1972年の初演にてトニー賞5部門を受賞した名作中の名作で、2013年には新演出版が発表されトニー賞を4部門受賞したブロードウェイミュージカル『PIPPIN』。今回の日本語版公演は新演出版を手がけたダイアン・パウエル自ら演出し、本場のクリエイティブ・チームも再集結。ブロードウェイで感動を与えた公演の世界観そのままに、出演者のみ日本人となる貴重な公演となる。
物語は、初代神聖ローマ皇帝カール大帝の息子ピピンが、王子として何の不自由もなく育ち、いよいよ社会に出ようとそこから始まる自分探しの旅を描く。その旅の中でピピンは手当たり次第に挑戦を続け、さまよい、葛藤しながら、色々な人に出会っていく。権力を重んじる人、体裁を重んじる人、お金が好きな人、人生を謳歌する人、嘘つき、人殺し、夢を見ることをやめた人、そして、夢を見つけられない自分……。
今回の日本語版には、ダイアン自身が主役のピピン役に選んだ城田優、そしてミュージカル初出演となるCrystal Kay、更に今井清隆、霧矢大夢、宮澤エマ、岡田亮輔、中尾ミエ、前田美波里といった実力派俳優陣が出演し、迫力ある歌・ダンス・アクロバットの華やかさに彩られながら、1人の青年が大人へ成長していく心揺さぶる物語が繰り広げらる。
その製作発表が都内で行われ、ピピン役の城田、リーディング・プレイヤー役のCrystal Kay、バーサ役の中尾/前田（Wキャスト）が登壇した。
製作発表は登壇者たちによる舞台衣装での楽曲披露から開始。1曲目は、Crystal Kayが「これからマジカルな世界をみなさんに見せてあげるよというちょっとミステリアスで楽しい曲」と語るオープニングナンバーの「Magic To Do」。
2曲目は、Wキャストとして今日だけの特別なデュエットである中尾と前田による「No Time At All」。この曲について、中尾は「この歌はまさに自分たちのそのままの心情を歌っている歌。『いつの日かお前も、私の年になる♪』という歌詞が、自分の気持ちをそのままぶつけているようで、とても歌いやすいです（笑）」と笑顔を見せた。
前田は「ピピン王子に、『人生というものを謳歌しないとダメよ。あなた自身が選んで進んでいかないと楽しくなんかならないよ』というようなことを歌っている歌です」と解説した。
最後に、城田が「いろんな人たちにそれぞれの場所があるんだけど、じゃあ僕はいったいどこに行けばいいんだろうかという、まさに心情が吐露される歌です」と語る「Corner of the Sky」が披露された。
会見では、まずそれぞれが役どころの説明を行った。城田は「ピピンは自分がどこに行くべきなのか、何をするべきなのかということで、誰もが人生で一度や二度は経験するような岐路に立つんですが、そこで、Crystal Kayさん演じるリーディング・プレイヤーが色々と僕を導いてくれるんです」とコメント。
Crystal Kayは「リーディング・プレイヤーは人間でもなく、フェアリー的な存在で、自分の世界を見つけたいというピピンをいろんな世界に誘う役です。全部を仕切っているパワフルで、男らしいところもあれば、女性らしいところもあったりするキャラクターです」と語った。
ピピンの祖母バーサ役について、中尾は「バーサ役のばあさんです」と会場の笑いを誘うと、「実は『ピピン』には2回出演（2007年、2008年）しているんですけど、このバージョンは初めてで、アクロバティックな要素もあって今までやった中で一番大変です」と胸の内を明かした。前田も、中尾の言葉同様に「ばあさんだし、名前もバーサだしね。（私に）ピッタリですよね」とはにかんだ。
続いて、今、アメリカでもっとも注目される舞台演出家ダイアンがコメント映像で「日本語キャストと一緒に舞台を作るのが今から楽しみでなりません。城田優さん、Crystal Kayさんをはじめ素晴らしいキャスト揃いです。日本のみなさまにこのブロードウェイを代表する作品を体験してもらえることにも大変な喜びを感じています。スティーヴン・シュワルツによって作られた素晴らしい楽曲とサーカスやアクロバットが見事に融合した魔法のような作品をお楽しみください」と呼びかけた。
そのコメントに対して、ブロードウェイでの公演を観劇したという城田は「あの見たものをそのままこっちでできるというのは、めったにないことですから、キャスト・スタッフ一同、力を合わせて本場を超えて、日本のほうが良かったと思われるように、ダイアンさんが日本のカンパニーは素晴らしいと言ってもらえるように、日々努力していきます。ブロードウェイ版を超えて、素敵なものを日本のみなさまにお届けしたいです」と意気込んだ。
