崎山つばさ,西山潤,櫻井圭登,橋本祥平出演 演出荒井遼. 『ポート・オーソリティ-港湾局-』クロストーク

『海をゆく者』のコナー・マクファーソンによる 3 人の男の心の旅。 平凡な人生に隠された詩。マルチキャスト・リーディング日本初演。
アイルランドを代表する劇作家コナー・マクファーソン。代表作『海をゆく者』のアンサープレイとも受け取れる『ポート・オーソリティ-港湾局-』いわば“海を視る者”。勝負に繰り出す人生 に対して、流れに身を任せ踏みとどまり、海を見つめる静かな生き方をした3人の男たちの心の声 を人気・実力俳優たちの語りで。
進むべき道を決めかねている若者役に、崎山つばさ、西山潤、櫻井圭登、橋本祥平。 ユーモアあふれる大酒飲みの中年役に、眞島秀和、山中崇。 老人ホームで暮らす老人役に『海をゆく者』にも出演した平田満、大谷亮介。
演出の荒井遼と若者・ケヴィン役を演じる崎山つばさ、西山潤、櫻井圭登、橋本祥平の鼎談が実現した。

ーーこの作品を選んだ理由は?

荒井:市井の人々の話。普段見過ごされがちなことを描いている作品です。そこが好きです。『ダブリンキャロル』をやってからずっと、またコナー・マクファーソンの作品をやりたいと思っていて、シアタートラムとの親和性も高いと思ってこの作品を選びました。

ーーこの作品のオファーを受けたときの感想と、台本を読んでの印象は?

崎山:台本を読んで、すごく自分と重なる部分も多いなと思いましたよね。若いとき、20代前半のころって、自分がどの道に進んでいくかということに悩んだりすることがあって。自分が生きてきたものを、この作品に出せればいいなと。それがケビンの言葉に表せるように。

櫻井:海外の方の脚本を演じる機会がなかなかなくて、今回オファーをいただけて光栄だなと思っています。台本には普段、省かれそうなことが緻密に書いてあって、自分としては情景もリアルに感じられた。なので、そこをどう表現していこうかなと。あと、マネージャーさんがシアタートラムのことが大好きで(笑)。とても喜んでもらえました(笑)。

西山:僕自身、朗読劇は今回で2回目の出演でして、以前やらせていただいた時は、言葉だけで表現し、皆さんに伝えることが楽しいなと感じました。今回、再び朗読劇を演じる機会をいただき、とてもうれしく思います。また、シアタートラムでお芝居をできることがすごく楽しみです。台本を読んだ感想は、モノローグ的なものがずっと続くというのが今まで経験したことがなく難しいなと感じましたが、稽古を積んでケヴィンを演じられるよう頑張ります。

橋本:最初、お話をいただいて、正直朗読劇というものに若干、苦手意識があったんですよ。ちゃんと、自分の言葉や動きでお届けしたいと思っていたから。とはいえ、今年いくつか朗読劇のお仕事のご縁がいくつかありまして。そのとき演出家さんから話していただいたのが「朗読劇は、自分の役の感情よりも物語をお届けするものだよ」ということ。僕としてはその一本の軸がグサッと刺さったような感じでした。なので朗読劇をまたやってみようと思っていた矢先に『ポート・オーソリティ-港湾局-』のお話をいただいたので。「これは運命だな」と思い二つ返事で受けさせていただきました。台本については、やはりモノローグがとにかく多い。それこそお客様を飽きさせないように、この物語を伝えないといけないと同時に、役者泣かせだなあと感じています。これを終えるころには、自分も成長できるのかも。

ーー現状の演出プランはどうなっているでしょうか。

荒井:具体的な表現の話ではないんですけど、3人の人生がそれぞれバラバラにも見え、実は一つの人生にも見えるような作品にしたいなと考えていますね。朗読っていろいろやり方はあると思うんです。生演奏があったり踊りが一緒にあったり。でも大前提として、物語を伝えるということですよね。あとは、この作品に含まれている海、水のイメージは、抽象性をもった美術的な表現でやりたいなと思っていますね。インスタレーションのような。

ーー今回演じるケヴィンという人物については?

