檀れい主演『恋、燃ゆる。~秋元松代作『おさんの恋』より~』が無事に幕を開けた。
この作品は、1715年の初演から繰り返し上演されてきた近松門左衛門作の浄瑠璃『大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)』をもとに、劇作家として数々の賞に輝いた秋元松代による1985年のテレビドラマシナリオ、主演は太地喜和子。共演は滝田栄、山田吾一、千秋実、佐藤慶、金田龍之介他、第23回ギャラクシー賞選奨受賞に輝いた。
原作の『大経師昔暦』は1715年(正徳5)春ごろ大坂竹本座にて初演。1683年(天和3)に処刑された大経師家の女房おさんと手代茂兵衛との密通事件を題材にした作品で,その三十三回忌を当て込んで上演されたもの。この話はすでに西鶴の『好色五人女』や歌祭文などに取り上げられ、すでに人々の間では人気となっていたが、この作品では、それが,闇紛れの人違いのために止むなく起こってしまった”意志なき姦通”として構想されているという点が最大の特色。貞淑な「ご寮さま」とまじめな若者、運命のいたずらで不倫関係を疑われ、二人の死によって永遠の愛に昇華する、というもの。弱く受け身の存在として見られることの多かったヒロイン「おさん」を自分の意志を持った人間として描き出した『おさんの恋』、これを石丸さち子が上演台本・演出を手がける。
主演は檀れい、そして中村橋之助、 東啓介、 石倉三郎、 西村まさ彦、 高畑淳子に加え、 多田愛佳、 大石継太、 妹尾正文、 武岡淳一、 篠塚勝、 みやなおこ、 及川いぞう、 塚本幸男、 中村橋吾、 上野哲也、 山沖勇輝、 百名ヒロキらがキャスティングされた。
初日終了後、会見が行われた。登壇したのは檀れい、中村橋之助。
まず、檀れいが挨拶、「ホッとしています。キャスト、スタッフ一丸となって高い集中力を持っています。」氷川きよしさんの歌の歌詞、茂兵衛やおさんの思い、石丸さんが書いてくださったのですが、曲を聴くとぐっと気持ちが盛り上がります。私たちが作りたい世界が表現されていて、曲を聴くだけでより深く役に入ることができます」と語った。中村橋之助も「まず、ホッとしています」と言い、「1ヶ月、稽古を続けてきました。この作品のドラマ性、演出・・・・石丸さんと檀さんのリーダーシップの元、スタッフ、演者、一丸となって・・・このチームワークが素晴らしいなと。全員が100%の集中力で挑んでいて、その中にいて幸せです氷川さんの歌は石丸さんが詞を森さんが曲をつけられて、本当に茂兵衛になるためのスタートライン、曲も好きですし、舞台作品にすごく合って、素敵だなと思います」と語る。
また演じる役への共感、檀れいは「強い女性だなと。意志を持って自分の道を選び取っていく強さは人間として女性として素敵だなと強く思います」とヒロイン・おさんの魅力を語る。中村橋之助は「僕も物事がすごく好きになったら、スポーツとか、それしか見えなくなるくらいに大好きになります。茂兵衛はおさんに対してまっすぐで共感できる部分もあります。でも全てを捨てていけるほど、僕は…(笑)」と茂兵衛の一途さを語る。
互いの印象については檀れいは「歌舞伎の舞台を拝見いたしましたが、まっすぐに演じられる方だなとひしひしと伝わってきました。1ヶ月稽古をして、どんなことがあっても立ち上がって前に進む、何かを掴み取ろうというのがすごくて、一緒にお芝居をしていても、魅力的でたくさんの可能性の扉を持っている方。とても楽しみにしています」と大絶賛。中村橋之助はそれに対して「歌舞伎を見に来てくださって、お話しする機会がありまして、優しくしていただきました。稽古場では悩みっていうんでしょうか、どうしたらいいかわからないことがあっても檀さんが『頑張ろうね』って言ってくださって…言って下さらなかったら心が折れていました。助けていただき、お芝居のことも教えてくださり、勉強になりました、大好きです!(檀れい、照れ笑い)」と手放しで。
また、舞台機構についての質問が出た。今回の舞台は舞台上の盆を回して場面転換、しかもかなり早く、回数も多い。檀れいは「宝塚もくるくると回るので(笑)、盆の上で踊ったこともありました」と笑いつつも「今回はずっと回っているので、自分が客席を向いているのか、裏を向いているのか時々、わからなくなる(笑)、間違えないようにしないと、とおもいました」と笑顔。中村橋之助は「今、自分は上手なのか下手なのか把握するのに苦労しました。でも、僕たちが無理しないように考えてくださっています」とコメント。