また、オリジナルキャストが着ていたという登壇者の衣装について、城田は「セーターだけはちょっと小さくて、作り直してもらいました。だから、衣装だけはもうすでにブロードウェイを越えています（笑）」とコメントすると会場は笑いに包まれた。
ミュージカル初挑戦となるCrystal Kayは「オー マイ ガー！」と言いつつ、「緊張しすぎて、初日はどうなっちゃうのかなという感じです」と明かし、オープニングナンバーを歌うことについて「あの1曲目で、リーディング・プレイヤーはこういう存在なんだという彼女の印象をお客様にパッと感じてもらわなきゃいけないので、すごい重要な役でもあります」と気を引き締めた。さらに、「私も実はNYで見ていたんです。当日は真っ黒な服を着ていたこともあって、上演が終わった後に外で、リーディング・プレイヤーを演じられていたパティーナ・ミラーさんに間違えられたんですよ（笑）」とエピソードを語った。
バーサにもアクロバティックな要素があるということについて、中尾は「去年、スタッフの方から、とりあえず懸垂を10回ぐらいできるようにしておいて下さいと言われました（笑）」と裏話を披露すると、「でも、今回は城田さんとCrystal Kayさんとは初共演でなので、すごい楽しみです。それに、舞台をやっている時に『この舞台、客席から見たい！』といつも思うんですけど、今回はWキャストだから見られるので、楽しみです」と期待を寄せた。
シアターオーブで上演されたブロードウェイ版を見たという前田は「目でも楽しめ、耳でも楽しめ、そしてパフォーマンスは自分たちがやりたくなるぐらい盛り上がる、本当に楽しめる作品に出会えたと思います」と喜びを露わにした。
本作の楽曲の音楽的な魅力について、城田は「このミュージカルは50年ほど前に作られているんですが、とにかく古さを感じさせない新しい音楽なイメージです。今でも愛される、わかりやすいナンバーから、ちょっとエキゾチックなナンバーと、幅広いミュージカル向きな音楽の数々です」と挙げた。Crystal Kayも「本当に古さを感じさせない」と城田に同調し、「テーマも恋愛だったり、人生だったり、戦争とか、今にも通じているなと思います。感情的なジェットコースターに乗っているような感じで、最初から最後まで楽しいです」と魅力を語った。
最後に、作品のテーマでもある人生の意味や目的にちなんで、人生の転換期とそれをいつ乗り越えたのかと尋ねられた城田は「エンターテイナーになりたいという夢が小さい頃からありまして、その夢に向かって進んでいたものの、なかなかうまくいかない時期が長いことありました。そんな中、10代の半ばぐらいでミュージカル、映画、ドラマといったエンターテインメントのお仕事を少しずつできるようになって、今があります。だけど、正直に言うと乗り越えたというよりは、やっとレールに乗れたという感じです。克服したとか、終わったという感じはなく、死ぬまでずっと探し続けるんじゃないかなと思っています」と語った。
【公演概要】
ブロードウェイミュージカル「ピピン」（英語タイトル: The Broadway Musical PIPPIN）
作詞・作曲 ：スティーヴン・シュワルツ
脚本： ロジャー・O・ハーソン
演出：ダイアン・パウルス
振付：チェット・ウォーカー
サーカス・クリエーション：ジプシー・シュナイダー
出演：城田優 Crystal Kay 今井清隆 霧矢大夢 宮澤エマ 岡田亮輔 中尾ミエ/前田美波里(Wキャスト)
神谷直樹 坂元宏旬 田極翼 茶谷健太 常住富大
石井亜早実 永石千尋 妃白ゆあ 伯鞘麗名 長谷川愛実 増井紬 ほか
＜東京公演＞
日程：2019年6月10日(月)～6月30日(日) (全25回)
会場：東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)
＜名古屋＞
日程：2019年7月6日（土）、 7月7日（日）(全2回)
会場：愛知県芸術劇場 大ホール
＜大阪＞
日程：2019年7月12日（金）～7月15日（月・祝）（全6回）
会場：オリックス劇場
＜静岡＞
日程：2019年7月20日（土）、 7月21日（日）（全2回）
会場：静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
オフィシャルサイト： http://www.pippin2019.jp/