崎山:かわいいな、と思いますね。どことなく愛くるしい。他人がいなければ自分でいられないというような。とても周りに影響されやすい、多感で粗野な青年です。なんですけれども、根は優しくて。すごく読んでて可愛げがあるな、というのが第一印象でした。若いからゆえの幼さがある。

櫻井:昔、高校生のときの自分に似てるなって思いました。心情というか、もやもや感というか。大衆の中にまぎれて生活していて、自分の芯がない状態。とはいえ、僕も人生の途中なんで、まだ現在進行系で似ているかもしれないですね。

西山:ケヴィンは20歳ということで、自分の中にある勝手な自信があったり、背伸びしているイメージです。そんなことをケヴィンに言ったらきっと怒るでしょうけど。でも、見ていたらそう思えること請け合いです。いろいろな選択肢を与えられていて、それをいちいち踏み間違う。そんな様子がまた、自分に似てる気がしました。

橋本:やはり、すごく気持ちがわかるなという部分があるし、誰しもが心の中にケヴィンを抱えているような。身近に思える存在ですよね。将来の不安だったりとか、若さゆえの行動とか。でも一緒にルームシェアする友達が、ケヴィンよりももっとヤバいんですよ(笑)。なので、ケヴィンはもっとまともに見えてくるかもしれません(笑)。そんな彼と、1時間ちょっと、ともに歩んでいきたいなと。

ーーたしかに、悪い友達ですよねえ。

橋本:ですね(笑)。もしかしたら、むしろ僕はケヴィンよりそっちに近いかもしれないです(笑)。

ーー荒井さんにとって、ケヴィンとは?

荒井:みなさんがおっしゃっていたことが、もう全部正解だと思います(笑)。なので、他の人物を紹介しますと、どこか冒険に乗り出せなかったり、躊躇するような人たちの話を集めていると思います。3人の人生を語ることによって、他の人物をより理解できるようになっている。その構成が面白いと思っています。ひとり芝居を3つやるような、ある意味3人それぞれのひとり芝居を一度に観られるお得さがこの舞台にはあります(笑)。

ーーほかの2人は、30歳前後のややくたびれた方と、だいぶ年配のキャラクターと、ケヴィンと合わせるとちょうど3世代ですよね、お父さん、おじいちゃん、孫、みたいな。

荒井:それが作家さんの狙いでしょうね。人生の3つのフェーズを並べて、それぞれ価値観、喜び、悲しみ、葛藤を描く。抽象的な一人の人生にも見えるのが面白いところではないでしょうか。あとは、崎山さんがおっしゃっていましたけど、登場人物はみんな愛らしさがありますよね。憎んでも憎みきれないような。そして「男の話」だなあと思うんですよ。今回も登場人物は全員男だし。男子校、男子寮のような感じ。『ダブリンキャロル』には、山下リオさんが演じて下さったメアリーという主人公の娘が出て来ました、男のだらしなさを諌めつつ、男を救う存在でした。そのあたりがコナー・マクファーソンの特徴な気がします。

ーーですね。このコナー・マクファーソンの色が濃く出ている感じ。

荒井:僕としては、下町みたいなイメージだと思っているんですよ。決して大都市の話じゃなくて。下町でふらっと入った飲み屋で出会った人の人生を追いかけたら、こんな物語ができました、みたいな。そこが好きなんですよね。

ーー今回、4人の俳優がそれぞれケヴィンを演じますが……。

荒井:そうですね。まだ稽古は始まっていないですが、バラバラでやる予定なんです。そのほうが各々の持ち味を出してくれるんじゃないかと思いますし。それぞれの正解があると思います。そこがマルチキャストならではの面白さでもあります。お客様にとっても、一つの役がいろいろな解釈で観られますし。今から非常に稽古が楽しみです。

崎山:今、それぞれのケヴィン像を聞いていても、それぞれ解釈がちがうというか、面白いワードが飛び出していましたよね。その人の声でケヴィンも変わると思うし。多感な時期で刺激を受けるじゃないですが、同じ役だからこそ、他の人の稽古を観てみると、こんなに違うのかとも思うでしょうね。

