劇団四季ファミリーミュージカル『人間になりたがった猫』上演中「僕は人間になりたい!」

自由劇場(東京・竹芝)においてファミリーミュージカル『人間になりたがった猫』東京公演が好評上演中だ。また、7月30日のマチネ・ソワレ公演は配信が決まっている。

劇団四季ファミリーミュージカルの歴史は1964年『はだかの王様』までさかのぼる。半世紀以上にわたって多くの作品を世に生み出してきた。レパートリーは36作品に及び、この『人間になりたがった猫』は、米児童文学作家ロイド・アリグザンダーの同名小説を舞台化、初演は1979年ニッセイ名作劇場第16回公演として上演、この四季のファミリーミュージカルの中では最多となる約2,000回の公演回数。
ファミリーミュージカルのテーマは「命の大切さ」、「愛と勇気の尊さ」、そして「友情と連帯の喜び」など、生きる上で大切なことをおり込み続けてきたが、ファミリーミュージカルのみならず、劇団四季全てのミュージカルのテーマでもある。
今年上演の『人間になりたがった猫』は2020年に全国公演が予定されていた演目だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により全公演が中止に。2年後の今年、東京公演の後は9月10日より全国をまわる。

主人公は猫のライオネル。ご主人の魔法使いのステファヌス博士とともにダンスタンの森で暮らしている。ライオネルは人間になりたくってしょうがない猫だが、ステファヌス博士は人間嫌い、人はすぐに争ったり、互いを憎んだりするから、と言う。ある日、ライオネルが博士に「僕は人間になりたい」と言い、罰として2日間だけ、人間に変えられてしまった。だが、当のライオネルは大喜び(笑)。さっそくブライトフォードの町へ、途中で医学博士(早い話が医者)のタドベリに出会い、「旅は道連れ」と言うことで共に町へ。
人間になっては驚きの連続、足に履く靴から(慣れずにコケる)、歩き方に至るまで。音を立てないように歩くと博士から歩き方についてダメ出しされる、そんな細かい笑いを随所に挟み込む。タドベリに自分は猫だと言っても当然信じてもらえず、病気と思われる始末。それでもライオネルはお構いなし。嬉々として町に到着、姿は人間でも中身は猫、町の喧騒に思わず耳を塞いだり、動体視力が猫なので(笑)、スリもイカサマ手品もあっさり見破り、たちまち人気者に。

ここのくだりは客席からも笑いが起こる。だが、この状況を面白くないと思っている人物が。それはスワガード。町の衛兵隊長だが、町の人々に嫌がらせをしたりするので、皆、彼を毛嫌いしている。彼は、町にあるホテル「白鳥の王様」を1人で切り盛りしているジリアンにLOVELOVE。だが、当然のことながら彼女は見向きもしない。ことあるごとに「ジリア〜ン(LOVE全開)」と言い、その度に客席からさらに笑いが。人気者になったライオネルを疎ましく思い、ホテルに行ってジリアンにキスしたら美味しいものがもらえる、と嘘をつき、疑うことを知らないライオネルは早速行動に移すも、案の定、箒で叩かれる!だが、聡明なジリアンはスワガードの仕業とわかり、逆に2人は仲良くなって…。そしてスワガードはさらなる企みを。さあ、大変!と言うのが物語の流れ。

このライオネル、猫なので人間のやることが全てが新鮮、その驚き方は微笑ましい。そして彼のご主人であるステファヌスは、ライオネルが心配で、ことあるごとにひょっこり現れて、見守っている姿がちょっと可愛い。ライオネルと行動を共にするタドベリ、客観的に物事を冷静に見る人物、最初はライオネルが「僕は猫」と言った時は信じなかったが、ライオネルと接しているうちに彼の言葉を信じ始める。また、この物語のヒロイン・ジリアン、見た目は愛らしいが気が強くしっかり者。そんなジリアンにライオネルは恋心を抱き、次第に猫らしさが消えていき、涙を流すようになる(「目から水が出てきた!」と驚く)ところは、いつ観ても心動かされる。もちろん、オチは”HAPPY!!”に決まってるが、そこに至るまでの過程がドキドキ。客席でじっと見入る子供たち、いや大人も!大人も子供も純粋に楽しめるミュージカル、原作ロイド・アリグザンダー氏もこの作品を観て「魔法のように魅惑的!」と言ったそう。キャッチーな楽曲、作曲は鈴木邦彦。プロの作曲家としてデビューしてまもなく、『天使の誘惑』(1968年)が、第10回日本レコード大賞を受賞。テレビ番組では『NHKのど自慢』がよく知られており、彼の曲を聴いたことのない日本人は多分、いないだろう。劇団四季では、この作品の他に『モモと時間泥棒』、『むかしむかしゾウがきた』など多数手がけている。また、ダイナミックな振り付けは山田卓。日本振付家協会の創設者でもあり、劇団四季作品では『アプローズ』『ジーザス・クライスト・スーパースター』『キャッツ』『ミュージカル李香蘭』など数々の劇団四季代表作を手がけており、そのほか宝塚歌劇団などでも多くの作品で振り付けを行っている。舞台美術、後半の見せ場、ホテル炎上、このホテルが燃えて崩れ落ちる様は映像を全く使わないで表現、ここは劇場で確かめてほしいところ。衣装は森英恵、決して『お子様ランチ』ではない、全てが本格的。”本物を見せたい”制作側の心意気が伝わる作品。俳優陣のスキルも高く、ダンスがピタッと決まる!
初日公演、客席には子どもから大人まで幅広い世代。場内アナウンスが、子供にもわかる平易な言葉で。カーテンコールは大勢の観客が立ち上がって大きな拍手。ファミリー向けだが、ファミリーでなくても友人同士でも!

あらすじ
ぼくは猫のライオネル。
ある日、ご主人で魔法使いのステファヌス博士に口答えをしたら、バツとして2日間人間にさせられちゃった。
でもほんとはね、ぼくはずっと人間になりたかったんだよ。
さっそくブライトフォードの町へ出かけてみたら…
出会ったんだ、可愛い女の子、ジリアンに!
でも彼女は意地悪な役人のスワガードに、ひどい目にあわされていた。救い出さなきゃ!
…最初はびっくりしてばかりだったけど、こうしてぼくは知ったんだ。恋する気持ちも、涙も、仲間の素晴らしさも。
人間ってとってもステキなんだね。
この感動を早くみなさんに伝えたいなあ!ぜひ来てください。
劇場で待っています。

ファミリーミュージカル『人間になりたがった猫』東京公演概要
公演日程: 7月23日(土)~8月28日(日)
会 場: 自由劇場
問合せ: 劇団四季 ナビダイヤル 0570-008-110
公式HP:https://www.shiki.jp