話題作であるミュージカル『メリー・ポピンズ』でバートを演じる柿澤勇人さん、様々な役を演じて着実にキャリアアップ!そんな柿澤さんの特別インタビューが実現、オーディションのことや役柄や自身のことについて語って頂きました!
「TAP!ダンス!毎週レッスンに励んでいます!」
ーーオーディションについての感想を。
柿澤:長い期間に渡ってオーディションを受けましたが、実は僕は劇団四季をやめてすぐの冬、NYのBWに降り立って初めて観たミュージカルが『メリー・ポピンズ』だったんです。当時はまさかバートをやるとは夢にも思っていなくて、単純に1人の観客として楽しい作品だなと思っていたら、この作品のオーディションを受けることになって……最初、バートは僕じゃないんじゃないかな?って思っていました。というのは、向こうではダンスとTAPが凄く上手い役者さんがバートを演じていたので……僕はそんなにいままで踊ってこなかったので、劇団四季にいた時は踊りは結構やってはいましたが……とは言ってももう10年ぐらい前のことですから。劇団四季をやめてからは踊ることはそうないだろうなと……ところが、ここにきて試練が!やるからにはちゃんとやりたいなという感じでレッスンも受けました。実は僕は当時、キースヘリングのミュージカル『ラディアント・ベイビー ~キース・ヘリングの生涯~』で、アキレス腱を切っちゃってて、踊ることも出来ないし、その最中でのオーディションだったので、「たぶん、ダメだな」と思っていたんですけど、芝居と歌、とキャラクターがバートに合うとプロダクションの方が評価して下さったらしく、決まった感じですね。課題は……TAP!ダンス!毎週レッスンに励んでいます!ここをクリア出来たらな、と思っています。
ーーオーディションの様子を教えてください。
柿澤:最初に言われたことは「自分を見せることをしないで」と……。子供達が「主」って言われて凄く難しかったんですが「子供達を上昇気流にのせてあげて」っていうようなことを言われました。オーディションっていうのは「自分が、自分が」っていう風に、しかもよく見せたいっていう欲が出ちゃう。ところがそうではなく「あくまでもここのシーンの主役は子供達だから、彼らを輝かせてくれ」と言われまして。芝居としてきちんと向こうのプロダクションがしっかり作っているんだなっていう印象ですね。
ーー長いオーディションを経て……。
柿澤:どうしても自分の主観で「合う、合わない」って決めてしまったり、得意不得意を自分の中で考えて決めつけたりしちゃうので、客観的に「合ってる」って言ってくださるのは嬉しいこと。僕が親しくさせて頂いている福田雄一さんに相談っていうんじゃないんですが「オーディション受けているんですよね」って言って「(きっと)俺じゃないんだよね~」って言ったんです。そうしたら、福田さんはミュージカルが大好きな人なので「カッキー、ぴったりだよ」って(笑)「ヤンチャなところとかチャーミングなところが絶対にバートには合っていると思う。やった方がいいと思うよ」っていう風に言ってくれたんです。おかげで、その一押しじゃないけど、凄くモチベーションが上がって「そんな風に見てくれている人っているんだ」って……僕は自分がチャーミングだとは思っていませんが(笑)。周囲はそういう風に見てくれているんだなって思いましたね。キャラクターとか芝居の部分でもきっと、新たな自分が発見出来るんじゃないかな?って思うんです。でもホントにヤバい!ヤバいじゃあ表現出来ないくらい!TAPヤバい!
「常に子供と同じ目線で立ってあげるのがバートという役の第1歩、子供と同じ心を持って稽古します」
ーー子供達と関わるシーンがありますね。
柿澤:オーディションの時の演出のディレクションで「子供達もバートが小さい頃はこういう子だったんだよ。それを教えてあげればいいんだよ」ということを言ってたんですよ。子供達との交流を演出したいと。バートもメリーから色々教わってきたし、メリーが子供達に教えているように、バートも小さい頃にメリーから教わっていたんだよっていう……それをわからせてあげればいいんじゃない?という風に言われたんですよ。そこのアプローチが凄い難しいんですが、上からでもない、常に子供と同じ目線で立ってあげるのがバートという役の第1歩、子供と同じ心を持って稽古します。
ーー今迄演じた役と違うところは?
