フランク・エルジンを演じるのは加藤健一、その妻・ジョージー・エルジンに竹下景子。プロデューサーのフィル・クックに奥村洋治、舞台監督のラリーは林次樹、若い劇作家・ポール・アンガーはスタジオライフ所属の山本芳樹、新人女優のナンシー・ストッダードに寺田みなみ、演出家のバーニー・ドッドは小須田康人、としっかりとした布陣。演出は初演に引き続き松本祐子が手がける。
初演時のインタビューで、本作の魅力の一つを演出の松本祐子は「演劇によって苦しみ、演劇によって救われる というのがね、面白い。名優を復活させるという大目的に、登場人物それぞれが皆で進んでいくという作品です が、その中で描かれる登場人物それぞれの心の葛藤が面白いと思います。」と語り、そして、昨年 2018 年 12 月 1 日(土)加藤健一事務所・江古田スタジオ“スタジオK”でスタートした再演稽古の顔合せ会では、「再演が できるということは本当にありがたいこと。再演の稽古では、初演で見落としていたことや新しい発見が必ずあ ります。それを丁寧に拾って研磨して、さらに深め高めた舞台にしていきましょう。」と意気込みをコメント。 この頼もしい松本祐子の演出のもと、今回の再演も、加藤健一は名優としての再起のドラマをがむしゃらに、竹下景子は妻として、女としての再起のドラマをひたむきに、全力で! 謀らずも自らが二人のトリックスターとなってしまうバーニー役として新たに加わる小須田康人ほか、脇を固める魅力ある役者布陣。特に妻役の竹下景子、この『喝采』で、舞台女優・竹下景子の代表作にもなったと言える。原題は『The Country Girl』。直訳では「田舎の女の子」という意味になるが、これは竹下景子演じるジョージーのことを指している。 若いころ、ドラマを演じる役者フランクに強く惹かれた、田舎娘の空想好きな少女、ジョージー。舞台俳優であ る夫フランク・エルジンの大ファンであり、夫の仕事っぷりが大好きだったジョージー。しかし今は・・・。物語は、この竹下景子演じるジョージーを軸にして展開。理想と現実のはざまで揺れ動く大人になった田舎娘の心情を、そして夫婦の機微を、竹下景子が静かに豊かに演じた初演は、観るものの心を揺さぶった。初演で出演が決まった際、「よくぞこの役を私にふってくださいました!」と喜びを語った竹下は、この度の再演の稽古でもひたむきに粘り強くこの役に向き合っている。その姿はいじらしくもありたくましくもあり。まるでそこにジョージーがいるかのよう。まさに竹下景子のはまり役といえるであろう。
また、文学座の乘峯雅寛による舞台美術、2017年度 加藤健一事務所『喝采』ほかで第25回読売演劇大賞優秀スタッフ賞を受賞、こちらも期待したい。
＜出演者コメント＞
[加藤健一(フランク・エルジン)] この歳になると完璧に台詞を覚えることが難しくなって、本番中は何も考えなくても台詞が出 てこなくてはいけないんだけど、時々思いだすという作業が入ってしまう。今回はそんな台詞 の束縛から逃れて、もっと自由になって初演の成果を越えたいと思います。
[竹下景子(ジョージ-・エルジン)] タフなジョージーを余裕を持って演じたい。いえ、ジョージーの力を借りてタフに、願わくば 軽やかに演じたいと思います。
[奥村洋治(フィル・クック) ]この芝居には、一発で状況がひっくり返るというドラマティックな面白さがあって、こんない い芝居に役者として出られることは役者として鼻高々でラッパを吹きたくなります!
[林 次樹(ラリー)] 僕が演じるラリーという舞台監督が、舞台で生きられるように練り上げたいと思います。
[山本芳樹(ポール・アンガー)] 今の稽古は再演であることを感じさせない初演さながらの稽古なので、とにかくすごく楽しみ です。
[寺田みなみ(ナンシーストッダード)]再演に出演することが初めてなので、とっても嬉しいです。新たに作っていくことがこんな に難しいんだと日々実感しています。また発見できることがたくさんあると思うので、しっ かり見つけてがんばります!
[小須田康人(バーニー・ドッド)] 僕が演じる演出家のバーニー・ドッドは、僕とは全然タイプの違う性格なんですよ。すごく情 熱的で純粋で、でも人と意見が違うと平気で暴言を吐いたりもして、僕はこんな人間とは絶対友達になれません(笑)でもこの作品中に、「俺は自分の役を好きにならなくちゃいけないんだ。」というフランクの台詞があるので、僕も頑張ってバーニー・ドッドを好きになって、その 姿を皆様にお見せできたらと思います。
＜加藤健一より＞
ブロードウェイで演劇をやろうとするカンパニーは、当然ロングラン公演を目指しています。この『喝采』という作品の中に描かれているカンパニーも苦心惨憺の末にブロードウェイにたどり着くというストーリーですが、実際の『喝采』という舞台は、ブロードウェイでしっかりとロングラン公演をしています。しかし日本では、公演日程を決定した上で劇場を借りるというシステムになっているので、どんなに公演の評判が良くてもロングランは夢のまた夢です。そこで僕たちが切望するのは再演です。 今回の『喝采』の再演には、僕たちの夢が一杯に詰っています。初演よりも完成度を 上げ、より充実した舞台に立ちたいという夢。もっともっと沢山の人々に僕たちが創り 上げたこの作品を観て頂きたいという夢。この作品が縁となって出会ったこのカンパ ニーの仲間たちとより仲良くなりたいという夢。 毎日熱い稽古を繰り返しながら『喝采』の本番に向けて、僕の夢は膨らむばかりです。
加藤健一事務所プロデューサー 加藤健一
＜STORY＞
プロデューサーのクック(奥村洋治)と演出家のバーニー(小須田康人)、作家のアンガー(山本芳樹)、舞台監督 のラリー(林 次樹)は、陰鬱な表情で黙り込んでいた。初日を間近に控えた舞台の主演俳優が、突然いなくなってしま ったのだ。その代役として、かつての名優フランク(加藤健一)に白羽の矢が立つ。彼は酒びたりで落ちぶれていたが、バ ーニーの熱烈な説得に負けて役を引き受け、長いブランクと酒の誘惑に苦悩しながらも、新人女優のナンシー(寺田み なみ)らと共に稽古に励む。妻ジョージー(竹下景子)も、献身的に夫を支える。 地方公演の幕が開け、初日の劇評でナーバスになったフランクは、ジョージーともぶつかり自暴自棄になってしまう。そして 白日の下に晒される、夫婦の過去と真実の姿。急接近するバーニーとジョージー。 ブロードウェイの初日は容赦なく迫る―――。
【公演概要】
加藤健一事務所 vol.104「喝采」
2019 年 3 月 13 日(水)~17 日(日)下北沢・本多劇場
作:クリフォード・オデッツ
訳:小田島恒志 小田島則子
演出:松本祐子
出演：加藤健一 竹下景子 奥村洋治(ワンツーワークス) 林 次樹(P カンパニー) 山本芳樹(StudioLife) 寺田みなみ 小須田康人
