新国立劇場 開場25周年記念公演『ジゼル』制作発表会レポ

開場25周年を迎えた新国立劇場が新制作で19世紀ロマンティック・バレエ不朽の名作『ジゼル』を上演する。
この公演は吉田都舞踊芸術監督が初めて演出を手掛ける作品となる。振付には英国ロイヤルバレエ団で活躍していたアラスター・マリオット。
すっかり秋めいてきた10月某日の午後、制作発表会が行われた。登壇したのは演出を務める吉田都舞踊芸術監督、改訂振付のアラスター・マリオット、主演ダンサーの木村優里、福岡雄大、池田理沙子、速水渉悟

まず、最初に登壇したのは吉田都舞踊芸術監督。現役時代は数多く出演していた『ジゼル』だが、演出はもちろん、初めて。全ての役を踊ったという吉田都「とても大切な作品」とコメント。「日本に戻ってきてからも踊ってほしいと一番リクエストの多かった作品ですが、コロナ禍のこともあり、残念ながら踊ることはできませんでしたけれども、サー・ピーター・ライトから一から教えていただいた作品です」とコメント。

日本でも今年、スター・バレエ団が公演を行なった。今回は英国ロイヤルバレエ団で活躍していたアラスター・マリオットを振付に招き、オリジナルで上演する。作品の魅力について「今、現在でも共感できる作品、今回アラスター・マリオットさんは1幕の演技に力を入れて下さってて…1幕があるからこその2幕のジゼルの想いなどが伝わってくるので、深い作品。純潔、勇気、そういうものが入って「いる作品だからこそ…」と語る。またスタッフにはアラスター・マリオットはじめ、吉田都にゆかりのある人々が招聘されている。皆、超一流、公演に期待がかかる。「みんなで意見を言い合える雰囲気でとても感謝している」とコメント。「ブリテッシュ・バレエ、演劇性を重視したい、アラスター・マリオットさんや助手さんの振付が本当に細かくって。ストーリーの中に細かく設定して下さって」と語るが、その演劇的な表現は見どころ。

ディック・バードの衣装に言及、「絵画から抜け出たよう」と吉田都。「役柄にぴったりで」とディック・バードの衣装を絶賛。また、ダンサー陣からも稽古時に意見が出るそうで「みんなでつくっています」と語る。風通しの良い現場であることがうかがえる。吉田版『ジゼル』、「クラシック・バレエにずっとこだわってきたので、やはり、そのスタイルはきっちりと守りつつ。それにプラス、お客様によりストーリーが伝わるように、いろんな演技の仕方や表現、そういうところにこだわって作っている最中です。そういう仕上がりになったら嬉しいです」と語った。
それからアラスター・マリオットが登壇、吉田都とは数えきれないほど共演、お互いを熟知している間柄。どのくらい共演したかについて「親戚になるくらい」とコメント。

なんと結婚も何度かしているそう(笑)。また吉田を結婚させるための神父もやっているとのこと。ダンサー・吉田都については「素晴らしい、踊りはとても洗練されていて、クリアーであり、早い時期からそういったものを身につけている、姿勢から全て、その音楽性と動きというのは、まさにイングリッシュ・スターにふさわしい。日本出身で、日本人ですが、皆、英国のバレリーナと受け止めていました。テクニックを超えた、仕事を一緒にする仲間としてはとてもやりやすい。とても静かで自分の欲しているものを明確にわかっている人。きちんと明確にしている、とてもやりやすい仕事仲間です」とコメント。

また現在の共同作業については「都さんからこのご招待を受けたとき、とてもワクワクしました。こういったクラシックな有名な作品に新たに振付をする機会というのは、そんなにあることではない。そして日本に行くこともとてもワクワクしました。彼女が求めることを実現するためにかなりリサーチいたしました。やりやすかったことは、僕らは同じバックグラウンドを共有していること。舞台、音楽、共通項が非常に多い。吉田さんがどういうことをしたいのかはっきりとわかる。2人とも同じ風景を求めていることにとても安心しました」とコメント。また、今回出演のダンサー陣については「実際に踊ってみたらすごく楽しくて、皆さん、本当に熱心で、それでこちらもさらに、という感じで。また、ダンサー陣は持ってきた新しいアイディアをすぐに受け入れてくれる、吸収してくれる、こう言ったところが素晴らしいと思いました。また、チームワークも良く、修正がなされたところは、その人がいなくてもちゃんとすぐに伝えてくれる、家族の中にいるような、そんな、素晴らしい温かな気持ちになれました。みんながおなじゴールに向かって一緒に働けば…全ての方々が、一生懸命です」