ーー本番がはじまると、ほかの登場人物との組み合わせも変わったりして、楽しみですよね。ほかの2人の登場人物についてはいかがでしょうか。

荒井:いちばん冒険しているのはダーモットですよね。でも、積極的という感じじゃない。フッと湧いた話に釣られて行動を起こしている。そこがとてもユーモアがあって、愛らしい。酒もいっぱい飲むし。一方で、平田さん、大谷さんが演じてくださるジョーは伝統的な価値観の世界で生きてきた人。自分を押し殺して生きてきた人ですよね。この最近の50年の世界的な価値観の変わり様も表現できればと思っています。

ーー三者三様のコントラストが面白いのかなと感じました。

荒井:そうですね。そうできるといいなと思います。

ーーそれでは、最後にメッセージを。

荒井:なんでこの3人の物語が並列されるのか。その意味を最後に感じてもらえるといいなと思ってます。バラバラだけど、目に見えない繋がり合いの話なんですよね。今、さまざまな意味で多様性が叫ばれていると思いますが、もうちょっと抽象的な意味での、人間の魂の繋がり合いの話だと思っています。全人類、いや全生命体に共感できる話なんじゃないのかなと思います。国を超えた話です。これ、20年前に書かれた本ですからね!交流していないんだけど、交流しているように感じるというのができたら、それが演劇の力なんじゃないでしょうか。

崎山:この作品見ていていいなと思ったのが、自分がこれから生きることって、そのときにならないと経験ができないわけですが。ダーモットやジョーが言っていることも、自分が30年40年したらわかるようになっているかもしれない。それに出会えるということが、すごくいいなと思っています。だから、この劇場を観に来る人も、幅広い年代の方がいらっしゃると思うんですが、自分がこれから生きる年齢のときにどう思うか、こういうときに壁にぶち当たるのか、とか。未来を見据えた楽しみ方もできるなと感じています。自分の人生について考える瞬間が訪れてくれるといいですよね。

櫻井:この作品を読んでいて、どんな人も生きているというのを感じます。どんな後悔や失敗があってもその人は生きているし。だからこそ、自分に選択肢が訪れますし。どんな人もちょっと救われるように、という意識で演じさせていただきます。

西山:この作品は、三世代の男性それぞれの言葉だったり選択だったり、なんともいえないよさが散りばめられているところが面白いなと思います。なので、そこを観客の皆様と共有できるように僕はケヴィンとして、精一杯演じさせていただきます。

橋本:昨今、いろんな形の朗読劇とか、演劇がありますよね。朗読劇とはいえ、視覚でも楽しめるような。そんななか、今回はめちゃくちゃ王道、どストレート。で、それはこの本だからこそ成立するし、王道ということはごまかしが一切きかない。なのでそこは本気で僕らが向き合わないと、すぐバレてしまうので役者魂を震わせて挑みたい。また、この作品って「めっちゃ手に汗握る」といった展開はないんですよ。でも、海辺で座りながら観るような感覚で、物語を楽しんでほしいなと思います。この本番期間中は、三軒茶屋にない海を作るつもりで演じたい(笑)。

ーーありがとうございました。公演を楽しみにしております。

イントロダクション
これは、戦うリスクより流れに身を任せる人生を選んだ人たちの物語。 3人の男たちはそれぞれの人生を語りはじめる……。
若者はルームシェアをしている女性に恋をしている。
家庭に疲れた中年はある日突然、セレブリティの仲間入りをする。
そして、老人のもとにはとある女性の写真が送られてくる……。
彼らは、それぞれの時間と場所で喜び、悲しみ、報われない思い、大切な記憶を語り始める。
3人の男の3つの物語が交差する。浮かび上がるのは、平凡な人生に隠された詩。

概要
『ポート・オーソリティ-港湾局-』
日程・会場:2024年 3月28日(木)〜31日(日) シアタートラム
作 コナー・マクファーソン
翻訳 常田景子
演出 荒井遼
出演:
崎山つばさ、西山潤、櫻井圭登、橋本祥平
眞島秀和、山中崇
平田満、大谷亮介 (出演日順)
照明 稲田桂/音響 藤田赤目/衣装 上杉麻美/舞台監督 深瀬元喜/宣伝美術 宇野奈津子 制作 吉越萌子・三村楽/制作協力 MAパブリッシング/主催 一般社団法人幻都
▶ホームページ https://theatertheater.wixsite.com/port2024
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▶問い合わせ info01gento@gmail.com 03-5791-1812(MAパブリッシング)

取材:高浩美
構成協力:佐藤たかし