《インタビュー》ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」トニー役:浦井健治、柿澤勇人

ミュージカルの金字塔「ウエスト・サイド・ストーリー」、2019年8月〜10月、来日公演が日本初の360度回転劇場・IHIステージアラウンド東京で上演、そしてその後は選りすぐった日本キャストによる公演、Season1は宮野真守と蒼井翔太がトニー役をWキャストで、Season2 は 2020 年2月から村上虹郎と森崎ウィンがトニー役をWキャストで。そしてラストを飾る Season3、トニー役は浦井健治と柿澤勇人のWキャスト。ミュージカル界を牽引する二人に作品に対する思い入れや役柄、バーンスタインの名曲についてなどを語っていただいた。

――名作「ウエスト・サイド・ストーリー」のトニーという役柄に対しての意気込みは?

柿澤僕がいた劇団四季でもやっている演目でしたが、ミュージカルに携わっている身としてはもちろん知っていますし、ミュージカルに詳しくない方でも知っているほどのセンセーショナルな作品ですよね。劇団四季にいたころもレパートリーには入っていたものの演じる機会がなかった作品なので、今このように出演できることが“まさか”という気持ちです。年齢的にも僕は32歳なので、「ウエスト・サイド・ストーリー」のような若者が活躍する作品に出演するにはもうラストチャンスになるのかな、とも思っていました。

浦井世界中で愛されている不朽の名作であり、日本でも山口祐一郎さんを筆頭に諸先輩方が関わってこられた歴史あるミュージカル。それを360度回転劇場で、令和の時代を生きる我々が熱を注ぎ込むというか、人間の葛藤のようなメッセージを伝えていけるかが課題でもあるので、今この時代にやる意義はあると思います。

――トニーという役柄に対して、演じ甲斐のような手応えはありますか?

浦井まっすぐで、男性として純粋に人を愛するという気持ちを体現できるという意味では憧れるというか。それを友情だとか、大人たちとの関係といったところでも、人間としてあるひとつの生き方をたくさん学べる役柄ではあると思いますが、その一方で若さゆえの……と感じられるものもあるので、そこが人間のアンバランスさであるな、と。この若者を我々の年代がやる。当時「ウエスト・サイド・ストーリー」が作られたときの若者って、今の同世代よりはるかに精神年齢が高いと思うんです。そういう意味でもしっかりセリフの裏側にある感情を演じていけたらなと思います。

柿澤まず1人の女性と巡り合って、一目惚れ以上のもの……人生最後の瞬間まで添い遂げるであろうと、愛しぬくことによって悲劇がどんどん生まれていくわけですけれど、そのような純粋な役を役者として演じられるのはとてもうれしいことですし、ジェッツ……主にリフという親友との芝居も楽しいですね。それはもう少し若い時には通ってきたような道だったかもしれないし、僕自身も憧れがあったようなことなので、再体験できるということは楽しみです。それに今回のマリア役のお二人(桜井玲香、伊原六花
)もフレッシュだし、リフ役(加藤和樹、木村達成)のお二人も全く違うタイプなので、早くお芝居がしたいなと思っています。

――共演者の方々への期待はありますか?

浦井どちらのマリアも、リーダーを経験していらっしゃる方なんですよね。ある意味男気があるというか、さっぱりしているところもあって、女優さんとしても、もちろん人としても信頼できる方なんだろうなと思います。リフはそれぞれのキャラクターが個性が強いですし、リフはダンスの運動量も多いし、身体のケアもしっかりやらなくてはいけないと思うので、トニーとして優しく接していきたいですね。男の友情というか、対人間同士の信頼関係を築ける人物……一人では生きていけない、といったような関係性も表現できればなと思います。

――この作品は名曲揃いですが、歌唱への期待はあるでしょうか。

浦井キーも高いところから低いところまであって、大変なんです。歌詞のニュアンスもありますから、声を張り上げるだけではなくて、内に秘めた感情を音に含めるという繊細な技術を要するので、それをお芝居として落とし込む難役ですよね、トニーは。楽曲があまりにも美しいので、そこに乗っていけるように、ダブルキャストのカッキー(柿澤)と助け合って、一回ずつに魂を込めてやっていきたいです。

柿澤『Something’s coming』など難しいですよ。今日も稽古してきましたけれど変拍子のところなど特に。それがノッキングしながら前に進んでいるリズム感というのを、バーンスタインが作り上げている。三大テノールの一人ドミンゴでさえ歌うことが難しかった歌を、今回はダブルキャストですが芝居の中で歌えるんだなということを光栄に思いながらもまっすぐ向き合いたいなと思います。

――ダブルキャストとして、お互いどのような印象をお持ちですか?

