小松政夫 芸能人生の集大成!舞台 「うつつ」小松政夫の大生前葬 往年のギャグ連発!笑いと笑いと笑いと、そしてちょっと涙、また観たくなる、「さいなら」するにはちと早い。

小松政夫が自分自身を演じる舞台、”舞台 「うつつ」小松政夫の大生前葬”が開幕した。小松自身、と言っても”虚”と”実”の間のようなストーリーであるので実際の小松政夫とはちょっと異なる。
小松政夫(小松政夫)の家族は彼を心配している。年齢的にいわゆる”認知症”のお年頃。過去の記憶を失った、という設定だ。どうにかして過去の記憶を蘇らせたい、と願う家族、そしてマネージャー(豊永伸一郎)。どうも前妻との間にもうけた娘(棚橋幸代)が鍵を握っているとわかり、訪ねにいくも拒否され、そこで思いついたのが『なりすまし』、別人を娘に仕立て上げるも・・・・・・うまくいったかに見えて・・・・・・見破られる!そんな折に、本当の娘がやってきて・・・・・というのがだいたいの流れだ。

ストーリーを進行させながら、往年のテレビの名場面が舞台上に映し出されたり、あるいは小松政夫自身が!有名な!シニア世代なら思わず手を叩いてしまいそうな!あのギャグが!ゲネプロにもかかわらず、手拍子も!「電線に♪」とくれば一緒に歌いたくなる!ストーリーは完全なるフィクションであるにもかかわらず、リアルと虚構がない交ぜになり、当たり前ではあるかもしれないが小松政夫自身が、まさにそこにいる。演じているのか、そのままなのか、観ているとどっちでもよくなる。ベッドで横たわる小松政夫、顔に白い布、思わず・・・登場人物たちとともに『え?そういう展開?』と思いきや、布をとったら・・・・あの黒縁メガネで眉毛が動いて!”もう、心配させちゃって!”とつぶやきたくなる。

そして物語の真ん中よりやや後半、小松政夫が隠した”お宝”、これが!確かに他人から見ると”お宝”とは言い難いものがたくさん出てくるが、当事者にとっては大切な大切な思い出と過去の愛おしい時間。ラストは・・・・・・”ほろり”とくる。この”ほろり”の瞬間のためにたくさんのギャグ、笑い、笑い、笑い。ハートフルな物語で中目黒のキンケロシアター、という場所もぴったり。共演陣は制作発表会の会見時にも語っていたが、テレビの前で小松政夫のギャグに大笑い、適材適所で小松政夫の物語を支えている。しかも、冒頭部分では「記憶回復センター」の職員のセリフで「え?あの小松政夫!?」と驚き、大ウケする場面があるが、これには思わず「わかる。わかる」と思ってしまう。また、時折映し出される映像が、小松政夫だけでなく、往年の!植木等、伊東四朗、ノスタルジックな気分にもなれるし、時々流れる昭和の歌謡曲が、その気分にさらに拍車をかける。そして小松自身も「はい、それまでよ」といったりするので!正直、これが『生』で『ライブ』で拝見できる嬉しさもある。共演者もかなり楽しんでいる様子で、舞台上の小松政夫以外の出演者と観客は同じ喜びに浸り、笑う。ロビーには小松政夫の撮り下ろしの写真がモノクロで飾ってあり、お祝いの花も普通なお祝いの花に混じって、白い花のスタンドも(笑)。洒落が効いていて、しかも心温まる作品、小松政夫の年齢を考えると、公演期間はこのくらいがちょうど良い感じであるが、できれば、また観たいと思わせてくれる。「さいなら、さいなら。さいなら」というが、まだ「さいなら」したくない。

