山口乃々華,奥村佳恵,和田琢磨出演 新作ミュージカル『SERI〜ひとつのいのち』取材会レポ&ビジュアル公開

“多様性の暗闇に光を当てる“がテーマの conSept の新作ミュージカル『SERI〜ひとつのいのち』が東京と大阪にて上演することになった。
conSeptとしては初の大阪公演。本作品では、母であり N.Yで働くキャリアウーマンとしての倉本美香氏本人の視点から8年間のお話が綴られた『未完の贈り物(2012年刊)』を原作とし、その千璃自身が感じたかも知れない事に想像を巡らせ、千璃とその 母・美香、父・丈晴の親子3人を通して、人と人が共感し共存するということの本質について問いかけていく。
タイトルロールの千璃役には E-girlsを経て、活躍の幅を広げている山口乃々華。目が見えず話すこともできない千璃を、得意とする身体能力を最大限に活かしどう表現するのか。千璃の母・美香を演じるのは蜷川幸雄氏に見出され最近では『LUNGS』で好評を得たことが記憶に新しい奥村佳恵。そして女性二人を支える父・丈晴役には主に 2.5次元作品で活躍する和田琢磨が、自身初となる父親役にチャレンジ。


クリエイター陣は、近年は『フィスト・オブ・ノーススター ~北斗の拳~』『銀河鉄道999 THE MUSICAL』などの脚本でも注目を浴びる高橋亜子がconSeptのオリジナル作品に初参加。その脚本に音楽で寄り添うのは、conSeptのオリジナル作『いつか〜one fine day』『GREY』で観客だけでなく評論家からも高い評価を得た桑原まこ。そして、これまでconSept作品に振付家として参加してきた「泥棒対策ライト」の下司尚実が自身初となるミュージカルの演出に挑戦。なお、HPにてPV公開。

都内某所で取材会が行われた。出席したのは、山口乃々華、奥村佳恵、和田琢磨。

――役の印象について、またアプローチについて。

和田:人生で経験がない父親役、夫役ですが、実年齢としてはちょうど良い年齢ではあります。役作りについては、自分でどう作っていこうかというよりも奥村さんと色々吸収して、それに素直に反応して役を作っていけたら。彼らに起きた出来事は非日常的ではありますが、技術的なことはさておき、自分が経験してきたことや感受性を広げていければ難しくはないと思います。

山口:誕生から学校に入る6歳までを主に演じます。私は目は見えているし、言葉もわかる、普通の女子として育ってきたので、目が見えない状況は簡単には理解はしがたい。でも考えてみたらそれが主人公の千璃にとっては当たり前で。伝える手段は私達よりも少ないかもしれないけれど、もしかしたら、彼女はもっと感情が豊かに動いているかもしれない…と思いました。そういう感性みたいなものを体で覚えていきたいです。

奥村:美香の感情の幅がすごく大きく描かれていて。役作りというよりも、その感情の高ぶりをそのまま歌にしているところがかなりあるので、音程をしっかりとって。音楽の力はすごく大きいので逆に引っ張られすぎずに、バランスをとりながらやっていきたいなと思います。

――お互いの印象を。

和田:山口さんは今回登場人物の中でいちばん難しい役どころだろうなって思います。どこまで何ができるんだろうか、共演したうえでワクワクするようになればいいなと。奥村さんとは撮影の時に初めてお会いしたのですが、クールビューティーな人なのかな?と思ったら、すごくニコニコ笑っていらっしゃるので、そのギャップがすごくあって。大阪でも記者会見をやらせていただいきまして、受け答えする中にも印象的な言葉がたくさんあって、夫婦役をやるのがすごく楽しみになってきました。いい夫婦感を作れそうな気がします。

山口:お二人とも目の奥が優しいなって思っていました。奥村さんは最初の印象はバシッとされているし、肌もすごくきれいで。お人形さんみたいで圧倒されていたんです。それなのにニコニコとお話してくださったりとか。それでキラキラっと笑ってくださるのであったかいというか、嬉しい気持ちになります。和田さんは丈晴さんと似ている、優しい中でも支える力、笑いをとってくださる楽しい方です(笑)。作品はシリアスですが、きっと本当の家族愛みたいな、そのくらい「何か強く温かいものが生まれるんじゃないかな?」と楽しみにしています。

奥村:和田さんはおおらかな方ですよね。顔面だけ見ていると「鼻にかけているんだろうな」って(一同、大笑)思ってしまっていた(笑)。でも全くそんなことはなく、人当たりもやわらかくて。おそらく、座組のクッションみたいになってくださるような優しい方。山口さんはピュアで、心が綺麗なんだろうなって。会話の中でも様々なものに対する反応がすごく素直。おそらく山口さんの中ではちゃんとこうしよう、しっかりしようというものがあるんだと思います。あとはシンプルに可愛いなと。仲良くしてほしいです(笑)。

――見どころ、伝えたいことは?

