オリジナルミュージカル「DAY ZERO」三週間で知る、人生と愛と志と生き方と。

原作は2007年に製作されたアメリカ映画「DAY ZERO」(日本未公開)、物語の舞台は徴兵制が敷かれた9・11後のニューヨーク。これをベースにオリジナルミュージカルに構築、原作は堅い友情で結ばれた三人の男、仕事絶好調の弁護士、正義感の強いタクシードライバー、スランプ気味の小説家、この三人にまさかの召集令状が届く、出頭は30日後であるが、これを3週間に変えている。

開演前のアナウンスもどこか機械的で、時折ノイズ音。ここからすでに物語は始まっているのかもしれない。舞台セットはシンプルでシック、どちらかというと無機質、都会的なイメージ、物語の場所はニューヨーク、近未来。舞台上にキャスト、客席通路からもキャスト登場、「そいつは突然、やってくる」と歌いながら。手には赤い封筒、「こんなはずじゃなかった」と。

スポットライトに照らされた眼鏡をかけた男、彼は小説家、「DAY21から始まる」と言う。淡々と流れるニュース、どこかで誰かが戦争やテロに巻き込まれて死んでいる。徴兵制のニュース、その口調はどこか他人事だ。そしてこのストーリーのメイン人物である3人にとってもそれは他人事だった、赤い封筒が届くまでは。3人は同級生で34歳、決して若くはないが、歳を取りすぎているわけでもない。この年頃なら、会社ならそろそろ重要なポストにつき始める時期、家庭を持っていれば子供の一人や二人はいてもおかしくない。事実、弁護士は昇進も決まり、妻もいる。世間的に見れば順風満帆。タクシードライバーは正義感は強い、いわゆる“漢”な性格、独り身だが、そんな折に一人の女性と出会う。小説家は若くしてベストセラー作家として成功、ただ少々スランプ気味ではあるが。

音楽と歌と芝居で、ストーリーは進んでいく。心情や状況を歌にして、場面を凝縮してみせる。その分、彼らの三週間が濃密に。赤い封筒を受けとってからの3人は揺れ動く。もちろん、徴兵されて必ず死ぬと決まったわけではないが、生きて帰還できる保証もない。弁護士は徴兵を免れようと画策する。小説家はカウンセラーのところに行き、助言をもらう。「やりたいことを書き出す」、とりあえず一つずつやってみる。ポン引きに騙されたりもする。ドライバーの方は気になる女性といい関係になる。だからこそ召集令状が来たことは言えずじまい。

しかし、だ、もしも召集令状など来なかったら?きっと彼らは、人生や自分の人間関係に対して、多分、「ぼんやり」と「日常に埋没」してしまうことだろう。人生や周囲のことに気がつき、しかし、出征する日、「DAY ZERO」は容赦なく近づいてくる、時計の針は止まらない。そして「DAY ONE」になり、「DAY 0.5」になり、限りなく「ZERO」に近づいていく。

アコースティックギター、3本を状況に合わせて使い分け、演奏者は演者の様子を見ながら演奏するが、ここの呼吸は稽古の賜物であろう。時には寄り添うように、時には激しく、ギターだけっていうのも「あり」、と。これは新たな発見。

主要人物を演じる3人、キャラクターに合ったキャスティングで、揺れ動く心の機微を歌や芝居に上手く乗せて観客の心を揺さぶる。それ以外の俳優陣は複数役を演じる。これは実力がないとなかなか演じきれない。

ラスト近く、2組のカップルが歌う。ここは深く感動させられる。パートナーと向き合い、切なく、しかし、どうにもならない心情を歌い上げる。そしてその日が来た。3人はそれぞれの決意を持って「ZERO」の日を迎える。

決してハッピーエンドにはならないが、悲壮感はない。セット後方から青空が見える。この物語は反戦ではない。不穏な空気を孕む現代、決して絵空事ではないこと。物語から透けて見える人生、愛、生き方、志、人間なら誰しもが持っていることだが、日常に埋没してどこか気にしつつも忙しさにかまけてスルーしてしまいがちだ。また、「気恥ずかしい」と感じるかもしれない。こんなことでもない限り、人は気付かないのかもしれない。解釈や感じ方は観客一人一人に委ねられている。人の一生には必ずタイムリミットがある。そういえば、秋葉原殺傷事件から10年経過、東日本大震災は2011年の出来事であった。

《インタビュー》オリジナルミュージカル「DAY ZERO」上演台本 高橋知伽江

 

【概要】
オリジナルミュージカル「DAY ZERO」
Based on the screenplay DAY ZERO by Robert Malkani
上演台本:高橋知伽江
作曲・音楽監督:深沢桂子
演出:吉原光夫
出演: 弁護士 ジョージ・リフキン:福田悠太(ふぉ~ゆ~)  タクシー運転手 ジェームス・ディクソン:上口耕平 小説家 アーロン・フェラー:内藤大希 パトリシア他:梅田彩佳  モリー・リフキン他の妻:谷口あかり カウンセラー他:西川大貴
ギター:中村康彦

プレビュー公演:
日程:5 月 25 日(金) 18:30
5 月 26 日(土) 15:00
5 月 27 日(日) 13:00
劇場:水戸芸術館ACM劇場
主催:公益財団法人水戸市芸術振興財団
お問い合わせ:水戸芸術館チケット予約センター  029-225-3555

東京公演:
期間:2018 年 5 月 31 日(木)~6 月 24 日(日)
劇場:DDD 青山クロスシアター
主催:シーエイティプロデュース
お問い合わせ:チケットスペース  03-3234-9999

愛知公演:
日程:6 月 26 日(火) 18:30
劇場:刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
主催:キョードー東海
お問い合わせ:キョードー東海  052-972-7466

大阪公演:
日程:6 月 28 日(木) 19:00
29 日(金) 13:00
劇場:サンケイホールブリーゼ
主催:サンケイホールブリーゼ
お問い合わせ:ブリーゼチケットセンター 06-6341-8888(11:00~18:00)
オフィシャルサイト StageGate :https://www.stagegate.jp

文:Hiromi Koh

撮影:神ノ川智早