柿澤:闇がないところ(笑)いままで、全部そうだった!劇団四季のファミリーミュージカル以来でしょうか(笑)、甥っ子が4歳になるんですが、彼はバレエやったり歌も歌ったりしてるので、自分が出ている作品を見せたいんですけど、見せられないものが多かったんで……今回は親戚だったり、友達の子供とか、みんなに「観に来てよ」って言える、そこが嬉しい!劇団四季にいたときは「人生は豊かなもの、素晴らしいもの」っていう愛に満ちあふれた素晴らしい作品に携わっていて「いいな」と思っていました。転機が訪れたのは蜷川先生に会った時に「お前、人生なんてきれいごとじゃあ済まねえ!この野郎!」って言われて「綺麗なもの、見過ぎなんだよ」って……「声もよく通るし、何、考えているかわからない、もっと汚いものばっかじゃないか」と。「それを写すのが役者だ」っておっしゃって……「お前の声にはノイズがないんだよ、ノイズが」って言われてて「そうだよな」と思いました。そこから見方が変わってきて、それ以降はそういう役柄も多くやってきましたし、でも、そればかりやってきたら、そういうイメージがついてしまいますので……劇団四季で培ってきたものも出せるところもあるし……人生は汚いところばっかりではなく、綺麗なこともあるよっていう意味ではバートは挑戦しがいがあります。曲もいいですし、みんなたぶん、一度はどこかで聴いたことのあるような曲、僕自身も小学校の時からずっと『メリー・ポピンズ』の曲は聴いていたし、映画も観ました。絶対にみんな口ずさめるような……終演後に「楽しかった」って思えるようなエンターテインメントにはなっているんじゃないかな?っていうのが、この作品の一番の魅力だと思います。
ーー好きな歌はございますか?
柿澤:『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス 『Supercalifragilisticexpialidociou』ですね。あれはちっちゃい頃から歌っていて、実は『メリー・ポピンズ』の曲だっていうのは当時は知らなかったんです。音楽の時間に「あ、これ、『メリー・ポピンズ~』の曲だったんだ」って知ったんです。でも、この歌以外でもいろんな楽しい曲がありますし、歌えないなっていう曲はないですね。『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス ( Supercalifragilisticexpialidociou』は絶対に盛り上がれる!早く振りを覚えて歌いたいですね!
ーーバートとメリーの関係性についてですが、恋人っていう感じではなさそうですね。
柿澤:濱田めぐみさんとは凄く共演してて……何作品やってるんだろう(笑)、今回、平原さんとは初共演なんです。バートとメリーって新しい関係ですよね。凄い大好きだけど、恋でもないけど……愛は……ある……これから稽古して作っていくんですが……今はメグさんと一緒にダンスのレッスンを頑張っています(笑)。また、バートはチャーミングなところがあって、二枚目でもないし、三枚目でもない……なんとも言えない。今迄、演じたことのない、いわゆるわかりやすい男の役ではないですね。仕事は煙突掃除ですが、僕は煙突掃除はわからないですけど(笑)、バートってチャーミングで可愛らしいですよね。
ーーバートとご自身の共通点は?
柿澤:自由気ままなところが共通点かな?(笑)、いろいろな色に染まりたくないし。方向性は違うかもしれませんが、自由は好きですし、楽しいことも好き。自分がどう見られているかは、わかんないですよね。チャーミングとか可愛いとか憎めないとか、よく言われますが、自分で意識して生きている訳ではないですね。
ーー今までと変化したこととかは?
柿澤:実は、最近、緊張しなくなったんです。このオーディションの時も緊張しなかったんですよ。アキレス腱を切って役者人生最大の挫折をしましたが、そこから……いままでは、ずっと袖で足とか震え上がっていたんです。ところがアキレス腱を切って、治って復帰してからは「なるようになるか!」みたいな風に変わったんですよ。ちょっとの失敗でも今までは「何、やってんの?」みたいな感じにずーっと引きずっていた感じだったんですが、今は「やっちゃった!次、行こう!」みたいな風に変わってきました。今回のバート役も、TAPは課題ではあるんですが、僕はTAPダンサーではないし、ダンサーでもないんですが……バートでいれば何でもいいかな?みたいな(笑)、楽観的な部分は最近、出てきてそういう意味ではオーディションは全然、緊張しなかったんです。言われた通りにやって、あとはバートっぽく帽子を被って、なんか箒を持ってルンルンやってたら、「You、いいね!」みたいになっちゃって(笑)、それで今がありますね!課題はめちゃくちゃありますが、楽し過ぎて~しかないです!役との出会いは運だと思うんで、何かしら意味があるんじゃないかと。アキレス腱を切って、今、ちょうど1年半ぐらい経ちましたが。でも、まさか、TAPやるとは思っていなかったから。劇団四季の演目で『クレイジー・フォー・ユー』や『CATS』はTAPのシーンはありますが、僕は踊れなかったから完全に除外されていました(笑)……今回、初めてTAPシューズ、買いましたし、やれることが増えれば、視野が広がるかもしれませんしね!