ゲネプロ終了後に会見があった。登壇したのは出演者全員、小松以外は喪服!まずは小松政夫「すごい力を持った女優さんたちに、こんなに一生懸命裏のこともやりながら、芝居を作っていくのを目の当たりにしまして、感動しています。みんなの力でこしらえた感じがありありとしてて・・・・・・今日から始まります!みんな心がぴったりとあって、いい仕事ができたと思います。ぜひ、観ていただきたい」と力強くコメント、奈良富士子は「もう小松政夫さんをリアルにテレビで観ていたので初めてご一緒して・・・・」といい「お稽古の時から芸やいろんなお話を私たちに披露してくださってみんな感動しました。小松さんの温かい人柄でチームワークもバッチリ!」と語るが、それは共演者共通のことの様子。岡元あつこは「小松さん中心で笑顔の絶えない稽古場でした!女優陣は小松さん、ますます好きになりました!若い頃からオモテになってたんだろうなって(笑)、この間、ご馳走になったからいうわけじゃないけど(笑)本当に私たち自身が『小松さん、大好き!』って言うのが伝わる舞台になっていると思います!」と笑顔。しゅはまはるみも「私たち、小劇場俳優って俳優もスタッフも境目なく舞台裏もやってきたので・・・・・大スタアって違うんだなと(笑)・・・・・・・小松さんから『そんなこともするの?』と・・・・・小松さんと素敵な舞台、愛川欽也さんがお作りになった素敵な劇場で!」とこちらも笑顔満面。棚橋幸代は「温かい小松さんに引っ張っていただき、私たちを楽しませてくださって・・・・小松さんが『すごいね!』ってみんなのことを褒めてくださる、そういうものが舞台に出ていると思いますので、みなさま、楽しんでください」とコメント。豊永伸一郎は「女優陣のパワーが(笑)、日々・・・・肩身の狭い思いを(笑)楽しくって・・・・ついていくのに精一杯、これから楽しい本番です(ここで豊永に小松政夫が『よくしゃべるようになったね』とツッコミ)」、帯金ゆかりは「本当にいいチームワークで、みんなで作り上げてきました、みなさん対等に話を聞いてくださって・・・・・・幸せなことです。おやつをもらったり!みなさんに育てられました!」と笑顔で。倉石ようこは「とても贅沢な時間でした。テレビで拝見してたので・・・・・こんな!生で!贅沢です!生の小松政夫さんの素晴らしさを一人でも多くの人に!」とリアル小松政夫に会えた喜びを噛み締めた。小松政夫は「いい年になってきたので仲間がバタバタと・・・・・テレビで生前葬を観て『楽しそうだな』と・・・・『あいつ、来ねー』なんて・・・・・死んじゃったらわかりませんから(笑)、そんなことを・・・・」と語る。映像が映し出されるのだが、小松政夫の他に往年の”スタア”も一緒に写っているのを見ると楽しくもしんみりする。女優陣が多い舞台であることに関しては「囲まれてみたかった(笑)、男は要らない(笑)」と小松政夫らしい回答。今年の1月に喜寿を迎えたという小松政夫。「私の考える芝居は笑って、そのうちにやがて悲しくなる。すんなりと笑いが涙の方にいく・・・・・・”面白うてやがて悲しき”っていう感じです、そんな芝居がしたいと思っていました。無理して泣かせるつもりはないです。そういう状況になったら・・・・今年は芝居が6本!、これが最後にしたい・・・・贅沢三昧ですね、美味しいもの食べて(共演者より『忘年会しましょう』の声が・・・・・)。まだ力はあるけどって思いますが、体が思ったように動かないのが悔しい、難なくやれたものが・・・・・声を出すのは疲れるけど・・・・・声をしっかり出すトレーニングをさせてもらっています」と語るが、舞台で往年のギャグを多数披露(『電線音頭』は45年前!)、まだまだ現役だ。友達が亡くなった時にネタ帳をもらい、それがネタになっているそう。最後に「本当に私が一番、怠け者で・・・・・ほっとしています。本番になりますと『バシーーーーーン!』と!セリフが!よろしくお願いいたします!」と締めて会見は終了した。

<あらすじ>
三年前のある出来事をきっかけに、過去の記憶を失った往年の名コメディアン――。その再起を図って妻は夫を「記憶回復センター」に入所させる。
やがて夫の記憶の鍵を握るのが、彼が前妻との間にもうけたひとり娘であることが判明するが、娘は母と幼い自分を捨てた父と会うことを拒否する。そこで妻は夫のマネージャーと画策して別人を娘に仕立て上げ、父娘涙の「再会」を果たさせるが、事態は思わぬ方向へ展開していく・・・・。

【「うつつ」 小松政夫の大生前葬 概要】
タイトル:「うつつ」 小松政夫の大生前葬
出演:小松政夫/奈良富士子 しゅはまはるみ 岡元あつこ 棚橋幸代 帯金ゆかり/豊永伸一郎 倉石ようこ
作:白崎博史
演出:遲塚勝一
日程:2019年10月31日(木)~11月4日(月祝)
斎場:<東京>中目黒キンケロ・シアター
香典(チケット料金):全席指定 7,800円(税込)
喪主:エイベックス・エンタテインメント
公式HP:https://www.utsutsu.info/