舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇~制・限・解・除(リミットブレイカー)~ 誰よりも速く!

2017年に突入した「新インターハイ篇」。今回の新作公演では、新キャストとして小野田坂道役に糠信泰州が、水田信行役に阿部大地が、巻島裕介役に栁川瑠衣が、東堂尽八役に秋葉友佑が出演。2012年からは舞台が上演されており、2013年10月からはテレビアニメ化、2015年8月28日には劇場版アニメが公開。2016年8月26日から同年10月7日まではテレビドラマが放送されるなど、様々なメディアミックス展開が行われている作品。
今回はインターハイ2日目が描かれる。

最初に小野田坂道(糠信泰州)が自転車に乗って登場する、「ずっと走っているみたいだ」とつぶやく。そしていつものオープニング、登場キャラクターが全て登場し、「誰よりも速く!」という。そしてここで初めて観る人には予備知識、何回か観ている人には復習になるが、これまでの流れをテンポよく見せていく。小野田坂道が自転車競技に目覚め、最初のインターハイ、そこで優勝する。それから月日は流れ、2年生になった坂道、インターハイ1日目、そこでの勝敗などが語られる。そしていよいよインターハイ2日目に。手嶋純太(鯨井康介)、青八木一(八島諒)、3年生にとってはこれが最後のインターハイ。ドラマチックな音楽、いつもの手法、ハンドルだけで自転車を表現、俳優陣は舞台を縦横無尽に駆け巡る。モノローグ、パズルライダーがセットを動かす、それが自転車競技をより、立体的にダイナミックに見せる。登場するキャラクターのバックボーン、思い、それらを丁寧に描いていく。

小野田坂道が主人公ではあるが、群像劇的な要素があり、レースにかける思い入れや過去などが語られる。新開悠人(飯山裕太)は一年生、兄は新開隼人、箱根学園の自転車競技部の主要メンバーであった。弟だから何かと兄と比較される。また、ヒール役的な立ち位置の御堂筋翔(林野健志)、小学生の時の記憶、母親が病弱で入院していた。毎日のように見舞いに行っていた頃の思い出、それはちょっと悲しいエピソード。彼の母親は息子が大きくなって自転車を颯爽とこぐ姿を思い描いていた。そんな母の思いを知っている御堂筋翔、観ているこちらも思わず胸が熱くなる。また競技を観に来た先輩、巻島裕介(栁川瑠衣)、東堂尽八(秋葉友佑)。そういったことを横糸のようにストーリーに絡ませていき、物語に厚みと深みを与えていく。

最初は散り散りになっていた総北学園だったが小野田坂道と今泉俊輔(猪野広樹)が全力で追い上げる。そして先頭集団に追いつく。総北、箱根学園、京都伏見と三つ巴の戦い。その勝負、もちろん誰も譲れない戦い、新開悠人、御堂筋翔、今泉俊輔(猪野広樹)の死闘の先は?
そしてインターハイも残すところ1日を残すだけとなり、小野田坂道は一人夜の坂を走りに出かけるが、そこで巻島裕介(栁川瑠衣)、東堂尽八(秋葉友佑)に遭遇する。こんな夜遅くに巻島と東堂は全力でペダルを回していたのだった。
スピーディに、そして濃密に表現する試合、感情、想い、過去。思わず見入ってしまうが、演出もさることながら、俳優陣の熱演が光る。久しぶりの舞台「弱虫ペダル」であるからなのか、ゲネプロでの気合いの入り方が半端なく、セリフに力がこもる。そしてもちろん、お笑いシーンも!お約束の『女装』も『自動販売機』も!皆、持ち役以外の役があり、ここは注目ポイント。パズルライダーの活躍、彼らなくしてはこの舞台は語れない。映像も使わず、マンパワーだけで進行していく舞台、いくつもの『感涙』ポイント、そして物語はまだまだ続いていく。ストーリーはあらかじめ単行本を読めば結果や流れ、先の展開もわかってしまうのだが、それでもドキドキ。またコミックやアニメを視聴しておけば表現の違いも面白く、はっきりしている。インターハイ3日目はいつになるのかはわからないが、ちょっと待ち遠しい。『本編』終了後は、キャストと一緒に!小野田坂道の一押しのアニメの歌、「ヒメのくるくる片思い」を振り付きで歌って踊って!およそ2時間10分ほどの上演時間、あっという間であった。

