「蜜蜂と遠雷」 リーディング・オーケストラコンサート ~ひかりを聴け~ 唯一無二のハーモニー,そして音楽は生きる力を与えてくれる。

今年の秋に映画公開も決まっている「蜜蜂と遠雷」、リーディング・オーケストラコンサートが開催された。始まりは遠雷、チューニング、これがなんとも言えないくらいに調和。雷の音とチューニング、一見無関係な音に感じるが、意外なくらいにあっている。そして始まる。このリーディング・オーケストラコンサートのテーマ曲というべき楽曲「ひかりを聴け〜OVERTURE」、これがえもいえぬぐらいに心に染み入る。そしてメロディがすんなり入ってくる。作詞は原作者恩田陸、作曲は千住明。曲の感触は心地よい、の一言に尽きる。冒頭、舞台後方にタイトルが映し出され、舞台全体の照明は若草色、優しい雰囲気だ。そして千住明のMCで三浦大知、松下優也が登場。この公演はこれで3回目となるが「発展形」と千住明。三浦大知は昨年も出演したとのこと。小説の世界を歌と音楽で表現する、実に創造的な企画、そして集まったアーティストたちは多士済済。普段は異なるフィールドで活躍しているのだが、こうして一つの作品に一堂に会することはそうあることではない。フルオーケストラ、東京フィルハーモニー交響楽団。日本最古のオーケストラ、ピアノは川田健太郎、西本夏生、重実徹。

 

次々と披露される曲、歌う、語る、アーティストは三浦大知、家入レオ、松下優也、中村 中、木村優一、そしてストーリーテラーとして湖月わたる、黒田こらん。物語は進行する、基本的にはコンサート形式なのだが、『軸』は小説である「蜜蜂と遠雷」、ストーリーテラーが物語を語り、それ以外のアーティストは役を演じたり、歌を歌ったりする。トータルでそのキャラクターを表現、かなりハードルは高い。そして歌われる楽曲一つ一つ、吟味されており、順番や歌詞、きめ細やかな構成だ。それをビジュアル的に表現する映像、照明、曲名が写し出されるのだが、これも曲の雰囲気に合わせたデザイン、そして演奏中の映像も美しく、また曲の雰囲気を盛り上げる。特に「アヴェ・マリア」では聖母の絵が映し出され、木村優一のハイトーンな澄んだ歌声で、心が洗われるような気分に。クラシックの名曲、ショパンの「エチュード op. 10-5 黒鍵」、リストの「ピアノソナタ ロ短調」、ラヴェルの「ソナチネより第一楽章」、メンデルスゾーン「無言歌集より 春の歌 イ長調op62-6」などが演奏される。後半ではプロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番第1楽章」、バルトーク「ピアノ協奏曲第3番第1楽章+第3楽章抜粋」が演奏され、その後に『結果発表』。ここは虚と実が渾然とした場面で客席は物語のオーディエンスになる瞬間だ。そして「anchorage〜琥珀〜」(ベートーヴェン「悲愴」より)、そして最後に「ひかりを聴け」、これを全員で歌唱するのだが、皆、ジャンルが異なるにもかかわらず、ハーモニーが調和が取れており、劇場いっぱいに響き渡る。歌詞も気持ちが暖かくなる内容、あとちょっとのところで踏み出せない気持ちを後押しするかのような感じ。

コンクールに出場する若者たちの群像劇であるが、コンクールは賞を取る者がいれば、取れない者もいる。結果はシビアだが、それを通じて音楽の力を知ることができる。音楽は人に生きる希望や光を与えてくれる。時には安らぎも、そして時にはエネルギーも与えてくれる。リーディングとコンサート、演劇的なところもあり、そして音楽を全面に出して作品世界を表現する。新しい作品、また再び、観てみたい、聴いていたい、と思わせる内容であった。

