《対談》 舞台『ピカソとアインシュタイン 〜星降る夜の奇跡〜』 三浦翔平(ピカソ役)×村井良大(アインシュタイン役)

世界を変えた2人、画家ピカソと物理学者アインシュタイン。同時代を生きた二人だが実際には会うことはなかった。しかし、もし出逢い、会話したら・・・・・・この「IF」、パリ・モンマルトルに現存するバー“ラパン・アジール”を舞台に、才能、閃き、恋、友情、嫉妬、未来への予見など、そこに集う魅力的な人々の人間模様を奇想天外に描いた本作。この話の数年後、現実ではアインシュタインは「特殊相対性理論」を、ピカソは大作「アヴィニョンの娘たち」を発表することに。 この戯曲を書いたのは、映画俳優、コメディアンのスティーヴ・マーティン。映画「ペテン師と詐欺師」「サボテン・ブラザーズ」「ピンクパンサー」等、朗らかなコメディで一世を風靡してきた一方で脚本、プロデュースも手掛け、美術収集家でもあり、ロサンゼルス都立美術館の理事も務めたこともある多才な人物。彼はピカソの「At the Lapin Agile」にインスピレーションを得て本作を執筆、自宅にて内輪のリーディングを行なったというがピカソ役がトム・ハンクス、アインシュタイン役にクリス・サランドン、贅沢すぎる!
本作の世界初演は1993年、シカゴのステッぺンウルフ・シアターにて。この劇場は優れた新作の舞台を上演することで知られており、毎年多数の応募があるというが、これも応募作の一つだったそう。この戯曲に魅力を見いだした演出家ランダル・アーニーはマーティンに打診。すると彼は全てを放り出して、シカゴを訪れ5 週間にわたって、この芝居の創作に参加することに。 開幕途端に大きな反響、6カ月のロングラン、その後も世界各国で上演される人気作となった。1996年には NY批評家協会賞オフ・ブロードウェイ作品部門を受賞。特にアメリカでは今でも毎年上演されている。
日本では1997年、2000年にランダル・アーニーの演出により上演され、ピカソ役に岡本健一、アインシュタイン役に川平慈英で上演し、大好評であった。
今回もランダル・アーニーの演出。ピカソ、アインシュタイン、シュメンディマン、未来からの訪問者、配役は2 バージョンで展開する。岡本、川平は約20年ぶりに同役を演じるが、そのほかに岡本は訪問者、川平はシュメンディマンと新役に取り組む。また新たに三浦翔平と村井良大が参加し、ピカソとアインシュタイン役そして、訪問者、シュメンディマン役に挑む。この試みは、ランダル・アーニーの創作心を刺激し、演出を快諾。奇しくも平成から新元号・令和(れいわ)に変わる、この時代の幕開けに本作を上演!未来を変える!!時代を変える!と息巻く天才たちの熱い志。この意欲的な作品に挑戦する三浦翔平、村井良大にこの作品のオファーを受けた感想やそれぞれの演じるキャラクターについて大いに語ってもらった。

「初めてのことが3つも!僕の中では俳優としてのステップアップをするための挑戦」(三浦)
「ランダル・アーニーさんとご一緒できるいうことでしたので『ぜひ、やりたいです」と二つ返事で受けさせていただきました」(村井)

――この作品のオファーを受けた感想を。
村井:コメディ作品であり、スイッチキャストという話を伺い、この作品を初演から創りあげてきた演出家ランダル・アーニーさんとご一緒できるということでしたので「ぜひ、やりたいです」と二つ返事で受けさせていただきました。ワンシュチュエーションのコメディ作品でつまらない舞台は見たことがないし、これは面白そうだと思いました。三浦くんとは意外と似たような価値観を持っているなと・・・・・おそらくタイプは違う。でも、自分のいろんなことを結構語れそうな気がする、というのが正直な感想ですね。