和田:いろいろな見方ができそうな作品ですよね。母親の方が観た時と男性の方が観た時…人によって印象が変わると思います。台本と音楽に素直に向き合って、どう感じていただけるのか私自身も楽しみです。台本の中でも一人で葛藤したり、夫婦で意見がすれ違ったりするシーンがあるんですけれど。そういったところは見ている方も日常とリンクする瞬間はあると思います。自分の役とも嘘がないように、向き合っていきたいなと。

山口:今回、私の役でいうと「実体」の時と「魂」の時の場面がありまして。「魂」の部分では身体表現を感情豊かに伝えられたらいいなと思います。伝えたいメッセージですが、物語の最後の方に行くと、これは「貴方の物語でもあるんだよ」っていうことでしょうか。辛い気持ちを乗り越えて素直な気持ちで安心して毎日を生きていられるのは、周りの人と愛して合っている、支え合っているからなんだよねっていうこと。私自身も精神的に揺らいでしまうのは人間関係とかで、本当に「そうだな」と感じていますね。誰かが支えてくれているから、普通にいられるような。そういうものを観ていただいたあとに特別な例ではなく、普通なんだよ、ということをメッセージとして伝えられたらな、と思っています。

奥村:芝居、生っぽさ、リアルの中でやっているシーン、歌、いろんな要素があります。会話の部分の芝居もおそらく、そのまま誇張もなくリアルにやっていくのだと思っています。歌のシーンは音楽にあわせ、普通に喋っているのとは違う響き方でお客様に届くシーンになっていくかと思います。なので、いろんな質感のシーンが埋め込まれている作品になるのかな。シーンごとにいろんな動き方があると思いますし、楽しんでもらえたらと思っています。作品を通してのメッセージについては乃々華ちゃんが言ってくれたことが、大きなメッセージになるのは間違いないのですが、美香としては、役として逃げないということが一つ。途方もないことに押しつぶされそうになっても、逃げずに戦い続けることで得られる痛みと温かさがある、負けないという気持ちがさらに一つ、役のメッセージとしてはあるのかなと思っています。

――資料を拝見しますと楽曲が20曲以上、また、ミュージカルとドラマ、フィフティフィフティで、曲が多いということと、ドラマを重視すること、この二つの要素があるわけですが、台本を読んだ印象とそのバランスを自分の中でどうやって取ろうかということについてお願いいたします。

和田:素晴らしいミュージカルはたくさんありますが、自分はミュージカルへの出演は多くありません。とはいえ会話だけのシーン、歌うシーン、その質感みたいなものを育てるのが面白いなと。
今回は楽器も生演奏ですが、例えば『レ・ミゼラブル』のように何年も何回もたくさんの方がやっている作品ではない。なので、もちろん約束のある中で、自分の中でトライ&エラーのようにどんどん、ずっと掘り下げていけば、観たことのない作品になるんじゃないかなと。ハードルはもちろん高いですが、自分自身それに負けないように、役者、演出ふくめ同じ方向に深く深く掘り下げていったら、面白い作品になるんじゃないかなという印象です。

山口:できあがった曲を聞かせていただいたんですが、比較的明るい雰囲気でした。その一方、美香さんが悩むシーンで使われる曲とかとのギャップが大きくて、心に届きます。私自身はこの作品の中でほぼ言葉を発しません。ドラマの部分では身体表現が中心になっていくと思うんですが、本当に多様な表現で、みせられる部分があるように。言葉を使わずともみんなが共感できるようなものにしたい。目でもわかるし、耳でもわかるし、言葉で理解もできるし、心にも届くし。きっといろんな形、音楽、いろんな響きで届けられることができる、いろんな方向から投げかけられる作品になるんじゃないかなと。

奥村:曲が多い、ダンスも多い、個人的にはミュージカル、自分がここまで歌うようなミュージカルは今までなかったので、自分の中では挑戦です。あまりミュージカルを見慣れてない人にとって「お、歌うんだ!」とかって感じる方は多いと思うんですよ。私自身も「歌い出したよ!」とか(笑)思っちゃうことがあるのですが。そうなりたくないので、いかに(芝居から)歌に繋げていく、そこに違和感を感じさせずに、「歌になってた、気がついたら」と思ってもらえるくらい、シーンの中で、日常生活の中にうまく溶け込んで、そのまま歌に入れたらいいなと。それも自分の努力次第でもあるので、一生懸命練習したいと思います。