公演に先駆けて囲み会見が執り行われた。
千住明は「3回目になります。去年は1月と5月に行いましたが、この凝縮した形が・・・・まさか、こんなにバラエティ豊かな、いろんなジャンルの音楽、それがみなさん、本当にすごいと思います。僕もいっぱいいっぱいです。本当に他流試合、コンクールのようですね。真剣勝負の2時間半!」とコメント。さらに「簡単そうに見えて、かなり複雑なパズルを作った。オケを複雑にしたので、皆に一つずつやってもらった。出来は素晴らしいです、見事!」と手応えを語っていたが、単純に歌ってナレーションをつけて、という形ではなく、一つ一つがまとまっており、それが連なっている、という印象。また三浦大知は「僕自身、オーケストラの演奏で歌わせていただくのはなかなかない」と語る。そして「このめったにない機会を大事に皆さんと頑張っていけたら」と意気込みを語った。また千住明は「様々な歌い方があって、オーダーメイドで作った感じ。こういう仲間たちと音楽ができて非常に嬉しい」と語ったが、皆、バラバラなジャンルから集まっているので歌唱も異なるのだが、それが調和し、融合して新しいハーモニーを創造、オーディエンスにとっても発見が多い。
またオーケストラをバックに歌うということはそうそうあることではない。「背中で音の波を感じて心強く感じる一方、自分の頼りなさも感じて頑張っていかないといけないなと思います」と三浦大知。
また、家入レオは「朗読劇に挑戦することもなかなか無いので、新しい環境の中で楽しくやっています」とコメント。オーケストラがバックについているので、それだけでもプレッシャーであろう。さらに「素晴らしいアレンジで歌わせて頂きますし、三浦さんや松下さんのような男性アーティストの方と歌うのはあまりないです。新しい解釈で曲の世界観が広がったのでそこを感じてもらえたら嬉しい」と語った。松下優也は「コラボで歌わせていただきます。役は風間塵です」とコメント、自宅に楽器を持たない少年・風間塵16歳、作品の中では重要なキャラクターだ。
また、過去にコンテストに出場したことのある中村中は「歌の大会にはでたことがあるのですが、『みんな敵だ』って思ってたので(笑)」と笑わせた。湖月わたるは「昨日、見せていただきました。心を込めて語らせていただきます」とコメント、ストーリーテラーという役どころ、物語を進めていく重要な役。木村優一は「いろんなジャンルの方々が集まってみんなで仲良くやっています」と語ったが、チームワークもよく、作品世界を紡いでいた。そして黒田こらんもストーリーテラーだが、湖月わたるとは違ったテイストで絶妙なバランス、「ストレートプレイばかりやってきました。最後にちょっとだけ歌います」と笑顔。
三浦大知は「みんなで歌わせていただくところはたくさんのハーモニーが・・・・・綺麗で複雑、みんなで作り上げるのが本当に楽しかった」と笑顔で語る。最後に千住明が「ハーモニーの違いが一つになれた。新たなジャンルを観ていただきたい」とコメント。
唯一無二のハーモニーと演奏とそして語り。異ジャンルのキャストが集結し、新たなものを創造する、音楽はどこまでも深淵、そしてシンプル、人の心を動かす、揺さぶる、そして生きる力を希望を見せてくれる。

<「蜜蜂と遠雷」とは>
第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞を受賞した恩田陸による名作。舞台は3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。そこには数多くの天才たちによって繰り広げられる競争、そして自らとの闘いがあった。人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。2019年10月には映画の公開が決定している(HP:https://mitsubachi-enrai-movie.jp/)。

【「蜜蜂と遠雷」リーディング・オーケストラコンサート ~ひかりを聴け~ 概要】

タイトル:直木賞・本屋大賞受賞 恩田陸「蜜蜂と遠雷」リーディング・オーケストラコンサート ~ひかりを聴け~

出演:
三浦大知、家入レオ、松下優也、中村 中、木村優一、湖月わたる、黒田こらん
指揮・音楽監督:千住 明
ピアノ:川田健太郎、西本夏生
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
日程・場所:2019年8月16日(金)~18日(日) Bunkamuraオーチャードホール
原作:恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎文庫)
演出:藤澤浩一
構成台本:モトイキ シゲキ
主催・企画・製作:「蜜蜂と遠雷」リーディング・オーケストラコンサート製作実行委員会、公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
企画協力:幻冬舎
お問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00~18:00)
公式HP:http://www.reading-mitsubachitoenrai.com/
Twitter:@MitsubachiEnrai
(c)「蜜蜂と遠雷」リーディング・オーケストラコンサート製作実行委員会/田中亜紀
取材・文:Hiromi Koh