三浦:同じく、まずスイッチキャスト、これは僕にとって初めての試みですし、1日2回公演の日はピカソも訪問者も演じなければならないのですが、これこそスイッチキャストの楽しみと醍醐味、挑戦なので面白そうだと。外国人の方の演出というのも初めてですし、ストレートプレイも初めてですし、初めてのことが3つもあって、僕の中では俳優としてのステップアップをするための挑戦だと思い、「ぜひ出演させてください」と。村井くんの印象は、同い年で同じ月の生まれなので似たところもありますし、流行りのものだったり見て育ったものだったり、やってきたゲーム、音楽、映画、とにかく共通点がいっぱいある。あとは真面目な方だと思うんですね。舞台もすごく出演しているし、場数も踏んでいるので、わからないところは聞いていこうかな?大先輩たちもいらっしゃるので。
村井:大先輩たちは心強い!
三浦:楽しみです!

「こだわって、誰よりもうまく描いてやろうと思っている人間いう風に作っていこうと思います」(三浦)
「自分自身のユニークさをなるべく舞台に出していこうと思っています」(村井)

――各々の役柄について。普通の人とは違う人を演じるにあたって。
村井:天才とは何を持って天才なのか・・・・・本人達は「自分は普通」と思っているし、難しいですね。ルールに縛られない、感覚派の人間を普通の人から見ると天才と感じたりしますよね。物事に熱中する度合いが人より高い。僕はアインシュタインを演じますが、「○○が△△してこうなって」という話をすることはありますが、作品の中で何かを解いていくことはないので、どういう風に表現しようかと思案しています。ユニークな人の価値観は大事にしたいのですが、それは自分から出さなければいけない、自分自身のユニークさをなるべく舞台に出していきたいと思っています。ユニークさを自由に使いこなせるのは多分、川平さんですが、川平さんのアインシュタインをあんまり見ないようにしようと(笑)人の『ユニーク』をなぞらないようにしないと、というのは正直、ありますね。
――見ちゃうと引っ張られてしまう可能性はありますね。
村井:そこは怖いですね。
三浦:偉業を成し遂げて、死んだ後に残された人たちに「(あの人は)すごかった」といわれますが、作品はもちろんすごいし、そういったものを残していることはすごいこと。そして死んだことによって評価が大きくなっているところもありますよね。ただこの時代にいて絵が好きな人間と数学や物理が好きな人間、単に好きなものと付き合っていた人間だと思うんです。ピカソもアインンシュタインも自分のことを天才とはきっと思っていない。ただ周りが自分より絵が描けなかったり、計算ができなかったりっていうことであって、ピカソは本当に絵が好きで描いている、誰にも負けたくないと思っている人だと僕は思うので、こだわって、誰よりもうまく描いてやろうと思っている人間という風に作っていこうと思います。
村井:天才ぶらない方がいいよね。
三浦:ただ、本当に絵が好きで「あいつより俺の方が絶対にうまい」と思っているだけで、ことさらに『天才』には固執しないですね。
――ことわざにありますよね「好きこそ物の上手なれ」
三浦:本当にそうですよね。
――結局、ピカソは絵が描くのが好き、アインシュタインは数学的なこと、物理学的なことを考えるのが好きで、たまたまそこに「才」があって極めた人っていう見方は確かにありますね。例えばアスリートでも、走るのが速くてもダンスは苦手かもしれないですしね。
三浦・村井:そうですよね。
村井:突出した才能があって、それ以外は普通ということはありますね。

「いかに自然にお客さんに見てもらうか、そこが大変そうだと思いました」(三浦)
「一生懸命稽古してお客様に面白さを理解していただけるようにしたい」(村井)

