入江雅人、池田成志らオール福岡人による福岡弁満載の切ないゾンビもの『帰郷』開幕!

2019年1月25日(金)に舞台『帰郷』が六本木・俳優座劇場にて開幕した。本作は、福岡出身の俳優・作家・演出家の入江雅人が、「福岡出身の強烈な役者たちによる本当の福岡弁でお芝居がしたい!」という想いで20年も前からあたためていた企画。東京で発生したゾンビパニックを背景に、笑いと涙で綴る福岡の男達の切なすぎる青春ストーリーが描かれる。

入江がライフワークとして続けている『グレート一人芝居』の中で何度も上演され、泣ける名作と評されてきた『帰郷』をもとに、出演者を6名として「青春の終わりをセンチメンタルに描く」というコンセプトで書き下ろした新作。出演は入江のほかに、池田成志、田口浩正、坂田聡、尾方宜久、岡本麗と全員福岡出身の実力派俳優陣が集結。さらに、本作品のチラシ・ポスターのイラストを、福岡出身の松尾スズキが担当している。

福岡出身の演劇人たちによる夢のコラボレーション企画で、「福岡人でおもしろいことをやろう!」という熱い地元愛のこもった役者陣の気概があふれる作品となっている。

物語の舞台は1980年の福岡。真夏の暑い夜、映画監督を志すしげお(池田)はクラスメイトのトオル(入江)、ひろし(田口)、たかし(坂田)、竜彦(尾方)と共に学校のはずれの部室で、秋の文化祭で上映するホラー映画を撮影していた。そこで彼らは不思議な体験をする。

そして時が過ぎ、2021年7月の東京。トオルと竜彦は東京で偶然にも再会。トオルは売れない映画俳優として暮らしていた。映画のオーディションで一緒になった別府(池田)とゾンビ役のオーディションを受けるトオル。だが、東京ではすでに本当のゾンビパニックが発生していたのだった。トオルはゾンビから逃れようと西へと向かうのだが……。

一方、福岡では、しげおが母親・のぶこ(岡本)の店で、ひろしとたかしと共に東京で発生したゾンビパニックについて話題にしていた。東京で暮らす者、地元に残った者、かつての仲間たちにも運命の時が迫っていた……。

冒頭から福岡弁全開の出演者たち。入江と田口がNHK「サラリーマン・NEO」で披露していた福岡弁コントのような福岡弁の怒とうの応酬に抱腹絶倒。言葉の意味が全く分からなくても、その音やニュアンスで観ている側になんとなく分からせてしまう実力派たちの演技と福岡弁のグルーヴがおかしさだけでなく、後に切なさや哀愁といったものももたらしてくれる。

地元福岡人で集結したという本作。前日譚となっている登場人物たちが学生時代にワイワイとバカをしながら映画製作をするシーンが、まるで、福岡人が集まって芝居を作っている本作の出演者たちの姿にオーバーラップし、彼らも稽古中はこんな感じだったのだろうかと思わされる。

ちょっと甘酸っぱくてビターな青春群像劇から、突如のゾンビパニックという一見ナンセンスとも思わせるストーリー展開だが、そこには入江の芝居愛、映画愛、そしてゾンビ愛がこれでもかと盛り込まれている。そして、このぶっ飛んだまさかの展開だからこそ、物語後半の福岡での切なさや哀愁といった感情がより観客の心に深く刺さるのかもしれない。

たどりついた故郷に待つものは何なのか。1980年代を席巻した数々のヒットナンバーと共に語られるオヤジたちの青春の終わりとゾンビの物語。この相容れないようなワードが、福岡弁のグルーヴに彩られ、笑いと感動をもたらしてくれる舞台だ。

なお、キャストより開幕に向けてのコメントが公開されたので、以下に紹介する。

池田成志:見てどう感じてくれるのか?益々わからなくなってきました(笑)我々福岡人がこんなセンシティブに描かれるなんて!少々の照れくささと、引っ張りだすおじさんおばさんの元気をどうぞ優しい目でご覧くださいませ。

田口浩正:とにかく、みんなとのグルーヴを楽しみ、頑張る所存でございます。気楽に、観てください。

坂田聡:これだけ濃い福岡弁をしゃべる機会もあまりないと思うので、楽しんで、丁寧にやろうと思います。今年一発目、一生懸命やりますんでよろしくお願いします。

尾方宜久:他では観ることのできない、唯一無二の芝居になったと思います。全力で挑みます。

岡本麗:とにかく、おもしろいと思います。脚本も役者もおもしろいので、十分に楽しんで頂けると思います。楽しんで、観て頂きたいです。

入江雅人:これまで10本近く作ってきたゾンビモノの作品の集大成でもあり、一人芝居でやってきたこともちりばめていて、僕が作ってきた芝居の集大成でもあると思います。今までになかった静かなトーンの芝居も入って、新しいものもみせられると思うので、ぜひ観に来てほしいです。福岡の人にももちろん観てもらいたいし、東京にいる、福岡や他の地方から出てきている人にも観てもらえたら。ちょっと悲しい話ではありますが、絶対に、故郷やかつての友人のことを思い出したりできる、温かい想いが胸に燈るような芝居です。出演者の方も皆さん良いと思いますので、是非、観に来ていただきたいです。

【公演概要】
舞台「帰郷」
日程・場所:
<東京>2019年1月25日(金)~2月3日(日) 俳優座劇場
<福岡>2019年2月8日(金)~10(日) イムズホール
企画・作・演出:入江雅人
出演:池田成志、田口浩正、坂田聡、尾方宣久、岡本麗、入江雅人
主催・制作:エイベックス・エンタテインメント
公式サイト:https://www.kikyou2019.com/

取材・文:櫻井宏充