――体力作りについて。

奥村:最近暑すぎてエアコンはガンガンにかけますよね。でももう少し涼しくなったらクーラー止めたいです、喉のケアもしたいですから。体力づくりというよりも、歌に支障をきたさないよう、気をつけたいですね。

山口:私は、今回身体表現をさせていただく中で、体力をすごく使うと思うのでダンスレッスンに通っていて。1日3時間くらい。なるべく動ける体を作りたいです。

和田:舞台で身体を動かすことが多いので、特別に気をつけていることはないのですが、でも今年に入ってパーソナルジムに行って個人レッスン、トレーニングを、身体を鍛えています。最近はめっきり筋トレにハマって。毎日腹筋をしています。たぶん作品の中では脱ぐことがないので、筋肉を見せることはほぼないですけどね(笑)。

――原作読みまして胸に刺さりました。実在のご家族が題材ですが、出演のお話が来た時、どんなお気持ちで決めましたか。

和田:今までも実在する方、した方をやらせていただいたことはありますが、それでいちいちビビってたら何もできない。だから台本に嘘がないよう、真摯に向き合いたいなと。アメリカで暮らしている日本人家族の話ですが、日本で暮らしている家族にも、家庭にも起こりうるような会話がたくさん散りばめられていて年齢的にもちょうどいい頃合いです。奥村さんと山口さんをはじめ、いろんな状況で真摯に向き合っていけば、自分の役とか、そのシーンで伝えたいことが浮かび上がっていくと思うので、嘘のないことを常に心がけたいです。

山口:私は、この作品のリーディングミュージカルを見させていただく機会があって、その時に結構心にズシンときてしまいました。今回奇跡的な巡り合わせでお話をいただきましたが、千璃はよくある障害ではなく、とても稀な障害だからこそ、難しいのでは、と思いました。だけど、二人の夫婦が諦めないでいてくれたから、二人の愛情を感じ、すごく希望も感じたんです。こういう「家族になりたいな」と正直に思いました。覚悟というか、責任感みたいなものも生まれました。

奥村:今も現存している家族、生きていらっしゃるというのは、いつものお芝居と比べると一つ、「圧」みたいなものを自分の中で感じ取れるんですよね。とはいえどんな作品にするにしても、お芝居をするのは私であって、私の身体で、私の声でお客様に届くものです。原作も読ませていただきましたんですが、(台本は)忠実に描かれているので、そこで描かれていることを観てくださっている方にもちゃんとお届けできるように、舞台の上で必死に生き抜きたいと思います。

あらすじ
ニューヨークで暮らす美香と丈晴は子供を授かった。千璃と名付けられた女の子。
初めての子供に未来への希望と夢に膨らむ二人だったが生まれた子供には両眼ともに眼球がなく、知的障害も抱えていた。絶望し途方にくれる夫婦。特に母である美香は自身を責め、周りの目を気にし、そして意思疎通がままならない我が娘に困惑し疲弊していく。
ある日、思い詰めた美香はマンションの屋上から千璃とともに身を投げようとするが、そのとき屋上から見下ろしたマンハッタンのある情景を耳にした千璃が笑う。初めて目にした娘の笑顔に触れ、“この子と生きていこう”と強く誓う美香。
しかし、その決心の先には終わりが見えない千璃の手術、夫婦のすれ違い、周囲の非難、法廷闘争・・・など想像を絶する難題が幾重にも待ち受けていた。

概要
conSept Musical Drama #7『SERI〜ひとつのいのち』
日程・会場:
東京
2022年10月6日(木)〜16日(日) 博品館劇場
大阪
2022年10月22日(土)〜23日(日)松下IMPホール
原作:倉本美香『未完の贈り物』
脚本・作詞:高橋亜子
作曲・音楽監督:桑原まこ
演出・振付:下司尚実
出演:
山口乃々華 奥村佳恵 和田琢磨
植本純米 小林タカ鹿 樋口麻美 辰巳智秋 内田靖子 長尾純子 小早川俊輔
演奏:桑原まこ(Key.)、成尾憲治(Gt.)、山口宗真(Reed)、平井麻奈美(Vc.)
アソシエイト・プロデューサー:川村徹也
プロデューサー:宋元燮
後援:一般社団法人未完の贈物 / 製作支援:杉本事務所
企画・製作:conSept / 主催:conSept、関西テレビ放送

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