inseparableは、村田と松井が共同原案をもとに、演劇と小説をそれぞれに発表するプロジェクト。2017年に取材を開始し、合宿や試演会などを経て「変半身(かわりみ)」の原案を作成。それをもとに、11月下旬には村田の小説版「変半身(かわりみ)」が刊行、11月29日から12月に松井作・演出の舞台版「変半身(かわりみ)」が上演。
<切っても切れない=inseparable>
松井 周と村田沙耶香が共同原案を元に、演劇と小説をそれぞれ発表するプロジェクト=いんせぱらぶる inseparableを始動。演劇(作・演出:松井 周)は 2019年11月から東京・三重・京都・神戸の4都市で上演、小説(村田沙耶香) は11月下旬筑摩書房から刊行予定。
松井 周は「自慢の息子」で 2011年に岸田國 士戯曲賞を受賞した劇作家・演出家・小説家 で、<サンプル>を主宰。村田沙耶 香は 2016 年に『コンビニ人間』で第 155 回芥川龍之介賞を受賞、『コンビニ人間』は累計 100 万部を突破。今回は村田作品、初の舞台化となる。
本プロジェクトは 2017年の神津島(東京都)への取材から始まり、2018年1月城崎国 際アートセンター(兵庫県)での合宿&試演 会、2018 年 5 月の緑島(台湾)・2019 年神島 (三重県)への取材を経ており、共同でコア原案)を作って、演劇・小説・映像・ア ニメなど、二次創作的に発展させることが目的。ドッペルゲンガーなの ではないか?というくらい強い、松井と村田の共感性を武器に、共同で原案を作り、 同じ設定を基に、同じ編集者で2人が別々の作品を生み出す。取材と対話と時間に投資した、クリエイションにおける豊かさを提示。
出演者に台湾人実力派王宏元や大鶴美 仁音を迎え、安蘭けいはホリプロ「レインマン」より2度目の松井作品出演です。
宣伝イラストは『サターンリターン』を週刊スピリッツで連載中の鳥飼 茜の描き下ろしで、絶望的な眼差しの少年は鼻血を垂らしていて事件性を感じさせます。
<松井 周コメント>
村田沙耶香さんと話していると時間を忘れま す。安楽死ブームが起きたら?とか、ニセの儀式とか「もしもの世界」に足を踏み入れて夢中になっている感じです。
取材した島や合宿先でも二人のおしゃべりは 続きました。「もしかしたら人間は実はこんな ふうにやってきて、こんなふうに生きて行くの かもしれない」という過去のひっくり返しや未 来の予感をどんどん煮詰めていったのです。そ して、共通の設定を考え、小説や戯曲のプロト タイプをつくりました。「あるある」を通り越 して「ないない」の域に達した設定でも、村田 さんの文章で語られると人や島の実在感が増す なあと思いました。
個人個人で異なる現実、オルタナティブ・フ ァクトがあり、誰もそこに踏み入ることはでき ないとする風潮があります。自分にとって白か 黒かで事実を判断するのみで話し合いを拒絶す る態度です。これは、もともと人間はウソとホ ントの間に生きていて、信用ならないものとい う認識が欠けているように思えます。ウソとホ ントの間に生きているから、自分勝手だった り、流されたり、錯覚したり、下心があったり と、「すきま」の部分があるのではないでしょ うか。人間っていうものは、デタラメでエロく て愛すべき知的生命体だよなあ!と思えるよう なフィクションまみれの人間像を魅力的に描き たいです。
inseparable=切っても切れないとは、やっ ぱり僕が村田さんと最初に会ったときに感じた 「村田・松井ドッペルゲンガー説」に基づいて いると改めて思っている次第です。小説も舞台もどうぞご期待下さい!
<村田沙耶香コメント>
小説を書くとき、誰かの作った設定を使う ということは、私の一番苦手なことでした。
子供の頃、読んでいた少女小説の男の子が 主人公にあまりに冷たいので、二人が仲良く デートしているところを書いてみようとした ことがあります。でも、一行も書けませんで した。主人公がどんな靴を履いていて、どんな部屋に暮らしているのか、全部自分で決め ないと、私にはどうしても書くことができな いのでした。
そんな私が、なんで、「松井周さんと設定を 共有する」という不思議なプロジェクトに挑 戦することになったのか、自分でも奇妙で す。でも、松井さんの話しているといつも、 無意識で理解できるような感覚があり、二人 で作品世界をつくったらどうなるだろう? と思ったのでした。
まるで子供のころみたいに、絵や地図や年 表を見せ合い、合宿して話し合いました。当 たり前だけれど松井さんの脳は私の脳とは違 うので、自分では思いつかないようなことも たくさんもらいました。私は、創作ノートや途中稿を絶対に人に見せたくないのですが、 inseparable ではそれをしました。
そして今、小説を書いています。ドトールで、合宿で広げたノートをこっそりのぞきながら、文字を紡いでいます。舞台と小説がど んなふうに完成するのか、楽しみにしています。
<山本 充(企画・編集)コメント>
「inseparable(インセパラブル)」、切り離せない、分けられないのにそれがあえて言われることは、いま現在切り離されていること、分かれてしまっていることを暗示する不穏さがある。ひとりの人間が分かれたようにあまりにも似ている小説家と劇作家、ふたりが(再び?)ひとつになるとき、そこにどんな極彩色の漆黒が広がるのか。そんな夢を紙の上と舞台の上でともに見届けてほしいと願っています。
村田沙耶香『変半身(かわりみ)』は11月下旬、筑摩書房より刊行予定。乞ご期待!
[あらすじ]
近未来。東洋のガラパゴスと呼ばれている千久世島という離島 は、かつてない賑わいを見せていた。国産みの神話に登場する島 であると同時に、その島で発掘される「レアゲノム」という化石 由来の DNA がヒトや動物の遺伝子組換えに必要なものとして注目 を集めているからだ。その島に住む男は、奇祭で弟を失う。とこ ろがある日、弟は蘇り、まるで別人のように男の前に現れる。弟 の存在は島の住民を狂わせていく。そしてそれは、島の存亡を揺るがす事態に発展していく。
【公演概要】
inseparable「変半身( かわりみ)」
日程・場所:
<東京>
2019年11月29日〜12月11日 東京芸術劇場シアターイースト
<三重公演>
2019年12月14日〜15日 三重県文化会館 小ホール
<京都公演>
2019年12月18日〜19日 ロームシアター京都 ノースホール
<神戸公演>
2019年12月21日〜22日 神戸文化ホール 中ホール舞台上
原案:村田沙耶香 松井周
脚本・演出:松井周
出演:金子岳憲 三村和敬 大鶴美仁音 日髙啓介 能島瑞穂
王宏元 / 安蘭けい
企画・編集:山本 充
プロデューサー:三好佐智子
企画•製作:有限会社 quinada
共同製作::三重県文化会館(公益財団法人三重県文化振興事業団) ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団) 神戸文化ホール(公益財団法人神戸市民文化振興財団)
莎士比亞的妹妹們的劇團
助成:一般財団法人地域創造 文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会 東京芸術劇場ボックスオフィス:0570-010-296( 休館日を除く10:00 -19:00)
イラストクレジット:(C)鳥飼茜
公式HP:http://samplenet.info/inseparable/