明るくて気さくな人柄で、歌手として15周年目を迎えた平原綾香さんの特別インタビューが実現、メリー役について、また自身のことやミュージカル『メリー・ポピンズ』について思う存分語って頂きました。
「メリー・ポピンズって女性だけど、スーパーヒーローみたい!」
ーー作品との出会いは?
平原:ジュリー・アンドリュースさんの映画が初めてです。小さい頃なのであんまり覚えていないのですが、傘をさして飛んでいるシーンが印象的で、よくメリー・ポピンズごっこをしていました(笑)ちょっと高いところから飛んで、飛べたって!(笑)(役が決まって)凄く嬉しいです。
「チム・チム・チェリー」も有名だけどあまり歌ったことはなかったんですが、歌える!うれしい!と思いました。
「メリー・ポピンズは宇宙人みたいな存在かもしれない」と演出家の方もおっしゃっていたんです。瞬きもしない、常に動きに無駄がない、魔法が使える、空からやってくる、どこを取っても宇宙人っぽいですよね。「そういう気持ちでやりなさい」って言われました。それを聞いたら、傘をさして来ることにも何も違和感はなくなりましたね(笑)
ーーオーディションについて
平原:「受けてみませんか?」って声をかけていただいた事がきっかけです。大人になって、こんなに緊張してお芝居を人前でやる事ってなかったので「ああ、大変だなあ。」と思っていたのですが、せっかく声をかけて頂いた事もあり受けさせていただきました。ジュリー・アンドリュースさんが大好きで「サウンド・オブ・ミュージック」の歌と台詞の吹き替えをしたばかりなんで、ご縁だと思いました。
ーー作品の魅力について。
平原:メリー・ポピンズって女性だけど、スーパーヒーローみたい!メリーが来たらもう安心で、全てが上手くいく感覚になれる。そういうところが好きです。
メリーが来たからこそ、子供もいい子になって、家族の絆が本来の姿に戻る。そうするとメリーのことは忘れてしまうんですが、忘れるっていうことは必要でなくなるということ。彼女は少し寂しいけど、次の家庭に飛んでいく。スーパーヒーローでありながらサンタクロースみたいな存在!困った時に助けてくれて、見ていると胸がキュンとする。そこがとても素敵なところです。
そして何よりも、ミュージカルなので子供も大人も盛り上がれる、家族全員世代問わず楽しめるところがいい!メリーの曲で映画にはないミュージカルだけのオリジナル楽曲があるんです。「私は全てにおいて完璧なのよ」と「片付けも上手、お洒落も好きなのよ」って歌う曲です。魔法が使えるから完璧でなんでも出来るという訳ではないんです。
メリーは指を鳴らして部屋を片付けられるけど、それは彼女の魔法ではなく「よし」と気持ちを良い方向へ変えられること、それが彼女の魔法だと思います。
私は、やらなきゃいけないことはたくさんあります。メリーの姿勢は、いつも背筋ピン!としていて、宇宙人っぽいから瞬きもなるべくしない(笑)心の姿勢でもあるのかな?ピンとしてしっかりと心の根っこから変えていかないとダメだなと。台詞もいっぱいあるし、それ以上にダンスもあるので楽しみ!やっと踊れる!
平原綾香は動かない、笑わない、しゃべらないというイメージがあってそれで凄い苦しんできたこともありました。どちらかというと私は正反対で笑うことも大好きで、しゃべることも好き、踊ることも好き、クラシックバレエを11年間続けていたので、やっと踊れる作品に出会えて嬉しいです。クラシックバレエは今は大人クラスとして通っているので、またトレーニングしようと思っています。宇宙人的なくびれを作っていきたいと思います(笑)。
「メリーには笑いのセンスもあるんですね」
ーーご自身の家族のこと、思い出、嬉しかったこと。
平原:小さい時はよくキャンプに連れて行ってもらいました。自然の中で過ごすこと、生活することをいっぱい、父に教えてもらいました。料理を覚えたり、お水がどれだけ貴重なのかとか。朝、起きてみたらテントに水が押し寄せていてウォーターベットになっていたこともありました(笑)サバイバルは一通り教わりましたね(笑)。平原家は、なぜだかよくわからないんですが、おやすみ前は必ず、ほっぺにチューして寝るのが決まりで、今でも習慣です。だからハグは当たり前の感覚で、誰かにハグすると凄く驚かれることもありますが、家族じゃなくっても、ハグすると絆を感じられるので大事だなと思っています。
ーーミュージカルは3本目ですが。
平原:今まで私が知っていたメリーはジュリー・アンドリュースのイメージだったのですが、実際に演じて、歌ってみたら、もっと地声で、もっと人の話を聞いていない感じでお願いしたいとか、結構我が道を行くタイプの演技を求められて、これは映画を観てるだけじゃダメだなと思いました。求められているもの、さらに新しいメリー・ポピンズの像を創り上げようとしています。ジュリー・アンドリュースのイメージが出来ている人が「こんなんじゃない」ってショックを受ないように演じたいっていうのもありますが。メリーには笑いのセンスもあるんですよね。
また、主人公以外で凄く面白い人が出てくるのは嬉しいものです。この「メリー・ポピンズ」にはたくさん登場します。慣れないことが多くて不安ですが、ビューティフルでも長台詞がいっぱいあるのを経験しているので、今は心が落ち着いてます。
あと、初めて大阪公演、体力勝負ですし、不安な気持ちもありますが楽しみです!
