オペラの巨人ヴェルディが手がけた最後の喜劇『ファルスタッフ』新国立劇場にて上演

この世はすべて冗談! ジョナサン・ミラーの名演出に皆が活き活き動き出す、
まるで動くフェルメール! 愛すべき活き活きとした民衆たち極上のコメディ

オペラの巨人ヴェルディがシェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』をもとに、人生最後に手がけた喜劇『ファルスタッフ』。ドラマも音楽も圧倒的楽しさでいっぱい。
ジョナサン・ミラーの演出は、17 世紀オランダ絵画に描かれた民衆の日常を研究した世界。緻密な構図、静謐な色遣いの舞台はまるでフェルメールの風俗画から飛び出したよう。愛すべき人々が繰り広げる小気味よい喜劇と人間洞察に満ちたアイロニーは人間賛歌そのもので、劇場を幸福感で満たす。

タイトルロールにはロッシーニなどで世界を駆け巡るイタリアの大人気バリトン、ニコラ・アライモがオペラファン待望の新国立劇場デビュー。ファルスタッフはスカラ座をはじめ欧州各地で歌っている得意役。アリーチェには比類ないテクニックと表現力で主要劇場に続々と出演し成功を重ねているソプラノ、ロベルタ・マンテーニャ、クイックリー夫人にはロッシーニを中心に欧米の歌劇場で活躍し、 バロック、古楽でも評価の高いマリアンナ・ピッツォラート、フォードにはメキシコ出身の新星ホルヘ・エスピーノが出演。ページ夫人メグにはイタリアでスター街道を駆け上り、昨年『チェネレントラ』で日本のオペラファンの話題をさらった脇園彩が登場、最高のアンサンブルとなっている。

ニコラ・アライモ
ロベルタ・マンテーニャ

悲劇で名声を極めたヴェルディが、シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』『ヘンリー四世』を原作に、人生最後に手がけたのが極上の喜劇『ファルスタッフ』。圧倒的楽しさと人生哲学にあふれた、誕生したのが奇跡のような傑作です。強欲でも愛すべき老騎士ファルスタ ッフを中心に、快活で機知あふれる女性陣や若いカップルらが繰り広げるストーリー。音楽的なユニークさでも先進的で、ファルスタッフの自己中心的ながら憎めないキャラクターの滲むモノローグ、女声陣×男声陣×若者フェントンの1幕九重唱、そしてソリスト10人と合唱によるフィナーレの大フーガと、緻密な技法で練り上げられた、わくわくするような音楽がいっぱい。
中でもファルスタッフが口火を切るフィナーレの大フーガ「この世はすべて冗談だ」は、ガラコンサートなどでも今やすっかり定番となった、お開きにぴったりのナンバー。

『ファルスタッフ』の演出は、英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーやBBCの映像などシェイクスピア作品で知られた巨匠ジョナサン・ミラー。哲学者でもあり医師でもあった知の巨人ミラーは、シェイクスピアの時代のルネサンス家屋を詳細に記録したフェルメールの時代の17世紀オランダ絵画に着目、風俗画に描かれた民衆をつぶさに研究して、舞台上に蘇らせる。
フェルメールといえば 30 数点しかないという作品の希少性もあって、世界中に熱狂的なファンがいる伝説の画家。静謐な色調、光と影の扱い、タイル床や壁に掛けられた絵、調度品といった室内装飾、緻密に計算された舞台構図、衣裳、そしてニュアンスに富んだ人物造形などな ど、ジョナサン・ミラー版『ファルスタッフ』にはフェルメールファンには見逃せない要素が盛りだくさん。ぜひ劇場で “動くフェルメール”『フ ァルスタッフ』をお楽しみください。

<ものがたり>
【第1幕】
太鼓腹が自慢の好色な老騎士ファルスタッフは、ページ夫人メグとフォード夫人アリーチェが 自分に気があると勘違いし、彼女たちへ同時に恋文を書く。手紙を受け取ったメグとアリーチェは、身の程知らずな内容の上、全く同じ文面であることに呆れ顔。クイックリー夫人ら女性陣で懲らしめよう と画策する。一方フォードも、妻アリーチェ宛にファルスタッフが恋文を書いたという従者からの情報を 受け、ファルスタッフをやりこめようと意気込む。
【第2幕】
クイックリー夫人が、アリーチェとの逢引きの時間をファルスタッフに伝えて、作戦がスター ト。フォードは偽名を使い「アリーチェを誘惑してほしい」とファルスタッフに頼む。ファルスタッフは「アリ ―チェと会う予定だからお安いご用」と語り、フォードは驚愕する。迎えた逢引きのとき、ファルスタッフ がアリーチェを口説いていると、筋書き通りメグが来て、彼は慌てて逃げる。そのとき、妻の浮気相手 を捕らえようとフォードらが乗り込んでくる。彼がつい立ての向こうを確認すると、そこには娘のナンネッタとフェントンが。2 人の結婚を認めないフォードは怒り心頭。洗濯籠の中に身を潜めていたファルスタッフは、女性陣のシナリオ通り籠ごと川に投げ落とされる。
【第3幕】
散々な目に遭っても懲りないファルスタッフは、再びアリーチェと会う約束をする。今回の場 所は真夜中のウィンザー公園。精霊がさまようと言われる場所だ。約束の時間にファルスタッフとアリ ーチェが会うと、助けを求めるメグの声が響く。精霊があらわれたと怖がるファルスタッフは、目をつぶ って横たわる。実はフォードらが妖精を演じているのだが、すっかり怯えたファルスタッフは、これまで のことを謝る。また、女性陣の計らいで、フォードもナンネッタとフェントンの結婚を認める。ファルスタ ッフが「この世はすべて冗談」と語って大団円となる。

概要
日程・会場:2023年2月10日(金)19:00/12日(日)14:00/15日(木)14:00/18日(土)14:00  新国立劇場 オペラパレス
指揮:コッラード・ロヴァーリス
演出:ジョナサン・ミラー
出演:
ファルスタッフ:ニコラ・アライモ
フォード:ホルヘ・エスピーノ
フェントン:村上公太
医師カイウス:青地英幸
バルドルフォ:糸賀修平
ピストーラ:保田真澄
フォード夫人アリーチェ:ベルタ・マンテーニャ
ナンネッタ:三宅理恵
クイックリー夫人:マリアンナ・ピッツォラート
ページ夫人メグ:脇園 彩

芸術監督:大野和士
公演情報WEBサイト https://www.nntt.jac.go.jp/opera/falstaff/
舞台写真:新国立劇場オペラ『ファルスタッフ』2018年公演より 撮影:寺司正彦