ローレンス・オリヴィエ賞「BEST PLAY」を受賞した超話題作「ハングマン ~HANGMEN~」、稽古快調!

 

 

 

切れ味は変わらないものの、過去の舞台作品と比べて “大人になったマクドナー“の視点で描かれる、ユーモアと毒が満載の本 作「ハングマン」、北イングランドのパブを舞台にしたブラックコメディ。

野卑で下品な男たちが集うパブに都会っぽい雰囲気の 若い男が登場し、ありふれた田舎の日常に変化が生じる。粗野な元ハングマン(絞首刑執行人)ハリ―を演じる田中哲司には、当初演出の長塚圭史から「あえて外国人らしさを盛って演じてみてほしい」とのオーダーが。

また、マクドナーの戯曲では北イングランドとロンドンのなまりの差が、偏見や差別を表現をする上で効果的に使われており、その ニュアンスを日本語版の中でどのように表現するか、歴史的・文化的背景を踏まえた台詞をどう伝えるか、その部分を共有するた め、稽古の立ち上がりは、台詞の解釈や「言葉作り」から開始。

4月30日現在、熱の入った稽古が繰り広げられていたのは、一幕の4場と5場。共にハリーと妻のアリスが営むパブ店内のシーン 。4場はある朝のパブの出来事。5場はその日の午後の店内で、かつてのハリーの助手だったシドの登場シーン。本作の一幕 終盤にあたる。

 

英国で死刑が廃止された日に、新聞記者に乗せられて取材を受けてしまった最後のハングマン・ハリーの記事が、この日の朝刊にデカデカと掲載されている。妻のアリスが起床してそれを読んでいるところに、娘のシャーリーがやってきて母娘の言い争いが始まり、そこに昨夜初めてパブに現れたムーニーという若い男が部屋を借りたいと訪ねてくる。ここでのやりとりの中で、シャーリーとムーニーが心理的距離を詰めていく、というのが4場。

 

続く 5 場は、その日の午後、既に飲んだくれでにぎわう店内で、シャーリーの姿が見えな いことを母のアリスは心配している。そんな中、かつてのハリーの助手・シドが久しぶりに 来店し、何やらハリーに話があると不安げな様子で切り出す。その内容に、ハリーたちはさ らに不安を増幅させて。。。この 5 場を以て一幕が終了。

 

粗野な口調で店内の酔っ払いたちを仕切るパブのオーナーにして最後のハングマン・ハ リーを演じる田中哲司。その夫とパブを支える妻、アリス役の秋山奈津子。この夫婦と、 昼から飲んだくれている常連客たち(羽場裕一・大森博史・市川しんぺー・谷川昭一朗) のバカバカしく軽薄なやりとりは、「1960 年代のイギリスのパブ」という私たちに馴染みの薄い設定や環境を飛び越えて、笑いを誘う。イントネーションがややおかしなところは狙 いのよう。下品な言葉も飛び交う中、最年少・初舞台の富田望生が先輩達の軽快なや りとりを見学しながらずっと笑っているのが印象的でした。おどおどとした挙動で頼りなさを醸 し出す吃音のシド役・宮崎吐夢にも笑わされるが、彼もまた、物語のカギを握る一人。

本作のキーマンはロンドンから来た若い男、大東駿介が演じるムーニー。ハリーやアリス、 パブの常連客にとってはつかみ所のない、謎めいた男である一方で、ハリーの娘・シャーリー の心を惹き付ける不思議と魅力を持つ人物。この難しい役柄を演出の長塚 圭史とディスカッションも交えながら練り上げていく。そして富田望生演じる 15 歳の少 女・シャーリーは、物語の展開の動機となる存在。初舞台ながら、堂々と、瑞々しい演技 で印象を残す。

 

コメディであり、サスペンスでもある本作の両面が繰り広げられ、物語のうねりを予感さ せる一幕のラスト。それぞれの台詞の中から何をクリアに聞かせていくか、細かく演出が加 えられ、スリリングな展開をより際立たせ、クリアーに。

マクドナーの毒と向き合うのは 11 年ぶりとなる長塚圭史が、以前演出した作品より余白が多い作品(ゆえに大人びた)と語る本作をどのように料理してくれるのか、初日はもうすぐ。

 

<ハングマン あらすじ>
1963年。イングランドの刑務所。ハングマン=絞首刑執行人のハリー(田中哲司)は、連続婦女殺人犯ヘネシー(村上航)の刑を執行しようとしていた。しかし、ヘネシーは冤罪を訴えベッドにしがみつき叫ぶ。「せめてピアポイント(三上市朗)を呼べ!」。ピアポイントに次いで「二番目に有名」なハングマンであることを刺激され、乱暴に刑を執行するのだった。

2年後。1965年。イングランド北西部の町・オールダムにある小さなパブ。死刑制度が廃止になった日、ハングマン・ハリーと妻アリス(秋山菜津子)が切り盛りする店では、常連客(羽場裕一・大森博史・市川しんぺー・谷川昭一朗)がいつもと変わらずビールを飲んでいた。新聞記者のクレッグ(長塚圭史)は最後のハングマンであるハリーからコメントを引き出そうと躍起になっている。そこに、見慣れない若いロンドン訛りの男、ムーニー(大東駿介)が入ってくる。不穏な空気を纏い、不思議な存在感を放ちながら。

翌朝、ムーニーは再び店に現れる。ハリーの娘シャーリー(富田望生)に近づいて一緒に出かける約束をとりつけるが、その後姿を消すムーニーと、夜になっても帰って来ないシャーリー。そんな中、ハリーのかつての助手シド(宮崎吐夢)が店を訪れ、「ロンドン訛りのあやしい男が『ヘネシー事件』の真犯人であることを匂わせて、オールダムに向かった」と告げる。娘と男が 接触していたことを知ったハリーは・・・!
謎の男ムーニーと消えたシャーリーを巡り、事態はスリリングに加速する。

 

 

 

【公演概要】

タイトル 「ハングマン HANGMEN」

<埼玉公演>
日程 2018年5月12日(土)~5月13日(日)

彩の国さいたま芸術劇場

<東京公演>

2018年5月16日(水)~5月27日(日)

世田谷パブリックシアター

 

作 :マーティン・マクドナー

翻訳: 小川絵梨子
演出 :長塚圭史

出演 :田中哲司 秋山菜津子 大東駿介 宮崎吐夢 大森博史 長塚圭史 市川しんぺー 谷川昭一朗 村上航 富田望生 三上市朗 羽場裕一

企画協力 ゴーチ・ブラザーズ

企画製作 株式会社パルコ

お問合せ パルコステージ 03-3477-5858 (月~土 11:00~19:00/日・祝 11:00~15:00)

 

http://www.parco-play.com/