奏劇 「ライフ・コンチェルト」 ある教誨師の物語〜死刑執行までのカウントダウン

ーー演劇の「劇」と演奏の「奏」から採った、 岩代太郎のビジョンの言葉=奏劇。 言葉以上に伝えられるものを創り出す。 俳優のセリフのみならず、表情や呼吸などで音楽と協奏、 言葉を超える表現を目指し、 シンプルに音楽と言葉が、歌う以上の描写を可能にする。 俳優と演奏家により岩代太郎の設計図が、具体的に立体化される、 21 世紀のワーグナー構想ーー

 

あゝ、荒野、などの映画音楽の作曲家として日本を代表する岩代太郎。国内のみならず世界で活躍し、映画・レッド・クリフや THE CROSSING(18 年 2 月公開)などで、ジョ ン・ウー監督の絶大な信頼を得ているが、そんな彼がこれまでの活動と一線を画し、新たなフィールドでクリエーションを行いたい、という想いのもとに、全編音楽を書きおろし、 今作品を上演することになった。

言葉では伝えきれないことを、音楽の力によって表現してゆく。台本に音楽スコアを融 合させて製作、演劇劇場とクラシックホールの両方で、作品の上演を目指そうというもの。ミュージカルやオペラにように歌であらわすのではなく、あくまで物語をベースに、 言葉と音楽で全体を構成してゆく。ストラヴィンスキーとラミューズが「兵士の物語」を 作ったように、また、R シュトラウスとテニスンが「イノック・アーデン」を作ったように。

まずは序曲で始めたい、と岩代は言う。つまり全体のテーマを凝縮した音楽で全編 をいったん冒頭で披露し、そのあとは、音楽と言葉が、進行を担っていく。そのため 岩代は、作曲はもちろんのこと、台本製作も共同で行うのだが、R・ワーグナーが思い描いた楽劇に続く、その先の形、それが奏劇という、あらたな呼称で実現していこうというもの。

<岩代太郎からのご挨拶>

多くのサウンドトラックを手掛けながら、時には台詞よりも雄弁に語る音楽の有様を 知り、新しい音楽の可能性を探求したいとの衝動を抱きました。台詞のように奏でられる 旋律、旋律のように語られる台詞。かつて「オペラ」の新しい可能性を探求した先に「楽劇」があったように「演奏」と「演 劇」の狭間で新しい可能性を探求したい。その想いから生まれた新しい舞台芸術のカタチ、そうげき を私は「奏劇」と名付けました。
どうぞ新しいクリエーションの息吹をご覧下さい。

岩代太郎

ささやかではあるけれど、 贅沢な時間と空間を楽しむステージ、、、 ミュージカルやオペラの先にあるもの。 「楽劇」誕生から 160 年、音楽と言葉を結ぶ 『奏劇』という新しいジャンルの誕生を!

〈あらすじ〉
死刑が確定したその日から、実際いつ死刑が執行されるのか、死刑囚本人も、 周りの者にも決して知らされることはない。それは何日も何日も待たされるこ ともあるという。教誨師は、そんな彼らの執行までの残された日々の中で向き 合い、語り合うという役目を担うのである。ベテラン教誨師の牧師・元村由紀 夫は、自分の後任に塩野智嗣という青年を選んだ。塩野は少年期、屈折してい て補導されたことがあった。その時心の支えとなったのが元村であり、今日牧 師として自分が在るのは元村あってのこと、と常に心の奥底で感謝の念を抱き 日々を過していた。そして何年か振りに元村との再会で教誨師の道に足を踏み 入れることになった。二人の前に大島玲子と古戸健治という死刑囚が現れる。 古戸は老夫婦宅に押し入り、強盗殺人を犯して死刑が確定していた。元村が古 戸を担当し、対話を重ねて来ていたが、大島玲子という新たな死刑囚を担当す ることになり、時間の都合で塩野が古戸と向き合うことになった。初めての教 誨。恐怖心と緊張ですっかり翻弄されてしまった塩野だったが、誠実に向き合 おうとする塩野の姿勢に、日々少しずつ心を開く古戸だった。一方、玲子は自 分の娘の同級生3人を殺し、切り刻んだ罪で死刑が確定していたが、対話のハ ードルが高く、元村は全身全霊で向き合っていった。玲子の娘は瑠璃という。 時折面会に来るので元村も塩野も何度か顔を合わせるようになる。元村は背中 を汗でびっしょりになりながらも玲子との対話を重ねたが、そんなある日、殺 人を犯した人間とはどうにも思えない、という感情が芽生え始めた。長年の経 験と勘だろうか。しかし、元村の体は病に冒されていて、ついに入院を余儀な くされた。と、ちょうどその頃、古戸の死刑が執行されることに。最期を見届 けた塩野。そして玲子に向き合う塩野。元村も亡くなってしまった今、彼の遺 志を受継いで玲子との対話と、娘・瑠璃との会話を重ねてゆくにつれ、恐るべ き事実に到達する。やはり、玲子は殺人を犯してはいなかったと確信する。し かし、時は待たず玲子の死刑執行が決まり、その日がやって来た。母の死を目 前に控えた娘と塩野は。

【概要】

奏劇「ライフ・コンチェルト」
ある教誨師の物語〜死刑執行までのカウントダウン

期間:2018 年 8 月 29 日(水)~9 月 3 日(月) 全 8 公演
会場:紀伊國屋ホール
企画・原作・音楽:岩代太郎
脚本:土城温美
演出:深作健太
出演:國村隼 高田翔(ジャニーズ Jr.) 黒川智花 大森博史 長谷川京子

演奏:岩代太郎/指揮・ピアノ

東京フィルハーモニー交響楽団のメンバーによる弦楽四重奏団

語り/染谷俊之(29 日、30 日、31 日、3 日の出演)、伊東健人(9 月 1 日 13;30 公演、2 日 13:30 公演の出演)、石川界人(9 月 1 日 17:30 公演の出演)

<クラシックホールでの公演予定>

奏劇「ライフ・コンチェルト」による番外編コンサート・一日限定開催決定!
公演概要 「ライフ・コンチェルト組曲〜弦楽オーケストラ・コンサート版」を戯曲風演出で!
日時:2018 年 9 月 17 日(月)14:00 開演
会場:紀尾井ホール
演奏:岩代太郎(指揮)、須川展也(サックス) 東京フィルハーモニー交響楽団による弦楽オーケストラ&ヴォイス(語り)他
トークセッションあり:紀伊国屋ホール公演出演者による(出演者未定)
公演情報:http://www.promax.co.jp/lifeconcerto/