ゲネプロ前に会見があった。登壇したのは小野田坂道 役:糠信泰州 今泉俊輔 役:猪野広樹 鳴子章吉 役:百瀬朔 新開悠人 役 飯山裕太 御堂筋翔 役 林野健志 巻島裕介役:栁川瑠衣 東堂尽八役:秋葉友佑。
糠信泰州は「成長」と「気持ちの変化」という言葉を口にした。レースを通じて何かが変わる。猪野広樹は「それぞれが勝たなければならない」と語るが、勝利したいのは皆同じ。そして「2位」では意味がない。1位と2位では雲泥の差がある。百瀬朔は「かっこいい、熱いところを!」とコメントしたが、試合シーンはまさに汗ほとばしり、全速力で疾走する。ないはずの自転車が見えてくるから不思議だ。飯山裕太は「兄へのコンプレックスがあります」とコメント、コミックでもアニメでも描かれているが、悠人自身も優秀な選手であるが、兄・隼人は彼にとっては大きすぎる存在、そのことによって悩み、しかし、それが彼の原動力になっているのも確かだ。御堂筋翔を演じる林野健志、御堂筋翔はこの物語ではヒール役的な立場であるが、母との関係性、それが彼を突き動かしている。「先を見ながらゴールを・・・・・いろんな想いが詰まっている」とコメントしたが、御堂筋翔自身も今は亡き母の喜ぶ顔が見たくて「先」を見ている。うずくまるシーンがあるが、ここは胸が熱くなる。栁川瑠衣は久しぶりに登場する巻島裕介を演じている。「熱いクライマー同士の・・・・・」、そう、ラスト近くで東堂尽八と熱い走りを見せる。試合でもなんでもない、ただそこに道があり、二人して走るシーンは必見、そして秋葉友佑もまた見所として「巻島とのレースシーン」をあげた。また「リミット解除はどんな時?」という質問で糠信泰州はこの作品初参加、「稽古場でブレイクできた」と語る。群像劇とはいえ、小野田坂道はこの作品の主人公、今回の舞台でも一番に、しかも一人で登場するが、口跡もよく将来性を感じさせる。また林野健志は関西弁を喋るのだが「本物の関西人(百瀬朔)の前で恥ずかしい(笑)」とコメント。百瀬朔は関西人らしく「納豆を克服したい(笑)」といいつつ「納豆5パック買ってくるのをやめさせたい」と言って笑いを取った。猪野広樹はサッカーゲームが好きだそうで「負けると心残り」と語るが、その負けん気が舞台上での今泉と重なり、デッドヒートのシーンは必見。糠信泰州は「初の舞台『弱虫ペダル』です。経験したことのない未知の世界、たくさんの先輩たちが出演、僕もつないでいかなくては・・・・・走っていきます!」と語る。ゲネプロ終了後の挨拶もしっかり!キャスト陣の頑張りはぜひ、劇場で!

<Blu-ray&DVD発売決定!>
2019年9月18日
Blu-ray:9800円(税別)
DVD:8800円(税別)
<ハイタッチ会!>
2019年5月14日 14時開演(15時半終演)
参加資格:チケットをお持ちの方はどなたでも
詳しくはHPを!
登壇キャスト:小野田坂道役:糠信泰州、鳴子章吉役:百瀬朔、手嶋純太役:鯨井康介、泉田塔一郎役:河原田巧也、真波山岳役:杉山真宏、新開悠人役:飯山裕太、御堂筋翔役:林野健志、水田信行役:阿部大地、巻島裕介役:栁川瑠衣、東堂尽八役:秋葉友佑

【キャスト】
<総北高校>
小野田坂道役:糠信泰州/今泉俊輔役:猪野広樹/鳴子章吉役:百瀬朔/手嶋純太役:鯨井康介/青八木一役:八島諒/鏑木一差役:原嶋元久/古賀公貴役:本川翔太
<箱根学園>
泉田塔一郎役:河原田巧也/葦木場拓斗役:富永勇也/黒田雪成役:伊藤澄也/真波山岳役:杉山真宏/銅橋正清役:兼崎健太郎/新開悠人役:飯山裕太
<京都伏見>
御堂筋翔役:林野健志/水田信行役:阿部大地/岸神小鞠役:天羽尚吾/山口紀之役:一瀬悠
<卒業生>
巻島裕介役:栁川瑠衣/東堂尽八役:秋葉友佑
<パズルライダー>
監督:一瀬悠/河野智平/伊藤玄紀/長瀬真夏

【公演概要】
タイトル:舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇~制・限・解・除(リミットブレイカー)~
原作:渡辺航「弱虫ペダル」(秋田書店『週刊少年チャンピオン』連載)
演出・脚本:西田シャトナー
音楽:manzo
公演日程・劇場:
・東京公演(シアター1010):2019年5月10日(金)~5月19日(日)
・大阪公演(浪切ホール):2019年5月25日(土)~5月26日(日)
主催:マーベラス、東宝、アルテメイト
公式HP:http://www.marv.jp/special/pedal/
公式ツイッター:https://twitter.com/y_pedalstage
(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダル04製作委員会
(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/マーベラス、東宝、アルテメイト

文:Hiromi Koh