ーーWキャストで濱田めぐみさんとご一緒ですね。
平原:メグさんは私の初めてのミュージカルでご一緒しまして、メグさんがいなかったら出来なかったと思っています。とっても感謝しています。「こうだよ」と教えられたわけではないんですが、ミュージカル初挑戦の私にも、優しく平等に接してくれるのが凄く嬉しかったですね。その時はクリスティーヌというオペラ歌手の役だったんですが、ああいう高い声は出したことがなかったんです。声楽科じゃなくってサックス専攻だったので、高い声を頑張って出さなきゃ!という気持ちでした。
メグさんも、2人でひとつみたいな一心同体な気持ちで常に「頑張ろう」とおっしゃってくれて、私の出演している回も常に楽屋で観て「頑張れ」とエールを送って下さっていました。違いはたくさんあると思いますが、さっきメグさんの撮影風景も見ていて、とっても可愛いくって!メリー・ポピンズは本当に夢のある世界観だと思いました。
「子供の心を忘れないでっていうのがこの作品にはありますね」
ーー好きなシーンや好きな曲は?
平原:鳩のシーン、たった2ペンスで世界は変わるよっていう曲が好きですね。
マイケルは自分のおこづかいを銀行に預ける時に、たった2ペンスなんて、と銀行の人から凄くバカにされるんですよ。「2ペンスだって大事なお金」という事を、大人達はどんどん忘れてしまうんですよね。子供達にとって、駄菓子屋にいったら500円だって全部買えちゃうような大金なのに。そのシーンは切なくて泣けました。子供の心を忘れないでっていうのがこの作品にはありますね。最近飛行機で見直して号泣して……本当にいい作品です。
あとはスナップひとつで部屋が片付けられるシーンが好き!あのシーンは爽快ですね!
あと、絵の中に入っていくシーン。バートとメリーは友達同士なんだけど、でも絵の中にいる時だけは恋人同士みたいなところがキュンとしました。
ーー友達以上、恋人未満、恋人風味。
平原:そうなんですよね、絶対に恋人っぽくしちゃいけないんですって。ディズニーの「メリー・ポピンズ」の制作過程を描いた映画「W・ディズニーの約束」を観たんです。その時にメリーとバートは恋仲にしちゃダメと。
ーー原作者がね。
平原:そうなんです。だけど、絵の中だけなら恋人同士に見える。
ーーメリーみたいに不思議な力が使えたら?
平原:地球温暖化を直したい!温暖化についての取材をするお仕事があって、キリバス共和国っていう数年後には海に沈んでしまうという国に行ったんです。マイケル・ジャクソンみたいかもしれないけれど、まずは温暖化をなくしたい!
ーー歌われる曲についてお願いします。
平原:「チム・チム・チェリー(Chim Chim Cher-ee)」は楽しみです。バートとデュエットするので楽しみですね。本当に有名作品なので歌うだけで感激しちゃいます。カバーじゃなく、メリーとして歌えるなんて、今後ないと思うので!あとは「お砂糖ひとさじで」、あれもいい曲ですね。あとは「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス( Supercalifragilisticexpialidocious)!また、舞台だけのオリジナル曲「プラクティカリー・パーフェクト」という曲があって、これがこの作品の象徴的な曲で、メリーの高飛車じゃないんだけど自信家で、でも嫌味じゃない!っていう性格がちゃんと出ている曲なんです。これをちゃんと歌いこなせればどんな曲でも歌えるだろうなっていうくらいの曲ですね。
子守同士の対決があって、これも楽しみです。高い声の勝負みたいな、歌でバトル出来る曲なのでそこは見せ場だと思います。
ーー最後に意気込みをお願いします。
平原:まずは体力をしっかりつけて、しっかり食べて健康的なメリー像をつくっていきたい!私が難しいなと思ったのは、メリーの魅力をどうやって伝えるかということ。凄くツンツンしているところもあるけど、優しくってしっかりしている。時々、ドジするところもあるけど、それは私のせいじゃないと言ってしまうようなところも面白いですね。私自身は、そういう性格ではないので、そこはまだつかみ切れていないところですね。メリー像を崩さないで、メリーの人の良さみたいなところをしっかり研究していきたいと思います。一度観終わったら、また観たいと思っていただけるような演技や踊りが出来るようになりたいです。そしてメリーだけではなく、本当にみんなが主役の作品でもあるので、凄い華々しい作品の一員として、私も頑張っていきたいと思っています!
<ミュージカル『メリー・ポピンズ』について>
誰もが知っている名曲、『チム・チム・チェリー(Chim Chim Cher-ee)』等で知られているミュージカル『メリー・ポピンズ』。パメラ・トラバースの原作小説と、1964年に制作され、主演ジュリー・アンドリュース、アカデミー賞も総なめにした名作中の名作映画とをもとに、ディズニーと『オペラ座の怪人』や『レ・ミゼラブル』等のヒットミュージカルのプロデューサーとして知られているキャメロン・マッキントッシュがタッグを組んで2004年に遂に舞台化!現在、世界10カ国以上で上演されている。この2018年の春、日本人キャストで初上演となる。
【公演データ】
ミュージカル『メリー・ポピンズ』
<東京公演>
プレビュー日程:2018年3月18日~3月24日
日程:2018年3月25日~5月7日
会場:シアターオーブ
<大阪公演>
日程:2018年5月19日~6月5日
会場:梅田芸術劇場
<出演>
濱田めぐみ、 平原綾香/大貫勇輔、 柿澤勇人/駒田一、 山路和弘/木村花代、 三森千愛/島田歌穂、 鈴木ほのか/コング桑田、 パパイヤ鈴木/浦嶋りんこ、 久保田磨希/小野田龍之介、 もう中学生 他
公式サイト:http://hpot.jp/stage/marypoppins
©Disney / CML
取材・文:Hiromi Koh