舞台「RE:VOLVER」挫折、苦渋、それでも「もう一度、目指してみないか、俺たちの夢」

ミュージカル「ヘタリア」やミュージカル「王室教師ハイネ」などの演出を手掛けた吉谷光太郎が5年ぶりに新作のオリジナル舞台作品、久しぶりの100パーセント創作に挑戦。

幕開きは海の音、そして轟音が轟く。セットは荒廃した都市のイメージ、舞台に阿羅来(安西慎太郎)が登場し、それから次々と主要な登場人物たちが登場する。この壁に囲まれた都市のさらに荒んだ貧民街、「逃げろ!作戦は失敗だ!」と叫ぶ阿羅来、次の瞬間、銃の音が・・・・・・「阿羅来さん!」と叫ぶ聖木(植田圭輔)。衝撃的な始まりだ。巨大な城壁に囲まれた都市『霞宮』、帝国軍への独立戦争の敗北によって住民は戦犯扱い、まるで監獄のような街になってしまった。

ここから脱出を考える聖木は兄と慕う阿羅来と親友の伊透(橋本祥平)らとともに脱出を試みるもその夢は破れた。そして仲間はバラバラになり、年月が流れた。それぞれ皆、成長し、聖木は盗賊になり、伊透は刑事になっていた。それ以外の仲間、壬浦(櫻井圭登)は殺し屋兼探偵に、玄汰((山田ジェームス武)は革命軍のリーダーになっていた。そして阿羅来は、なんと帝国軍の軍人になっていた。かつては仲間だったのに、今は立場が異なることによって生じる摩擦、しかし、昔、同じ夢に向かっていたという共通点がある。そして昔に盗んだ国家機密の設計図をめぐって、バラバラだった彼らは集まっていくのだが、思惑や駆け引きもあり、関係性は緊張感を増すばかり。彼らはどこへ向かっていくのか・・・・・・というのがだいたいの流れである。

聖木が基本的に主人公であるのだが、群像劇的な要素もある。キャラクター一人一人にしっかりとしたバッックボーンがある。聖木の親は刑事に殺された。だから友人の伊透が刑事になっていること自体がアンビリーバブル。さらに、あんなに慕っていた阿羅来が帝国の側に、というのも彼にとっては大きな衝撃だ。しかし、それでも現実を見据えて行動していく。聖木の心は荒んでいるが、どこかピュアで夢を諦めない姿は胸が熱くなる。そんなキャラクターを植田圭輔が熱演する。彼が慕う阿羅来、帝国側の人間となってからはクールで冷たいが、心のどこかでは熱く燃え滾るキャラクター、安西慎太郎が緩急つけて表現する。それ以外のキャラクターも一癖も二癖もある性格と生い立ち、伊透は上司からいわゆる『パワハラ』を受けていてもどこか意志と信念の固い人物、橋本祥平が力を込めて演じ、明るい性格の壬浦演じる櫻井圭登、弾ける印象であったが、後半は単なる明るいだけでなく、何かの思惑を感じさせる奥行きのあるキャラクターを好演。玄汰はめっぽう強い剣の達人という設定で革命軍のリーダーだが、引き篭もりという面があり、それがコントラスト、ちょっと愛すべきキャラクターになっており、山田ジェームス武がその落差を見せて表現。その他の脇キャラを演じる面々、磯貝龍虎が他の作品で見せる『笑い』を封印して暴力的な刑事を、川隅美慎が癖のある革命側のキャラに、成松慶彦は帝国側の威圧感のある人物を演じている。また、山岸拓生はちょっとハード・ボイルド、タイソン大屋のバーのマスターは『小指立ってる』系で、皆、いい味を出しており、芝居を引き締める。

また、キャスト全員、激しい殺陣とアクション、しかし、単なるアクションではなく、感情の発露からの動きなので、エモーショナルかつ“胸熱”。
ラスト近くは意外性のある展開、そして秘密も明かされ、収束していく。

皆、多かれ少なかれ挫折を味わっているキャラクター、決してハッピーではないが、それでも生きていく。夢に向かうと一言で言ってもそう簡単ではないし、そこに到達するにはさらなる壁が立ちはだかる。それでも決して諦めない、ラストシーンは、終わりではなく、次への『一歩』。中盤で「もう一度、目指してみないか、俺たちの夢」というセリフが出てくる。構成的には、一応完結はしてるが、ここから何かが始まる予感、その後の彼らも気になる「RE:VOLVER」、リボルバー、5つの弾には様々な『人生』がある。また、この作品のテーマ曲「灰色の街」(作詞:吉谷光太郎)をミュージカル「ヘタリア」に出演もしていたアーティストROUがヴォーカルを務めている。

なお、ゲネプロ前に囲み会見があった。登壇したのは植田圭輔、橋本祥平、山田ジェームス武、櫻井圭登
、安西慎太郎。

櫻井圭登は「夢を失わない、夢を取り戻す」と作品を評したが、過酷な状況と運命に立ち向かう登場人物たちには胸が熱くなる。そして自身の役柄については「天真爛漫で精神年齢が幼い役」とコメントしたが、その明るさは荒涼とした場所での一服の清涼剤的な役割を果たしている。山田ジェームス武は「男性も楽しめる男らしさ、かっこよさ」と語る。皆、それぞれの正義があり、それを大切にする姿勢は“漢”。さらに「前のめりになれる」とPR。橋本祥平はカンパニーの面々について「熱い方が多い」とコメント、作品については「逆アニメ化できるくらいのものです」と絶賛。キャラクターのバックボーンがしっかりしているので主軸を変えた『外伝』的なものも出来そうな。安西慎太郎は「演出が見所。オリジナルで細かいところまで磨きがかかっています」と語ったが、そこはオリジナルならでは。ギリギリまで調整を重ねた様子がうかがえる。いろんなコメントが出た後で植田圭輔は「みんなが言ってる通りで」と言い、「それぞれが持っている夢・・・・・・諦めずに」とコメントしたが、全てのキャラクターの絶対に諦めない姿勢は観ていて元気になれる。またPRコーナーでは「思い切り!」(櫻井圭登)、「芝居が熱い!」(山田ジェームス武)、「吉谷さんの演出で!」(橋本祥平)、「吉谷さんの演出が見所!」(安西慎太郎)、「できることは一生懸命にやる、誠心誠意、やっていきます!」(植田圭輔)。キャスト全員が「稽古は大変だった」と言い、さらに「吉谷さんが妥協しない、楽しんでくれている」と植田圭輔が発言(全員、頷く)したが、映像も所々で効果的に使用、アンサンブルのパフォーマンス、1幕物でおよそ2時間15分、疾風怒濤のように展開、片時も目が離せない、そして目頭も熱くなること、請け合い!そしてきっと千秋楽は進化しているに相違ない感のある舞台、10月28日まで!

《インタビュー》 舞台「RE:VOLVER」作・演出 吉谷光太郎

【概要】
タイトル: 舞台「RE:VOLVER」
公演・劇場:
[東京]2018年10月18日(木)〜10月22日(月) / シアター1010
[大阪]2018年10月27日(土)〜10月28日(日)/ サンケイホールブリーゼ
出演キャスト: 植田圭輔、橋本祥平、山田ジェームス武、櫻井圭登
磯貝龍虎、川隅美慎、成松慶彦、山岸拓生、タイソン大屋/安西慎太郎
作・演出:吉谷光太郎
制作:ポリゴンマジック
主催:ポリゴンマジック・サンライズプロモーション大阪
公式HP: http://revolver-stage.com
©ポリゴンマジック

取材・文: Hiromi Koh