――実は前回公演の台本、読んでいるんですよ。
村井・三浦:お!
――前回公演の台本を読んだ感想を。
村井:唐突なところもある印象でしたが、すごく面白いと思うところもありました。読んでいて全然予測ができないんですよ。しかも台本を見ると話の進め方が日本語的な並べ方じゃないんです。どれだけいい雰囲気を持った人間がやるかでかなり違ってくる。ある意味難しい!と同時にかなり面白くできそうだと思っています。早く覚えて早くみんなと稽古をしたいなと。
三浦:海外の作品は初めてなのでここまで違うんだなというのが純粋な第一印象。セリフの言い回しや説明の仕方が完全に違う。でも、日本語であたかも普通にやらなきゃならない、いかに自然にお客さんに見てもらうか、そこが大変そうだと思いました。また、よくある空想劇、結末が「考えてください」いう終わり方とは違って、パーンって始まってパーンと終わる、気持ち良く終わる作品だというのは感じました。
――私も読んだ時はまず「元の英語はどういう表現なんだろう」ってすごく考えました。
三浦:それは僕は考えました。
――それを翻訳するにあたって「英語の音」をフックにした冗談とか親父ギャグ的なものがありますが、そのまま日本語に翻訳しても日本人にはわからないのでそれを日本人にわかるように訳す、でも向こうのテイストを残しつつ翻訳するのはすごく難しいですが、そこは演じる側もポイントになってきますね。あとは各々のキャラクターの会話の応酬、このやりとりも面白さのキーになってきますね。

村井:海外ドラマの吹き替えも翻訳にもよりますが、実際に言っていることとは違っていても、意味や真意はほぼ同じようなことを言っていますよね。
三浦:そうですね。
村井:そこは一生懸命稽古してお客様にその面白さを理解していただけるようにしていきたいですね。
三浦:稽古していくうちに、そこはきっと課題になってきますね。
――ピカソ、アインシュタインと他にいるキャラクターとの会話のキャッチボール、これをちょっと深読みしていくと「ああ、そうか」と思うところ、あると思うんですけど、どうですか?
三浦:確かに、一回読んだだけではわからなかったので、読み込んで理解していきたいですね。
村井:確かに!
――初演はすごくウケたそうですね。
村井:はい、お客さん、すごく笑っていたらしいですね。川平さんたちも「ウケるのかわかんなかった」っておっしゃっていました。本番になってウケて(笑)、「マジか!」ってびっくりしたらしいです。
――読み進めていくうちに「面白いじゃん」ていう風になりますね。
村井:最初の15分、『つかみ』がカギですね。

「『不可能を想定して可能にしようとしている』・・・・・二人ともビジョンがあって、好きなことをやっているだけ」(三浦)
「非常に真面目でコツコツやるタイプの人・・・・・彼の中ではルールがあってそこに彼なりの正解がある」(村井)