浦井カッキー(柿澤)は、お芝居のうえで役者として1ではなく0になれるんです。潔いというか、役に全身を憑依させることができる稀有な存在だと思います。僕が初めてカッキーを観たのが『春のめざめ』だったんですが、“なんだろうこの人は!”と思っていたのが案外普通のサッカー少年で(笑)。カッキー自身、不器用かもしれないけれどめちゃくちゃカッコいいんです。それに、人情味があるところはまさに“漢”だな、と(笑)。

柿澤その「春のめざめ」の時に浦井くん……当時は浦井さんだったんですけれど。一緒にゴハンを食べたんです。その時にいろいろなことを聞いて話してくれて。僕が話しやすいように場の雰囲気を見られる人です。タイプは全然違いますけれど。連絡取り合ったりするのは彼の人柄のよさだと思います。健ちゃん(浦井)は、役者としては行くところまで行ってしまうというか、芝居にすべてをかけているというか。例えば、楽屋で“大丈夫?”って声をかけてしまうくらい身体にアザを作っていたこともあったんです。トニーは、役柄として感情を爆発させるのがラストなのでそのときはどのようになっているのか、客観的に楽しみです。

浦井カッキー(柿澤)のトニーっぽいところといえば、一途なところが当てはまるかも。人への思いやりを含めて。

柿澤健ちゃん(浦井)だったら、ちょっとふにゃふにゃしてるところがトニーっぽい(笑)。例えば決闘のシーンでは武器を使ったらダメなのに、素手ならいいよって……素手でも決闘は決闘なのに、不思議ですよね(笑)。

 

――最後にメッセージを!

浦井「ウエスト・サイド・ストーリー」をIHIステージアラウンド東京で、Season1、2とつないできたバトンを今回Season3として受け継ぎます。我々がしっかりと責任をもって、“これが今の日本の「ウエスト・サイド・ストーリー」”とメッセージを伝えられるように、全うしていきたい。ぜひ劇場にアトラクション感覚で来てもらえればなと思います。

柿澤Season1、2をご覧になった方にとっては、また毛色の違った作品として楽しんでいただけると思いますし、ミュージカルが好きな方ならなおさらIHIステージアラウンド東京で観るという機会もできるので、それを「ウエスト・サイド・ストーリー」という不朽の名作と名曲の数々にのせて、キャストががんばっている姿を観ていただけたら。舞台をあまり観たことがない人でも、“客席って回るの?”という感覚でもきっと何かを感じて帰ってもらえる自信があるので、とにかく来ていただきたいなと思っています。

――ありがとうございました。公演を楽しみにしております。

<ストーリー>
舞台は、1950 年代後半のニューヨーク、マンハッタンのウエストサイド。セントラルパークを挟んで、イーストサイドが高級住宅街、ウエストサイドには多くの移民が住んでいた時代の物語。この頃のニューヨークは、世界中から多くの 移民が夢と富を求めて集まってきた時代。彼らはそれぞれギャング集団を作り、お互いに敵対し合う。しかし、ポーランド系移民のトニーと、プエルトリコ系移民のマリアは偶然出会い、激しい恋に落ちてしまう。禁断の愛は多くの人を巻き込み、悲劇の連鎖を生む…。シェイクスピアの悲劇「ロミオとジュリエット」に着想を得た作品。偏見、暴力の世界で生き抜いていくために恋にもがく作品であると、この作品の脚本家、アーサー・ローレンツは言う。
<IHI ステージアラウンド東京とは?>
この劇場システムは、2010 年 10 月、オランダのアムステルダム郊外の飛行場跡地にある格納庫で誕生。発明者は、欧米で有名なエンターテインメントカンパニーの「Imagine Nation」のロビン・デ・レヴィータ。郊外にもかかわらず、オープン以来上演されている演目“Soldaat van Oranje”(邦題: 「女王陛下の戦士」)は、のべ 200 万人を超える動員を記録。9 年目に突入した今なお(2019 年 1 月現在)チケットは連日完売が続き、記録的なロングランになっています。そんなステージアラウンドの劇場システムは世界各国のトップクリエイターたちからのオファーが相次ぐなか、TBSテレビが日本でのシステム使用独占権を獲得。2017 年 3 月に世界で2 番目、アジアでは初のオープンとなりました。日本では劇団☆新感線による『髑髏城の七人』『メタルマクベス』を上演し、合わせて約 70 万人を動員。その後、世界初となる回転劇場での美術展『BOUM ! BOUM ! BOUM ! 香取慎吾 NIPPON 初個展』 を開催し大きな反響を呼びました。

