《トーク》Another lenz 俳優役 太田将熙 監督役 碕理人、演出 磯貝龍乎

全く新しい演劇のあり方として【AD(Another Demotion=別次元)×STAGE】、同じ台本でありながら生観劇と生配信で全く異なる作品に見える新感覚舞台、その第一弾が「Another lenz」。物語は生ライブドラマを撮ろうとしているテレビクルー、一癖も二癖もあるキャラクターが登場する。この作品の演出に磯貝龍乎さん、俳優役に太田将熙さん、監督役に碕理人さん。この3人の鼎談が実現した。

――今回の企画を聞いた時の感想は?

磯貝:はじめはプロデューサーが何を言っているかわからなくて(笑)…いろいろ紐解いていくうちに今の企画にたどり着いて、これは面白いなと思いました。同じ作品でもそれぞれの見方で違ったものに見えるというコンセプト。それをどう表現できるか。言葉として、作品としてどのようにできるかが今一番の課題です。なかなかいいものができあがったぞと思っているので、2回目、3回目ができるようにがんばっていきたいですね。

太田:僕もはじめ聞いたときに、とても面白い企画だなと思いました。もともとコロナ禍になる前は生の観劇が当たり前でしたから。でも今はみなさん、足を運びにくい状況にある。それで今の配信が発達していったのですが、それでも配信と劇場とでは熱量に大きな隔たりがあると感じます。その中で今回の企画は配信で視聴するのと、劇場で観覧するのとで内容が変わっており、2通りの楽しみ方があります。このような舞台の形は今だからこそ生まれた発想なんだなと思いました。

碕:別次元舞台なんて聞いたことがなかった言葉でしたので、いったいどうするのかというのに興味がありました。しかも(磯貝)龍乎さん演出というのもあり、これは絶対面白い予感がするぞ!と。台本自体は今現在では初稿ですが、その時点で面白かったし、初めて顔を合わせるキャストも多いですし、ワクワク感が止まらないですね。

――場所も新宿FACE、ライブハウスですね。演出についてはどうお考えですか?

磯貝:今回はドラマクルーのお話。お芝居をやっているとき、スタッフ役の側とは別に俳優役の側にもカメラがあって、そのカメラは両方のお客様が観られるようプロジェクターに映します。結構ドタバタ動いているんですが、テンポがよく、わかりやすいと思います。どうだ、このギミック!という特別感はなく、シンプルなんですが気持ちよく観られるようにできればいいですね。そして、セットを実際に組んでいくところもあり、いろいろなバリエーションをつなぎ合わせて場面を転換させるという手法を取っています。

――演じる役柄についてはいかがでしょうか?

太田:僕が今回演じる松田という人物は売れている俳優ですが性格が悪いです。以前は同事務所のライバルよりも売れていませんでしたが、他人を蹴落としてでもどうにか有名になってやろうという強い野心で這い上がった人物です。また、ピンチをチャンスに変えていく力もある、好奇心旺盛な人物だと思いますね。今の役者はただいい人”というだけではやっていけない。その点をリアルに松田は表現していますし、松田のセリフに共感できるところも多いので、もしかしたら自覚していなかった自分の性格の悪さが出ているのかもしれません(笑)。

碕:僕は藤原という監督を演じます。癇癪持ちの嫌われ者、誰も後について来れない。第一印象はめちゃくちゃしゃべるしツッコミも多いし、スタッフチームをさばいていく人物なんだなと思いました。今後、役者チームと絡むことによってどういう作品になっていくのかがすごく楽しみです。スタッフチームの方は本当にヤバい人物ばかりなんですよ(笑)。これをどうしていくのか。がんばっていきたいですね。

――お芝居の現場と映像の現場の違いはどうでしょうか?