――今回、稽古前に海外に行かれたそうで。実際のお店にも行かれたと伺っています。
三浦:その作品のゆかりの地には行くことにしています。ピカソってどんな人だろうと調べた時に、僕の頭の中にはやっぱり「変な絵」いうイメージがあるんですよね、ああいうのがピカソだと思っていたんですけど、調べてみてピカソ美術館やゆかりの地に行くと・・・・・もともとピカソは絵がうまい。人物画、風景画、子供の時も近くの森や川を描いていて成長するに従って身近な人、兄だったり、親族を描いていてこれがめちゃくちゃうまい。青の時代を抜けて、「アヴィニョンの娘たち」からだんだん変わっていくんですよね。よく知られているアフリカ彫刻のような描き方になっていく。あのキュビズムの絵は、絵の描き方の技法の一つだっていうのがわかってそこからこういう絵になったんだと理解できました。
キュビズムの時代に「ゲルニカ」を描き、それが世界に受入れられたそうですが、本気で人物画を描いたらめちゃくちゃうまかったと思いますよ。
――私も見たことがありますが、デッサン力が半端なくすごいんですよね。
三浦:まずは棒から始まるんです、そこからだんだん人間になっていく、顔がここにある、足がここにある、この進化過程がこの目で見れたのが今回、勉強になりました。
村井:ピカソはかなり突き詰める人ですね。
三浦:本当に。もしかしたら、やはり凡人にはわからないのかもしれないですね。芸術に長けている人は、様々な色や形を使うのが楽しいとわかる人間なんだと思います。
村井:一般人にははるか遠すぎてわからないかも(笑)。
三浦:本当に見に行ってよかったです。いい経験になりました。
――アインシュタインは調べますと名言集などもありますし、アインシュタインの写真、あの舌を出しているのが有名ですが、普段のアインシュタインは仏頂面で、取材に来た人が「もうちょっと表情を」って言ったらあの顔をしたっていうエピソードがあるんですよね。
村井:そうなんです。もともとはめちゃめちゃ寡黙な人らしくて。研究に没頭していたりとか調べ物をすごくしていた人で、基本的にはどんなことにも無頓着な人間だったそうです。あの写真が有名になって、すごくポップな印象だけど、実は全く真逆の人。写真1枚で印象が決まっちゃった。調べれば調べるほど非常に真面目でコツコツやるタイプの人なんだと思いました。学問、物理や数学的なことを突き詰める作業が多分、楽しくてたまらなかったのでしょうね。他のことを忘れて没頭して、ずっとやり続ける、また自分のルールを決めて行動する人だったとか。靴下を履かなかった、理由はなんだったけ・・・・・確か、洗濯が面倒臭い(笑)。自分なりに考えてそうしている、そういうところって周りから見たら変な人ですよね。彼の中ではルールがあってそこに彼なりの正解がある。非常に真面目で、写真のイメージとは全く違いますね。でも写真のイメージが強いのでそれに沿うべきかどうか・・・・・そのあたりはちょっと悩みどころですが、稽古して見つけていきたいです。
――台本を読んだ印象としては、荒唐無稽ではないですね。アインシュタインとピカソが出会ったら、という『IF』ですが。普通の人から見たら「変人」かもしれないけど、本人達なりに筋も通っているし、実は芯がある。
村井:二人の中ではわかっているんですよね。
三浦:印象的なセリフ、二人の口論の末の「不可能を想定して可能にしようとしている」あそこはすごく理解できます。そのために二人ともやっているわけですから。二人ともビジョンがあって、好きなことをやっているだけであって、結果、着地点は一緒という・・・・・そこがすごく好きなんです。
――後はお稽古でね。
三浦・村井:(笑)
三浦:やってみないとわからない!
村井:そう!こればっかりはね。

――最後にお客様にメッセージをお願いいたします。。
三浦:お芝居、演劇が好きな方は1日2公演の日、両方観る方が楽しいと思います。
村井:スイッチキャストですし。
――演劇好きな人にはウケる作品ですね。
村井:そう思います!
三浦:とにかく一回、見てください!と(笑)。
村井:一回、見てみて!見ないと感想言えないから!そもそも見ていただいてそこからまた何か思うこともあるだろうし。で・・・・ここまでインタビュー読んでいただけたのならあなたは絶対に見に来ますよね!
三浦:(笑)
――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。

【公演概要】
舞台『ピカソとアインシュタイン 〜星降る夜の奇跡〜』
日程・場所:
<東京公演>
2019年4月25日〜5月9日 よみうり大手町ホール
<大阪公演>
2019年5月12日 森ノ宮ピロティホール
作:スティーヴ・マーティン
演出:ランダル・アーニー
翻訳:香坂隆史
出演:
(ROSE) 岡本健一 川平慈英/水上京香 吉見一豊 間宮啓行 香寿たつき 松澤一之/村井良大 三浦翔平
(BLUE) 三浦翔平 村井良大/水上京香 吉見一豊 間宮啓行 香寿たつき 松澤一之/川平慈英 岡本健一

★ROSE配役
ピカソ:岡本健一
アインシュタイン:川平慈英
シュメンディマン:村井良大
未来からの訪問者:三浦翔平

★BLUE配役
ピカソ:三浦翔平
アインシュタイン:村井良大
シュメンディマン:川平慈英
未来からの訪問者:岡本健一
公式HP:
http://hpot.jp/stage/picassoeinstein2019

取材・文:Hiromi Koh