朗読で描くミステリー『シャーロック・ホームズ〜特別なあの人〜』名探偵ホームズと対決する”あの人”たちとワトソン、そしてホームズの推理と冒険。1月9日,1月11日の3公演ライブ配信!

朗読で描くミステリー『シャーロック・ホームズ〜特別なあの人〜』が11日まで紀伊國屋サザンシアターにて好評上演中だ。あにてれにて1月9日(土)、1月11日(日)の3公演をライブ配信!!詳細はHPを!!!

この作品は言わずと知れた推理小説『シャーロック・ホームズ』、アーサー・コナン・ドイルの大ヒット小説、その魅力は今なお衰えず、世界中で読み継がれており、「聖書に次ぐベストセラー」とまで言われている。映画、舞台、ドラマ、また、ここから派生した作品も多く、枚挙にいとまがないくらいである。そして今回の朗読劇、もちろん、全ての作品群を扱っているわけではなく、また勘の良いファンなら副題でおおよそ察しがつくかもしれない。1月7日、夜の回で観劇、ホームズは伊東健人、ワトソンは笠間淳、モリアーティなど複数役を演じる山中真尋そしてアイリーン・アドラー他女性役に阿澄佳奈、ちなみにアニメ『憂国のモリアーティ』にミス・ハドソン役で出演している。
開演前、スクリーンにモノトーンで描かれたロンドンの街が映し出されている。それが趣きがあり、また始まる前からホームズの時代、19世紀末のロンドン、アーサー・コナン・ドイルが「ストランド・マガジン」に連載していた「シャーロック・ホームズ」シリーズの挿絵に雰囲気を似せている。ちなみに当時挿絵を描いていたのは当時の人気イラストレーターであるシドニー・パジェットである。時間になり、スクリーンによく見る、おなじみのホームズのシルエット、そしてその前にスポットライトがあたり、そこにホームズ演じる伊東健人、同じポーズを取る。

ワトソン役の笠間淳が登場し、「シャーロック・ホームズが死んだ」という。
ワトソンの回想、という形。「聡明で偏屈で、冷静で横暴で天邪鬼、それでいて少年のような」と語る。世界的に有名な探偵、個性的なキャラクターだ。スクリーンに小説のページをめくるような映像、「シャーロック・ホームズという男」という文字が浮かび上がる。シャーロック・ホームズのあれこれが文字で、ワトソンのセリフもちょっと呆れ気味な口調、これが温かみがあり、ホームズとワトソンの関係性がわかる。そして2人の出会い。

ホームズは天才とも思える推理力でワトソンがアフガンにいたことや病気や怪我のことまで言い当てる、驚くワトソン。ここの下りは原作「緋色の研究」に描かれている。ホームズシリーズの第1作目。かの有名なベーカー街でともに暮らすことになる。ホームズが座る姿勢は足を組んでいるのだが、これもよく見るポーズ。また、いろんな依頼者が出てくる下りがあるが、ここは客席から笑いが起こる。恋人ができないぽっちゃり女性やトークがラップになる男性やらおかしな依頼人が!アドリブ部分もあるので、ここは肩の力を抜いて気軽に!ワトソンの語りで『6つのナポレオン事件』『まだらの紐』『踊る人形』『マスクレーブ家の儀式』、ホームズは「かつての事件から学ぶことも大切」という。

そして、「ボスニアの醜聞」(1891年)、こちらは短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に収められている。山中真尋扮するボヘミア王がホームズを訪問する。先ほどまではシンプルなシャツにサスペンダーだったが、ここではマントに手には仮面、ちょっと笑っちゃうような格好がお茶目。

5年前に知り合った女性とツーショットの写真まで撮ってしまったという。迂闊な行動、しかもその写真を奪えない。女性の名前はアイリーン・アドラー、美しい女性で国王が皇太子だった時分に知り合った。国王は近いうちに婚約するという。この写真が世に出れば大スキャンダル!写真を奪うのがホームズの仕事だ。読んだことのあるファンなら結末は先刻承知。この作品は必ず勝利を手中に収めるホームズにしては珍しく、相撲に例えると余裕で土俵際まで追い詰めておきながら、最後の最後にうっちゃりで勝利をつかめなかった、という内容。アイリーン・アドラー演じる阿澄佳奈、後半でアイリーンが男装してホームズに挨拶する下り、普通の芝居なら、男装は見た目にもわかりやすいが、朗読なので本当に声のみでわかるように演じる。ベテラン声優の阿澄佳奈、ここは安定した演技で!