太田:映像も舞台も、根本の部分は変わらないと思いますが、舞台は長い稽古を経て作り上げていくものですから。さらに上演時間に納めるよう起承転結がはっきりしている。対して映像のドラマはリハーサルが1日あったとして次はもう本番、なんてことがザラですから。瞬発力が求められる現場だと感じます。その分やはり、みんながそれぞれ持ち寄ったものをぶつけてという感覚が面白いなとは思いますし、同時に感情を整理しないといけない。その分、アップで抜いたりもできるのでより繊細な表現が可能になりますね。そういう意味では舞台というのは稽古がたくさんできて親切だなと思います。舞台は舞台で、客席の奥まで届けないといけないから、強い演技力が必要になってきますよね。2つとも面白みがあって飽きないですよね。

碕:映像の現場って顔を合わせることが少ないから、相性がよくなかったりすることもありますね。そういう意味では舞台のほうが好きです。1ヶ月は作り上げていき、ディスカッションもして、一つの目標に向かって一致団結して。そして舞台でぶつけてお客様からの反応があるというのが舞台の醍醐味だと思っています。映像は瞬発力というか、その場で自分のベストを出さなければ、気づいたときにはタイミングを見失うことも。そういった面では難しいです。映像は映像で、新鮮さを味わえる点では舞台とは違った楽しさがあります。

――配信については、演劇だけれど映像を観ていることになりますよね。

磯貝:配信は配信で、1時間なんです。生観劇が終わっても生配信は続くんです。そのため配信と舞台で結末が違うことになっているので。どちらを観ても楽しめると思いますよ。

太田:面白いのが、初日は配信だけなんです。それを観た人が生で観たときに「こういうお話だったのか」という新しい発見もあると思いますよ。

磯貝:しかも、客席の位置によっても見え方が違います。いろんな角度から……。

碕:お客様も1回で満足、という形にはならないと思いますよ。繰り返し観ることでより楽しくなる。今日はこっちサイドを観てみよう、とか楽しみ方はそれぞれですよね。生配信ということでしゃべっている間も気を抜けないな、と思いますが(笑)

――先に観るのが舞台なのか、配信なのかで印象が変わりますよね。休演日にはスタジオツアーがあるそうですね。

太田:新しい試みなので面白いなと思っています。最近ではなかなか見られないですよね。

――最後にメッセージを!

磯貝:綺麗事でまとまっていない、ということがウリの舞台。ガチの芸能の裏側も出しつつ、特にメッセージ性はないけれど気持ちよくなれるということをコンセプトに書いているので。ぜひ観に来てほしいと思います。

碕:今まで多くの舞台に出演してきましたけれど、こんなにワクワクする作品は久しぶり。いったいどうなるのかという気持ちが強いです。生配信、生観劇、いろんな見方で違う楽しみ方ができるので。新たなアトラクションを観に来るイメージで来ていただければ。別次元舞台という新たなジャンルが生まれる予感がします。

太田:まず、血だらけになります(笑)。ということは衣装も毎回新しいものになるくらい、大掛かり。僕も演出家じゃないのにちょっと悩んだくらい大変な作品だなと感じました。きれいにまとまっていないところがポイントなので。それだけ演技力も必要になってきますし。純粋にこの作品を楽しんでもらえたらなと思います。

――ありがとうございます。公演を楽しみにしています。

<あらすじ>
とある廃墟で新感覚ハリウッドホラーの生ライブドラマを撮ろうとしているテレビクルーのお話。
そんな中、仲の悪い監督とカメラマンが何か揉めている。
予定していたスタッフが来れなくなったという。
どうにかスタートしなければいけないということで臨時のスタッフでノーカット撮影に挑もうとするのだが、そのスタッフ達はとんでもないポンコツだった!?どうにかして成功させようとするのだが…!?

いざ始まった撮影でクルー内の意外な人間関係が発覚。

クルー内の複雑な人間関係がきっかけで巻き起こる、やられやりかえしのドタバタミステリー!!コメディなの?そうじゃないの?

全てが完結したと思った時、鳥肌が立つような恐怖感に襲われる…

<概要>
舞台「Another lenz」
日程・会場2021年5⽉15⽇〜5⽉23⽇ 新宿 FACE(ドリンク代として別途500円必要。)
[スタッフ] 脚本・演出:磯貝龍乎  主催:2021舞台「Another lenz」製作委員会
[キャスト] 太田将熙/菊池修司、碕理人、北澤早紀(AKB48)、伊崎龍次郎、武本悠佑、山沖勇輝、足立英昭、藤本かえで/溝呂木賢
[問合]株式会社De-LIGHT製作部 MAIL:info@delight-act.com
公式HP:http://anotherlenz.delight-act.com
構成協力:佐藤たかし
取材:高 浩美