<出演>
トニー:浦井健治/柿澤勇人(Wキャスト)
マリア:桜井玲香/伊原六花(Wキャスト)
アニータ:ソニン/夢咲ねね (Wキャスト)
リフ:加藤和樹/木村達成 (Wキャスト)
ベルナルド:Oguri/有澤樟太郎(Wキャスト)

シュランク:中村まこと
クラプキ:コング桑田
グラッドハンド:やついいちろう/槙尾ユウスケ(かもめんたる)(Wキャスト)
ドク:モロ師岡
The Jets & The Sharks
穴沢裕介 大村真佑 工藤広夢 後藤健流 斎藤准一郎 笹岡征矢 高原紳輔
田極 翼 東間一貴 富永雄翔 根岸澄宜 橋田 康 畠山翔太 前原雅樹 宮河愛一郎
淺越葉菜 伊藤かの子 井上真由子 内田百合香 大泰司桃子 今野晶乃
酒井比那 鈴木さあや 田中里佳 笘篠ひとみ 矢吹世奈 山崎朱菜 脇坂美帆

【概要】
日程:2020年4月1日(水)~ 2020年5月31日(日) 全78回公演
※公演によりキャストが異なります。キャストスケジュールは公式HPをご覧ください。
※◆の公演はSPウィークデーナイト料金となります。
Season3公式HP:https://www.tbs.co.jp/stagearound/wss360_3/
原案:ジェローム・ロビンス
脚本:アーサー・ローレンツ
音楽:レナード・バーンスタイン
作詞:スティーブン・ソンドハイムオリジナルプロダクション・演出・振付:ジェローム・ロビンス
<ステージアラウンド版オリジナルSTAFF>
演出:デイヴィッド・セイント 振付リステージング:フリオ・モンヘ セットデザイン:アナ・ルイゾス
照明デザイン:ケン・ビリングトン プロジェクションデザイン:59プロダクションズ
衣裳デザイン:リサ・ジニー 音響デザイン:山本浩一(エス・シー・アライアンス)エグゼクティブ・プロデューサー:
ケヴィン・マッコロム(Alchemation)、ロビン・デ・レヴィータ(Imagine Nation)、吉井久美子(John Gore Organization)
<日本キャスト版STAFF>
翻訳・訳詞:竜 真知子 演出補:フリオ・モンヘ
振付指導:大澄賢也 歌唱指導:山口正義 音楽監督・指揮:井田勝大 指揮:木村康人、永原裕哉
演出助手:河合範子 舞台監督:和田健汰(キーストーンズ) 技術監督:小林清隆(キーストーンズ)
制作:ゴーチ・ブラザーズ
主催 TBS / ディスクガレージ / ローソンエンタテインメント / 電通 / BS-TBS
後援 TBSラジオ  企画・製作 TBS
公式HP:https://www.tbs.co.jp/stagearound/ ※ 公式サイトにてステージアラウンドFC無料会員登録受付中
公式Facebook:@stagearoundtokyo
公式Twitter:@STAGE_AROUND
<ナビ番組情報>
3月18日(水)深夜25:28~25:58 『2020年春!TBSが送る注目の映画&ミュージカル大解剖スペシャル!』
3月28日(土)午後4:00~4:30 『ウエスト・サイド・ストーリーSeason3 開幕直前SP』(仮)
TBS系にて放送!! *一部地域を除く

撮影:金丸雅代
構成協力:佐藤たかし
取材:高 浩美

[浦井健治]
ヘアメイク:山下由花(Yuka Yamashita)
スタイリング
壽村太一
[柿澤勇人]
ヘアメイク:松田蓉子(YOKO)
スタイリング:椎名宣光
[衣装クレジット]
ブルゾン¥84,000、シャツ¥31,000/ともにCINOH (MOULD 03-6805-1449)
パンツ¥18,000/NUMBER (N)INE(NUMBER (N)INE 03-6416-3503)
ブーツ¥65,000/FACTOTUM×EARLE(FACTOTUM LAB STORE 03-5428-3434)