『テンダーシング -ロミオとジュリエットより-』愛を育み、慈しむ、究極の愛の形。

“ロミオとジュリエット”という名前の老父婦を描く『テンダーシング-ロミオとジュリエットより-』、上演中!

シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の台詞を抜粋し、ソネット詩などの言葉も加え、大胆に再構築された本作は、“ロミオとジュリエット”という名前の老父婦を描く全く新しいラブ・ストーリー。夫婦として共に生き、年齢を重ねても変わらぬ愛の輝き中で、原作とは異なる“別れ”に二人は対峙する。脚本は、NTliveで日本公開もされた「リーマン・トリロージー」が評判のべン・パワー。09年にイギリスの名門ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーにて初演、開幕と同時に絶賛、世界各地で上演されている秀作。今回の日本初演にあたり、シェイクスピア劇の全訳が完結間近の松岡和子によって既存訳の改変、調整が演出家・荒井遼とともに行われた。キャストには歌唱力で定評のある土居裕子と数多くの映画・ドラマ・舞台において確かな演技力で高い評価を得ている大森博史という最高の組み合わせが実現。

客席通路からキャストが登場し、舞台に上がる。舞台にはベッド、テーブル、椅子、どこかの小さな一軒家のお部屋、という風情。語るような流麗なセリフまわし、土居裕子、大森博史の安定した演技、しかもどこか温かい空気が流れる。原作の『ロミオとジュリエット』は推定年齢、ロミオは高校生ぐらいでジュリエットは中学生ぐらいだろうか。そして、こちらの方はロミオもジュリエットも明らかに高齢者、70歳は超えている感じに見える。お互いを見るなんともいえない、愛に満ち溢れた眼差し。最初はジュリエットはベッドに横になっていた。そこから始まる。時折、二人、ダンスをするが、そのステップはシンプル。軽やかに踊るのだが、長年連れ添った阿吽の呼吸からくる軽快さ。映像も使うが、プロジェクション・マッピングのような最新のものではなく、どこか懐かしい雰囲気の映像が、温かい空気をさらに醸成させる。また、稽古の様子も映し出されるが、それが虚と実というのだろうか、物語の二人とシンクロして見える。ワイングラスを傾けたり、時折、いたずらっぽい表情をしてみたり、そこに『ロミオとジュリエット』のセリフ、原作のような熱く激情に満ちた愛ではなく、それこそ、熟成したワインのような芳醇な愛、とでもいうのだろうか、本を読んだり、鏡をみたり、ネックレスをプレゼントする夫に笑顔の妻、別に何か特別なことは起こらない。そこで描かれているのは老夫婦の日常。なんということのないシーンの連続だが、それが限りなく大切な時間であり、出来事。映像で言葉が映し出される場面があるが、どんなことがあっても二人は離れない、そんな関係性も透けて見えてくる。そしてラスト近く、妻はベッドに横たわる。そばに夫が寄り添う。夫婦が重ねてきたささやかな歴史、最後の最後まで共に生き、”別れ”がくる。愛の形、愛の歴史、愛は身近なところにある。それを育む、慈しむ、たったそれだけが限りなく美しい。

<『テンダーシング-ロミオとジュリエットより-』 公演概要>
日程・会場: 2021年2月24日(水)〜28(日)全9回公演 東演パラータ (最寄駅 下北沢)
作:ベン・パワー
翻訳監修:松岡和子
演出:荒井 遼
出演:土居裕子 大森博史
☆アフタートーク
25(木)18時: 深作健太(映画監督・演出家)×荒井遼
26(金)18時: 土居裕子×大森博史
[トークショー「ロミオとジュリエット」をめぐって]
25(木)15時〜16時30分 登壇者:松岡和子、河合祥一郎(東京大学教授)

企画・製作:幻都

公式HP:https://theatertheater.wixsite.com/tender2020
公式ツイッター:https://twitter.com/GEN_TO_play
公式PV(1):https://youtu.be/i8XR-Azy_zM
公式PV(2):https://youtu.be/pbR5qlBbH1A
公式インタビュー:https://youtu.be/PwqA4u2LQvQ
お問い合わせ:info.qlouds@gmail.com

舞台撮影:阿部章仁
文:高 浩美