それから人気の高い『最後の事件』(1893年)。短編集『シャーロック・ホームズの回想』に収められている。ちなみにコミック『憂国のモリアーティ』は、『シャーロック・ホームズ』シリーズを原案に、ホームズの宿敵であるモリアーティを主人公にしたもので原作に登場するキャラクターが出てくるが、あくまでも原作は原案なので、設定などは異なる。
この『最後の事件』ではホームズを亡き者にしようとするモリアーティの執拗さ、ついに追い詰められたホームズ、タイトルにもあるように”最後の”、この結末、ホームズの死が明らかになった時、20000人以上の読者が、『ストランド・マガジン』の予約購読を取り消したり、原作者への抗議の手紙、またホームズの死を悼んで外出の際に喪章を着けたファンがいたそう。しかし、この作品から実に9年10ヶ月後、1903年の短編『空き家の冒険』でホームズが完全復活する。

この朗読劇でも最後は、この『空き家の冒険』だ。ここで流れる楽曲が『スカボロ・フェア』、1966年に当時の人気デュオであるサイモンとガーファンクルがアルバム『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』に収録、またダスティン・ホフマン主演映画『卒業』の挿入歌にもなり、世界的に有名になった曲であるが、この曲はイギリスの伝統的なバラッド。元は1670年頃に遡るが、今のような歌詞になったのは18世紀末。以前の恋人への伝言を頼むという形式で、意味深。モリアーティにあわや、というところで、”大逆転”な展開、命からがら助かったホームズ、そこからあえて身を隠し、あちこちを転々とし、サプライズな方法でホームズの前に現れる。最後にホームズがワトソンに向かって「二人で素晴らしい冒険に出かけよう、ワトソン君」といい、それにワトソンは無言で満面の笑みで頷く。この無言の頷き、お互いに”特別なあのひと”。そして数々の事件の中で、ひときわ印象的な”相手”、最大のライバル、モリアーティと最後の最後でホームズを出し抜くアイリーン・アドラー。彼らもまた、ホームズにとって”特別”な存在。彼らはお互いに赤の他人だが、それ以上のものがある。声優4人で紡ぐ『シャーロック・ホームズ』、声だけで推理小説の醍醐味を伝える。そこに音楽と映像と照明で、観客の想像力を後押しする。時折、映像で事件のキーワードを英語でアトランダムに。ドキドキ感と描かれる人間模様。作品の面白さをシンプルに伝える朗読劇。コロナ禍で朗読劇は増加しているが、このシリーズはコロナ前から人気。多数の声優陣が登場、それぞれの競演も楽しみ。これを機会に改めて原作を読み返したい。

<公演概要>
日程・会場:2021年1月5日〜1月11日 紀伊國屋サザンシアター
スケジュール
1/5
19:00
シャーロック・ホームズ:中島ヨシキ
ジョン・H・ワトソン:中澤まさとも
モリアーティ教授 他:福島潤
アイリーン・アドラー:工藤晴香
1/6
19:00
シャーロック・ホームズ:阿部敦
ジョン・H・ワトソン:笠間淳
モリアーティ教授 他:川原慶久
アイリーン・アドラー:吉岡茉祐
1/7
19:00
シャーロック・ホームズ:伊東健人
ジョン・H・ワトソン:笠間淳
モリアーティ教授 他:山中真尋
アイリーン・アドラー:阿澄佳奈
1/8
19:00
シャーロック・ホームズ:中澤まさとも
ジョン・H・ワトソン:竹内栄治
モリアーティ教授 他:安田陸矢
アイリーン・アドラー:北原沙弥香
1/9
13:00
シャーロック・ホームズ:石谷春貴
ジョン・H・ワトソン:神尾晋一郎
モリアーティ教授 他:五十嵐雅
アイリーン・アドラー:青山吉能
19:00
シャーロック・ホームズ:神尾晋一郎
ジョン・H・ワトソン:石谷春貴
モリアーティ教授 他:狩野翔
アイリーン・アドラー:大原さやか
1/10
13:00
シャーロック・ホームズ:岡田浩暉
ジョン・H・ワトソン:藤本隆宏
モリアーティ教授 他:松田賢二
アイリーン・アドラー:貴城けい
20:00
シャーロック・ホームズ:岡田浩暉
ジョン・H・ワトソン:藤本隆宏
モリアーティ教授 他:松田賢二
アイリーン・アドラー:貴城けい
1/11
13:30
シャーロック・ホームズ:羽多野渉
ジョン・H・ワトソン:阿部敦
モリアーティ教授 他:山中真尋
アイリーン・アドラー:山崎はるか

作::アーサー・コナン・ドイル
上演台本・演出:土城温美
公式HP:https://holmes.rodokugeki.jp
公式ツイッター:https://twitter.com/koten_reading
舞台撮影:阿部章仁
文:高 浩美