音楽朗読劇「フェルメール・ブルー」開幕 8月6日2公演配信決定!!

音楽朗読劇「フェルメール・ブルー」上演中であるが、配信が8月6日昼、夜行われる。諏訪部順一、内田夕夜、重松千晴らが出演する予定。
昨年、田尾下哲による戯曲集「傑作誕生をめぐる物語三部作―フェルメール、モーツァルト、ベートーヴェン」が出版された。この3人に共通するのは、現代において画家、作曲家として名声を確立している芸術家であること。そして彼らの作品には普遍的な価値が認められているのは周知の通り。この3つの物語はその『価値』の誕生物語であると同時にその『価値』の普遍性を問いかける物語でもある。そしてこの三部作を順番に音楽朗読劇として上演していく。一回目は『フェルメール・ブルー』。17世紀のオランダ絵画黄金時代の画家・フェルメールの作品を贋作した20世紀に生きたオランダの画家ファン・メーヘレンの物語。批評家を欺き、ナチス・ドイツをも欺いた実在の画家でナチスにフェルメール作品を売り渡したとして戦犯裁判にかけられる。贋作であることを自白すれば、永遠の居場所を美術館の壁に定められた自作はゴミ箱へ、贋作であることを隠し通せば、自作は名画の誉を永遠のものとするが、売国奴として死刑は免れない。作品の名誉と自らの命を天秤にかけた画家の生き様を通して絵画の「価値」を問いかける。


重厚な音楽が響き渡る。ストーリーの出だしは1947年、アムステルダムの高等裁判所。被告はファン・メーヘレン。国宝のフェルメール作品『姦通の女』をナチス・ドイツに売り渡した、ということによって「国家反逆罪」に問われている。だが。メーヘレンはそれはフェルメールの作品ではなく、自分が描いたものと主張、傍聴席からは嘲笑の声。判事は「荒唐無稽」という。スクリーンにはその『姦通の女』が映し出される。判事は証明せよと言い、メーヘレンは「証明して見せましょう…私がこれから描くのは”フェルメールの新作”」と言い放つ。
時間が遡り、時は1922年、今から100年前だ。メーヘレンは17世紀の絵画の技術を持った画家として将来を嘱望されていた。だか、20世紀、絵画はいくつもの流れが湧き出した時代。アール・ヌーボー、フォーヴィスム、キュビスム、素朴派、未来派、ダダイスムetc.19世紀以前と比較すると、その動きは著しく激しかった。その只中、である。絶大な影響力のある批評家・アーブラハム・ブレディウスはメーヘレンの絵を鼻で笑う、フェルメール風の模写だと。メーヘレンは言う「フェルメールより後に生まれたからダメなのか、今、描き上げたばかりの作品は傑作にはにはなれないと?!」。ピカソが描くような絵を描けば、ピカソ風と言うブレディウス。何がなんでもメーヘレンを否定するブレディウス。そこに敢然と立ち向かおうとするメーヘレン。芸術の評価は、例えばスポーツのように、100m何秒で走れるか、のような明快なものではない。裁判に至るまでのメーヘレンの生き様、彼の信念、そして相棒とも言えるテオ。彼らにとっての宿敵、ブレディウス、だが、彼にもプライドがあり、信じるところがある。その考え方は相反する。その物語を声優が紡いでゆき、音楽が彩る。セットはほぼなく、椅子があるだけ。バックにスクリーン、時折、物語に登場する絵画が映し出される。時間が経てば”名画”なのか、著名な画家のサインがあれば価値が高まるのか、メーヘレンはそこに大いなる疑問を感じ、不条理と思う。そこに立ち向かう姿、執念、信念、そして戦後、「国家反逆罪」として裁判にかけられる数奇な運命、いや運命ではなく、自ら、その道を選び取った。テオはそんな彼のそばにいてフォローする。ラスト近くのメーヘレンの言葉、「この絵が名作であるかどうか、どうしてご自分の目で判断しないのですか?」と傍聴人や判事、そこに居合わせた人々に問いかけるが、実は客席に座っている観客にも問いかけている。当のメルフェール、借金に苦しみ、評価されなかった時代は彼の絵にデ・ホーホの署名さえ付け加えられていたとも言う。史実でも、証拠として法廷で「フェルメール風」の絵を描いてみせ、さらに一連の絵画に対しX線撮影などの最新の鑑定が行われる。その結果は…史実でも彼が売りさばいたフェルメールなどの絵とされてきた絵画が彼の手による贋作であることが証明された。このため、メーヘレンは売国奴から一転してナチス・ドイツを騙した英雄となった。
初日はメーヘレンを市川太一、ブレディウスは井上和彦、テオ、他は廣瀬大介、ジャック、他は安田陸矢。市川太一、メーヘレンの悔しさを熱く演じ、対するブレディウスの井上和彦は余裕綽綽、プライド高く、ちょっと好戦的なキャラでメーヘレンとのコントラストをつけていたのが印象的。8月6日の昼、夜は配信も用意されているので、例えばどちらかを劇場で観て、どちらかを配信で視聴するのも一興。音楽は時代を意識したものになっており、重厚な楽曲だけでなく、20世紀前半のジャージーな楽曲もあり、その時代の空気を演出する。時折映し出される絵画、そして照明。セットらしいものはなく、声優陣の声の演技だけで魅せる、本物志向な朗読劇。

<田尾下哲インタビュー記事>

田尾下哲 作・演出 音楽朗読劇「フェルメール・ブルー」インタビュー

<配役>
8月6日 12:30
ハン・ファン・メーヘレン
諏訪部順一
アーブラハム・ブレディウス
内田夕夜
テオ・ファン・ウェインハールデン 他
汐谷文康
ジャック 他
土田玲央

8月6日 18:30
ハン・ファン・メーヘレン
重松千晴
アーブラハム・ブレディウス
内田夕夜 ※キャスト変更になり、202208052100修正。
テオ・ファン・ウェインハールデン 他
中澤まさとも
ジャック 他
土田玲央

戯曲集「傑作誕生をめぐる物語三部作―フェルメール、モーツァルト、ベートーヴェン」
創成社公式HP:https://www.books-sosei.com/book/60059.html

公演概要
2022年8月2日(火)〜7日(日) TOKYO FMホール
作・演出:田尾下哲
演出:保科由里子
音楽:茂野雅道
産学連携作品
公式HP:https://vermeer.rodokugeki.jp