そして多くの公演が中止や延期になる中、明治座も、もちろん例外ではない。檀れいは「今年の2月ぐらいからコロナで世界中が不安になっています。この公演も『できるのだろうか』と…『どうなるんだろう』と。でも、こうしてみんなが稽古場に集まって稽古しているのが楽しくって幸せで、結構毎日、遅くまでやってました。誰一人体調を崩すことなく元気で毎日笑顔で。役者は演じることが大好きで、演じていなければ、自分が生きている実感を感じない、お稽古中はマスクをしていて、おとといの稽古で久しぶりに外して橋之助さんの顔を見て『こういう顔をして演じてるんだ』って。初日が開いたことに幸せを感じています」と笑顔で語る。中村橋之助も「3月から中止や延期になってしまって、その時は、まさか世界でここまで広まるとは思ってもみませんでした。今回、こうしてできたこと、役者として生きることをさせていただける、ありがたいことです」としみじみ。さらに(檀れいに向かって)「マスクしててもお美しいです」とコメント。また、茂兵衛のシーンでは、”走る”場面が印象的で、回り舞台の上で”全力疾走”する。中村橋之助は「ここは”橋之助ダッシュ”と言われています(笑)、息を弾ませる、茂兵衛の心の動き、思い、ここで恋の炎が燃え上がります」と説明。
また父の中村芝翫に似ているかどうかという問いに対して檀れいは「意識はしてないですが、どーんと構えていて大きさを感じます、懐が大きいんですね。私が頼っている部分も多々ありますのでついていってます」といい、中村橋之助は「(檀れいと共演するに当たって)特別に意識はしてないです。ただ父が心配性なのでギリギリに電話がかかってきて(電話に)出たくなかったけど出まして『一生懸命やりなさい』と今朝、いってくれました」と語る。
最後にPR。
「コロナ禍の中、初日に大勢の方が足を運んでくださってありがとうございます、幸せを感じています。(これから)作品の深みが増していくので、二度、三度、足を運んでいただければ幸いです」(檀れい)
「コロナ禍で、明治座さんの感染症対策はできる範囲内でバッチリされています。その中でスタッフ・キャスト一丸となって本当に一人でも多くのお客様に見ていただきたいです。千秋楽まで駈け抜けたい」(中村橋之助)
【あらすじ】
大経師彩玉堂のおさん(檀れい)は「美人で気立てのよいお内儀」と噂に高い。 だが主人の永心(西村まさ彦)は遊びがやまず、 義母の刀根(高畑淳子)はおさんを気遣っていた。 ある日、手代の茂兵衛(中村橋之助)は店の金をすられるが、 永心からは横領を疑われる。 さらに、 部屋からおさんの櫛が見つかった。 茂兵衛はおさんに秘かな恋心を抱き、 拾った櫛を大切にしていたのだ。 問い詰められた茂兵衛を救おうと、 彼に思いを寄せる女中のおたま(多田愛佳)は「自分が拾い、 茂兵衛に与えた」と嘘をつく。 それを聞いた永心は茂兵衛とおたまに処罰を与える。 そんな店の騒動を永心の異母弟、 政之助(東啓介)は冷ややかに見つめていた。 永心に命じられ納屋に入れられた茂兵衛だが、 父が病との報を受け、 居ても立ってもいられず彩玉堂を抜け出す。 茂兵衛は誓岸寺の住職・宗林(石倉三郎)に相談し、 国許に向かうことにするが、 おさんがまもなく誓岸寺に墓参りに来ることを知ると――。
実際に起きた事件を基にした近松門左衛門作の浄瑠璃『大経師昔暦』を原作とし、 秋元松代が書いたテレビドラマシナリオ 『おさんの恋』を石丸さち子が上演台本・演出を手がけ舞台化。 今の世に改めて問う禁断の恋と真実の愛。 おさんと茂兵衛、 許されない二人の物語。
<概要>
公演期間:2020年10月19日(月)~11月15日(日)
会場:明治座(東京都中央区日本橋浜町2-31-1)
開演時間:12:00/17:30
料金(税込):S席(1・2階席)12,000円 A席(3階席) 6,000円
【チケットのお問い合わせ】
明治座チケットセンター:03-3666-6666(10:00~17:00)
グループ観劇(10名以上)のお問い合わせ:03-3660-3941(営業部団体課)
(明治座HP)
https://www.meijiza.co.jp/
文:高 浩美
写真提供:明治座