ーーたのしみなシーンは?
柿澤:ミュージカルに慣れていない初心者の方が観ても驚くようなフライングがあります。僕が一番恐れていて、凄く楽しみなのは、バートがフライングで吊られながら昇っていくんですよ。天井で逆さになっている名シーンがあるんです。そこは僕もNYでポカーンと観てて「すげーー!!」と思いました。ダンスもキャストの方々が本当に素晴らしいダンサーの方々ばかり!曲は全部いいので、初心者が観ても絶対に「ミュージカルって楽しいんだな」っていう風に思ってくれる作品なんじゃないかなと思います。難しく考える必要もないし!あとはディズニーならではの派手な演出もたくさんあるので。単純に楽しめるようになっています。
ーー華やかで凄そうですね。
柿澤:めちゃくちゃ派手ですね。そこはバートの一番いいところで、他にも凄いTAPのソロもあるし、TAPの群舞もあるし『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス ( Supercalifragilisticexpialidociou』も盛り上がって、シアターオーブ、大歓声!みたいな(笑)。ショーストップ出来るような曲もあって、そこのためにTAP頑張っています、そこは成功したいな。昔、ファンクラブのイベントでバンジー・ジャンプやるっていう(笑)、動画なんですけど、「柿澤、どこまでやれるのか?!」みたいな企画があって、読売ランドの割と低めの、10メートルぐらいから逆さになって落ちるっていうのがあって1時間ぐらいずっとダメでした~最終的にはやったんですが、やるまでに1時間もかかって……それを思い出すとヤバいですよね、めちゃくちゃ怖いです、高いところは大丈夫なんですが……。
ーーNYで観た『メリー・ポピンズ』ですが、どんな状況でご観劇なさったんですか?
柿澤:着いたばっかりの時差ぼけ状態で、NYの友達には「その日に到着して夜、観るのはやめた方がいい」と忠告されました。でも、せっかく来たのに「ミュージカル、何でもいいから観たい」って感じになってそれで観たんですよ。本当に寝なくって最後まで観れたんで~(笑)、時差ぼけにも負けない作品!
ーーメリーみたいな不思議な力が使えたら?何したいですか?
柿澤:え~何でもいいですか?なんか力がつくとかでもいいですか?芝居が上手くなりたい!すんません、こんなんで(笑)、上手い人いっぱいいますからね~世界には。
ーーそれ以外では?
柿澤:却下ですか(笑)ハハハ~そんなに欲ないし。一目惚れさせたい!ハハハ~もう魅力まとって「あ、凄い!TAP、凄い!」って思ってくれる力!ハイ。
ーー作品PRを。
柿澤:『メリー・ポピンズ』は世界中で愛されている作品で遂に日本で上演されることになりました。長い期間のオーディションを経てやっとつかめた役なので、全身全霊込めて演じたいなと思っています。歌もあり、ダンスもあり、TAPもあり、芝居もあり、ミュージカルの全ての要素をフル稼働して……ハードルは高いですが、NYとロンドンのクオリティに達するまで本当に皆が努力しなきゃいけないと思うんです。やるからには!その水準に引き上げなかきゃいけないなと思いますし、日本ならではの『メリー・ポピンズ』を必ずや成功させますので、シアターオーブでお待ちしております!
<ミュージカル『メリー・ポピンズ』について>
誰もが知っている名曲、『チム・チム・チェリー(Chim Chim Cher-ee)』等で知られているミュージカル『メリー・ポピンズ』。パメラ・トラバースの原作小説と、1964年に制作され、主演ジュリー・アンドリュース、アカデミー賞も総なめにした名作中の名作映画とをもとに、ディズニーと『オペラ座の怪人』や『レ・ミゼラブル』等のヒットミュージカルのプロデューサーとして知られているキャメロン・マッキントッシュがタッグを組んで2004年に遂に舞台化!現在、世界10カ国以上で上演されている。この2018年の春、日本人キャストで初上演となる。
【公演データ】
ミュージカル『メリー・ポピンズ』
<東京公演>
プレビュー日程:2018年3月18日~3月24日
日程:2018年3月25日~5月7日
会場:シアターオーブ
<大阪公演>
日程:2018年5月19日~6月5日
会場:梅田芸術劇場
<出演>
濱田めぐみ、 平原綾香/大貫勇輔、 柿澤勇人/駒田一、 山路和弘/木村花代、 三森千愛/島田歌穂、 鈴木ほのか/コング桑田、 パパイヤ鈴木/浦嶋りんこ、 久保田磨希/小野田龍之介、 もう中学生 他
公式サイト:http://hpot.jp/stage/marypoppins
©Disney / CML
取材・文:Hiromi Koh