《インタビュー》 舞台「RE:VOLVER」作・演出 吉谷光太郎

ミュージカル「ヘタリア」やミュージカル「王室教師ハイネ」などの演出を手掛けた吉谷光太郎が5年ぶりに新作のオリジナル舞台作品を上演する。久しぶりの100パーセント創作に挑戦するが、この企画が誕生したきっかけや座組のことなど、稽古も佳境に入った10月某日、新作について、吉谷光太郎に大いに語ってもらった。

「volver」っていうスペイン語、これの意味は『戻る』『返す』、『帰ってくる』。だから「RE:VOLVER」は復活の物語にしようと。

――ずっと原作ものを手掛けてきて、久しぶりのオリジナル作品ですが、これをやることになったきっかけとタイトルの由来について。
吉谷:会社に入ってから5年ほど経ちますが、「一回(オリジナルに)、挑戦してみたら?」とプロデューサーに言われまして。僕はもともとはオリジナル作品を作っていましたが、会社の企画会議に上がるものは、やはり原作ものが多く、オリジナル企画は、自分からは『発信』はしていなかったんです。プロデューサーから「やってみたら?」って言われて、「是非、是非!」ということでスタート。誰とやりたいかで、一番先に浮かんだのが植田圭輔君、彼とは何作か一緒にやって・・・・・・主演では舞台「戦国無双」、ミュージカル「王室教師ハイネ」、それでいろいろ話すようになった。実は雑誌の植田君のインタビューで、呼ばれたんですよ。そこで普段話さないようなことも話せて・・・・・・そういうこともあって、植田君と一緒にやりたいなと・・・・・・。植田君は原作もの、2.5次元舞台だと、キラキラっていうのかな、そういうキャラクターを演じることが多いと思うんです。そういう役ではなく、ちょっと悪い奴を演じてみたい・・・・・いわゆる、悪いキャラクター、悪役やりたい、ダークヒーローやりたいと・・・・・・じゃあ、植田圭輔君がダークヒーローになるっていう話、オリジナル作品で、主演俳優は植田圭輔。その流れで一緒にやってくれることになって、初めて現実的な話になり、じゃあ、どんなストーリーにしようかということを考えだしました。

©ポリゴンマジック

――確かに植田さんはいわゆる、2.5次元舞台をやる時は、だいたいそうですね。
吉谷:見た目がああだから、原作物、2.5次元舞台では、見た目が可愛らしいキャラクターであったり・・・・・・だから、悪い奴、悪役っていうのはあまり拝見していなかった。彼とは「やりたいですね」っていう話はしていました。劇場も、ちょうど会社が押さえていたところで、この時期に「やってみないか」って言われて、大阪も劇場が決まっていて・・・・・・ストーリー決めなきゃ!作んなきゃ!みたいな(笑)。物語は4人の話にしたら?って言われて・・・・・・・最初はメインは3人だったんですよ。それを4人にすれば2:2も組めるし、1:3もあり。結構、いい組み合わせができる・・・・・・キャラクターたちが最初は、仲間だったのが、バラバラになって、最終的にはまた集まってグッと固まるっていうような、その集まる過程でちょっとトラブルがあって・・・・・これは面白いな、と。ストーリーよりもメインキャラの人数が先に決まった(笑)。
――バラバラになった登場人物が集まる過程、いわゆる、ドラマ、ちょっとすったもんだがあって、収束していく、そういう流れですね。
吉谷:そうですね。
――それをやるにあたって『4』がわりといいと。2:2とか、3:1になったりする。
吉谷:そうなんですよ〜。4人のメインストーリーが決まったのですが、実は安西君にやってほしい役割、4人の中に、安西君が入るイメージはあんまりなかったんです。植田君と一緒に『走っていく』よりもちょっと、いわゆるラスボスっていうんでしょうか、メインの4人とは別の立ち位置となった場合、4人が倒すべき相手っていうことを考えまして、最初は5人の仲間にしてしまおうと。一人が、劇中では死んだことになっています。失敗して『彼』が死んでしまったことによって4人がバラバラになって・・・・・・みたいな構成。よって4人プラス1の物語にしようと。あと、自分なりのハードボイルドに、イメージとしては『5発装填のRevolver(リボルバー)』みたいな。タイトルですが、最初は、彼らのチーム名「都市海賊」をそのままタイトルにしていたんですけど、「ダサい」って言われちゃって、「変えた方がいい」って言われちゃって(笑)。女性社員からも「ダサい」と(笑)。反対されて、何にしようかと、とりあえず響きがいいのにしようと。5発装填のRevolver(リボルバー)うん、いいよね〜、Revolver(リボルバー)って何となく響き的にも、いいな〜と。で、ちょっともじらせようと。リボルバーの「Re」をタイトルでは「RE:」にして・・・・・・これはラテン語からきた言葉で「〜について」っていう意味合いがあります。タイトルの「RE:VOLVER」は僕の造語ですが、「volver」っていうスペイン語、これの意味は『戻る』『返す』、『帰ってくる』。だから「RE:VOLVER」は復活の物語にしようと。あータイトルにぴったりだなと。それでこれに決めたんです。
――戻ってくるから。
吉谷:そう。バラバラだった奴らが戻ってくるから。夢をもう一度、みたいに『あの頃に戻る』とか『あの場所に戻る』とか。いろいろあると思うんです。そういうようなことがいいなと思って、タイトルの由来はそういうことですね。