見所については「演技をすること、踊ること、明確にイングリッシュ・スタイルというものを正統に受け継ぎながら、この作品を作っていく。それは舞台衣装から舞台美術に至るまで全てに見ることができると思います…しっかりしたものが出来上がる、このバレエ団だからできる作品というのが出来つつある」と語った。
今回のプロダクションでは舞台美術・衣裳が一新、新国立劇場バレエ団で「火の鳥」「アラジン」を担当した舞台美術家ディック・バードが、ヨーロッパのキリスト教と土着の文化の狭間にある世界観をデザインで表現する。

それから主演ダンサーの木村優里、福岡雄大、池田理沙子、速水渉悟が登壇。

木村優里「今回はマリオットさんのご指導によって、舞台のキャラクター1人1人の人物像がはっきりと細部まで、明確になったような気が自分自身しています。1幕の村人たちの生活感だったり、そういった部分が…あとは私たちの掛け合い、アルフレドとジゼルの掛け合いがよりナチュラルに、といいますか、古典的な部分も残しつつも、日常に近い感じになったかなと思っています。今回は雄大さんと組ませていただくのですが、いつもいろいろ教えていただいて、明確なビジョンを示してくださって、本当に感謝しております、とても楽しみです。」

福岡雄大「(アラスター・マリオットさんから)目線の配り方ですとか、すごく効果的なことを細かいことから大きいことまで、教えてもらっています。演劇的な要素がすごく大きくて、『ロミオとジュリエット』のような、英国風なドラマチックさ…演劇的なバレエ、(稽古が)始まる前におっしゃられていたのですが、ドラマチックなバレエを目指していると。最高の状態でいくように2人で」

ちなみに木村優里はプリンシパルに昇格したとのことで拍手が起こった。プリンシパルとして作品に挑むことになる。「ジゼルというキャラクターに関してはいろんな解釈があると思うんです。今、いろんな発見をさせていただいてます。プリンシパルになったからといって大きく変わることはないのですが、引き続き一つひとつの舞台を丁寧に、積み重ねていきたいと思っています」と抱負を語った。

今度は池田、速水ペア、『ジゼル』初主演というフレッシュなコンビ。主役以外の役も踊るそう。リハーサルについては、
池田理沙子「今回、ペザント パ・ド・ドゥはテクニカルな面でもすごくハードな構成になっているのですが、物語が進む中で盛り上がるシーンの1つ、引き続き2人でがんばっていきたいと。速水さんとはお互い初めての挑戦になるので、毎日細かく話し合いながら毎日リハーサルを過ごしております」

速水渉悟「古典バレエである大切なところは残しながらも、自分なりのアルブレヒトを考えながらリハーサルに励んでいます。すごく細かいことですが、ただ見つめ合う、会っているシーンでも何を考えているか、どういった仕草をすると観客に伝わりやすいかを話し合いながら作っています。ペザントではキャラクター性もまったく違うので、ぜひどちらも観に来てください」
新しい『ジゼル』、意欲的な作品になるのは間違いない。

概要
日程・会場:2022年10月21日〜10月30日 新国立劇場 オペラパレス
振付:ジャン・コラリ / ジュール・ペロー/
マリウス・プティパ
演出:吉田 都
改訂振付:アラスター・マリオット
音楽:アドルフ・アダン
美術・衣裳:ディック・バード
照明:リック・フィッシャー
指揮:アレクセイ・バクラン、冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
出演:
ジゼル:小野絢子、柴山紗帆、木村優里、米沢唯、池田理沙子
アルブレヒト:奥村康祐、井澤駿、福岡雄大、渡邊峻郁、速水渉悟
ヒラリオン:福田圭吾、中家正博、木下嘉人、中島駿野
ミルタ:寺田亜沙子、根岸祐衣、中島春菜
ペザント パ・ド・ドゥ:池田理沙子、速水渉悟、奥田花純、中島瑞生、五月女遥、佐野和輝、飯野萌子、山田悠貴
ほか新国立劇場バレエ団

公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/giselle/