”ミュージカル回想録”と銘打っているが、ミュージカルのようなコンサートのような、不思議な”形式”だ。キャストは二人、作詞・作曲のアビゲイル&ショーン・ベンソン、この二人の物語。
まずは、いわゆる前説、「携帯の電源」などの諸注意、ゲネプロでは藤岡正明が、ゆるい服装、足はスリッパで登場する。一切、話さず、画用紙に書いたものを客に見せる。これがなかなかに面白く、客席が温まる。ギリギリに客席に入ると観られないので、余裕を持って会場に到着したい。舞台のしつらえは電飾が飾られており、スタンド式のランプ、手作りな雰囲気が温かい。
この前説が終わり、時間になり、アビゲイル(木村花代)が登場、客席に向かって話しかける、飴ちゃんを配ったり。これがアビゲイルとして話しかけているのか、木村花代として話しかけているのか、境界線が曖昧な印象だが、そこが面白い。ちょっと路上ライブのような即興性も感じられる(これも前説の一種なのか)。それから何気なく”本編”が始まるが、いかにも『始めます』的な雰囲気ではなく、そこからふんわりと。そして”相方”のショーン(藤岡正明)も登場、ジーンズがいわゆるユーズドな感じが似合う。アビゲイルの服装、ジャケットがかっこいい。
台本はきちんと存在する。台本通りに進行しているのだが、ライブ感もこの作品の重要な要素、実生活でも夫婦でありミュージシャンでもあるベンソンズのメンバー、アビゲイルとショーン。この二人の出会いから100日の物語。自らの出会いを音楽に乗せているのだが、楽曲はちょっとサイケデリックなものもあって印象的なものが多く、こういったキャッチーなメロディーと芝居、最初はアビゲイルとショーンはそれぞれモノローグであるのだが、お互いに言ってることを聞きながらうなずいたり、『阿吽の呼吸』といった感じで進行していく。また最初と最後でバンドの紹介をするが、ここは実名。虚と実が綯交ぜになり、リアルなのかフィクションなのか、これもまた面白いポイント。テーマ曲とも言える「100日の奇跡/100days」はノリがよく、アビゲイル演じる木村花代は思わずジャンプする。シャウトする、そんな感じの曲。ライブシーンではところどころでクラップも。ミュージカルとは言ってるものの、こじんまりとしたライブハウス的なアットホームな空気感が心地よい。
早い話が愛の物語であるのだが、それぞれにバックボーンがあり、生き辛さを抱えて生きてきた、そんな二人が出会い、お互いを知るまでにそう時間はかからなかった。案外、出会いというものはそんなもんなのかもしれないが、そこで魂がふれあい、呼応する。そんな空気感で進行する。タイトルにもなっている”HUNDRED DAYS”、勘の良い人はタイトルでなんとなく察しはつくかもしれない。100日の中には濃密なものが内包されている。悲しみや喜び、そういった感情が濃縮された100日。出会って3週間で結婚する二人。「3週間で決めちゃうの?」と驚く観客もいるかもしれないが、彼らの心がそうさせている。そして”愛”、愛には様々な形がある。いわゆる”男女の愛”、そして博愛、さらにアガペーと言われる”愛”。キリスト教における神学概念で、神の人間に対する「愛」、神は無限の愛(アガペー)において人間を愛しているのであり、神が人間を愛することで、神は何かの利益を得る訳ではないので、「無償の愛」と言われる。
キャスティングの妙ともいうべき、”だからこの二人なんだろうな”という空気。藤岡正明はギターも弾いているが、俳優活動のみならず、ミュージシャンとしても活動、ライブツアーも弾き語りツアーも多数!行っており、ショーン・ベンソン役は彼しかいない!と思わせるほど。対する木村花代は劇団四季時代は「マンマ・ミーア!」や「コーラスライン」、「クレイジー・フォー・ユー」などの主要キャストとして多数出演、退団後は「ミス・サイゴン」などのミュージカルに出演の傍ら、年に数回ソロライブを実施、アビゲイル役も彼女しかいない!と思わせてくれる。
音楽とセリフとそして濃密な空間とで創造される、100日の物語、出会いがあれば別れは必ずやってくる、遅いか早いかだけの違いで生きとし生きるもの全てに平等に。わかりきっているはずなのに、いざとなれば・・・・・最後の最後、人は何を想うのか。
なお、アンコール曲は事前に募集したリクエストから。何が飛び出すかはお楽しみ。ゲネプロでは2曲歌唱。1曲は60年代後半〜70年代に流行った楽曲、もう一つは「100日の奇跡/100days」であった。音楽と芝居だからミュージカルには違いないのだが、一般的にイメージされているミュージカルと思うとその意外性に驚かされる。そんなサプライズと二人のノリの良さとリアルなのか芝居なのか(もちろん芝居であるが)がはっきりしない雰囲気を楽しむなら!上演時間はアンコールも入れておよそ100分程度。観劇のあとはどこかでビールでもワインでも、ちょっと傾けたくなるはずだ。
<開幕コメント>
俳優:藤岡正明
「この作品がお客さんにどのように受け止めて貰えるのか不安もありましたが、最後はみなさんスタンディングでいい笑顔をいただき、大きな勇気になりました。
明日からガンガン突っ走っていくので2回3回と来ていただいて一緒に盛り上がっていきましょう!」
俳優;木村花代
「盛り上がっていただけましたか?
本当に楽しかったです!ベンソンズに会いに来てください!」
日本語上演台本・訳詞・演出:板垣恭一
「仕上がりました! ライブとかしばらく見てないなあという人には極上のコンサート体験を。なのにお芝居でもあって、最高のミュージカル体験もできちゃいます。人間関係に問題を抱えている男女が出会い、夫婦になり、未来に向かって歩き出す物語です。「生きづらい」と感じている人にはぜひ。「心の穴」が埋まらないと感じている方にもぜひ。お待ちしております。」
【概要】
ミュージカル回想録『HUNDRED DAYS』
日程・場所:2020年2月20日(木)~2月24日(月・祝) @シアターモリエール 3月4日〜3月8日@中野ザ・ポケット
キャスト:木村花代、藤岡正明
作詞・作曲: アビゲイル&ショーン・ベンソン(Abigail & Shaun Bengson)
脚本:サラ・ガンシャー (Sarah Gancher)
翻訳:工藤紅
日本語上演台本・訳詞・演出:板垣恭一
音楽監督:桑原まこ
美術・舞台監督:深瀬元喜
照明:萱島亜希子(CAT)
音響:潮麻由子(エディスグローヴ)
衣裳:KO3UKE
ヘアメイク:竹節嘉恵
宣伝デザイン:柚木竜也(aboka design)
プロモーション動画制作:深沢麿央
協力:enchante、 グランアーツ
票券:林晴美
宣伝:大林里枝
プロデューサー:宋元燮
後援:TBSラジオ
企画・製作・主催:conSept
[聴覚障害者用字幕席対応公演]
https://www.consept-s.com/omotenashi-guide/
[カルチベート・チケット対象公演(学生無料チケット・枚数限定)]
https://www.consept-s.com/cultivate/
[conSept公式]
http://ctkt.jp/c/100days.php
[お問合せ]
info@consept-s.com
<字幕付上演について>
本公演は、 スマートフォンアプリによる字幕上演を致します。
外国人・耳の不自由な方に一緒に楽しんでいただけるよう後方の特設シートにて実施しています。
どなたでもご利用いただけますが、 「おもてなしガイド」のアプリのダウンロードが必要です。
下記よりダウンロードしてご利用ください。
https://www.consept-s.com/omotenashi-guide/