しばらく原作やってきたし、原作物で出会った仲間ですし、オリジナルですが、現在進行形の原作物を作っているみたいな感じでしょうか。

――稽古は?佳境に入っていますね。
吉谷:構成の物量が多く、今までの作品と比べると一番時間がかかっている。ワンシーンにかける構成の時間が、こだわりが強くなりすぎて、ストレートプレイでもギリギリに(笑)。でも、ちゃんと台本は上げていたんですよ(笑)。
――そこが原作物と違うところですね(笑)。原作物は厳然たる世界観と設定がある。
吉谷:そうですよね。目指すべき世界観、方向とキャラクターがある、ヒントは必ずある、このキャラクターはこうじゃないよね、とか。そんな時はアニメ見た方が、早かったりする。ところがオリジナルだとキャラクターを現場で構築しようと微調整をしている間に、『あっ、こっちの方が面白い』みたいな(笑)原作者はここにいるから変えてしまおう(笑)。そんな感覚なんです。しばらく原作やってきたし、原作物で出会った仲間ですし、オリジナルですが、現在進行形の原作物を作っているみたいな感じでしょうか。
――ING、ですね。
吉谷:そうですね。そういう思いもありつつ、今回も充実したキャストですが、全員の見せ場を、位置づけようと。そこがお楽しみで!どうなっちゃうのかな?と(笑)。ギリギリですが、なんとか仕上げています。
――アクションは見せ場としては重要ですね。
吉谷:そのアクション自体に、生き様であったり、ぶつかり合いみたいな、ドラマを入れたいんです。そこが一筋縄ではいかない。ただただワーーーーってやっていればいいっていう問題ではない。構築の時間もかかるし、殺陣師の奥住さんが汲み取ってやってくださるので丁寧に作っています。その分、時間が・・・・・・ギリギリの、いつものパターン(笑)。でもタレントが揃っているので、信じています。
――キャストさんは揃っていますね。場数はみなさん、踏んでいますし。
吉谷:そこは、もうほとんどの方がご一緒していて、川隅君だけ、初めてですが、僕の手法もわかってもらってきているし。僕がやりたい演出に乗っかってもくれるし、「こうやってやるんだったら、こうやろう」みたいなことをアイディアもくれるし、たのもしい仲間ではありますね。
――そういう座組って重要ですね。誰がいるか、気心知れた人間がいる。
吉谷:そうなんですよ。ミュージカル「ヘタリア」もそうだったのですが、お互いにあまり干渉しあわないのが、いい座組ができるパターンなんだなっていうことがある。それぞれ、そんなに人のことに干渉しないけど、ご飯は結構行ってたりするらしい。
――ほどよい距離感ですね。
吉谷:そこがね、一つのね、座組の良さっていう部分かな?と思いますね。
――(笑)
吉谷:「そっか、そっか」ぐらいな感じ。
――ほどよい「車間距離」。ベタベタし過ぎない。
吉谷:うん。リスペクトしあっているし、いいですよね。メインチーム5人、この5人の過去のシーンが、割と劇中に出てきます。それも仲の良さを結構出してて「あ、いいな」、とてもいいです(笑)いい座組。

原作物舞台作品でファンになってくださった方に、「あ、オリジナルなんだ」って驚かれるようなものにしようと、そういう気概でやっています

――最後に、締めを、公演PRをお願いします。
吉谷:今までやってきた原作物の経験を全部覆してオリジナルをやる気はなく、原作物舞台で培ったものを今回、オリジナルでやりたくって、原作物舞台作品でファンになってくださった方に、「あ、オリジナルなんだ」って驚かれるようなものにしようと、そういう気概でやっています。難解な物語ではなく、わかりやすいアクション・エンターテイメントに、そのあたりのところは、おたのしみに。僕も、メデイア・ミックスじゃないですけど、そういう風になるといいなっていう野望とか、うん!そのくらいの思いで作っています。
――最近の傾向、10年ぐらい前は人気のアニメを単純に舞台化しましょう、だったと思います。今は舞台発でアニメ化する、コミカライズする、という流れはここ1、2年ありますね。3次元から2次元にしようと。要するに、「そういう流れになったらいいな」ですね。
吉谷:そうですね。舞台とアニメが同時スタート、みたいな。舞台役者の人がアニメで声優やったり・・・・・・「王室教師ハイネ」がそうでしたね。映像化やドラマ化、その架け橋を若手の人気の俳優さんがつないでくれている。僕らクリエイターは、原作をお借りして何かさせていただく。それはもちろん、楽しい事ですが、クリエイターとしては、自分から発信していくものをやりたいと。なれるようにできるといいなって。
――そこは「見てください」ですね。
吉谷:なかなか、楽しい感じに、肩苦しい感じにはなっていないです。笑いも豊富だし、磯貝君に笑いを封印するって言ったからもしかしたら、笑えない舞台になっているかもしれないって思われがちかもしれないけど(笑)。
――ありがとうございました!公演を楽しみにしています!

<あらすじ>
巨大な「城塞」に囲まれた都市『霞宮(カミヤ)』。そこはかつて外国船でやってきた海賊の英雄に与えられた都市国家。しかし帝国への独立戦争の敗北によって、その後市民たちは戦犯扱いとなり、城塞都市はさながら高い壁の監獄と化した。
貧民街に暮らす少年、聖木(スズキ)は、日々盗みをしながら生きてきた。ある時、通りがかった男から盗んだバッグの中に、城塞の設計図を見つける。聖木は兄と慕う阿羅来(アラキ)、親友の伊透らと共に『都市海賊』を名乗り、都市からの脱出を試みる。しかし、少年たちの夢はもろくも崩れ去り、その後バラバラに生きていくことになる。時は過ぎ、聖木は盗賊として生きていた。
ある時、聖木は刑事となったかつての仲間、伊透(イトウ)と対峙する。帝国軍と革命軍の戦いが始まろうとする中、城塞に囲まれたその都市で、彼らは再び集まり少年時代の夢に向かい始める。

【概要】
タイトル: 舞台「RE:VOLVER」
公演・劇場:
[東京]2018年10月18日(木)〜10月22日(月) / シアター1010
[大阪]2018年10月27日(土)〜10月28日(日)/ サンケイホールブリーゼ
出演キャスト: 植田圭輔、橋本祥平、山田ジェームス武、櫻井圭登
磯貝龍虎、川隅美慎、成松慶彦、山岸拓生、タイソン大屋/安西慎太郎
作・演出:吉谷光太郎
制作:ポリゴンマジック
主催:ポリゴンマジック・サンライズプロモーション大阪
公式HP: http://revolver-stage.com
©ポリゴンマジック

文:Hiromi Koh