劇団印象-indian elephant-第 29 回公演 『カレル・チャペックー水の足音―』上演

劇団印象-indian elephant-は、10月に東京芸術劇場シアターウエストにて、「国家と芸術家」シリーズの最終作となります、第29回公演「カレル・チャペックー水の足音―」を上演。

なぜ今、カレル・チャペックの評伝劇?
ナチスによるチェコ侵攻が迫る中、母国に留まり、自らの作品でファシズムと戦ったチャペック兄弟。今や、世界中で使われている「ロボット」という言葉を創り出した、カレル(弟)とヨゼフ(兄)のチャペック兄弟の半生を、チェコスロバキア共和 国(1918 年~1939 年)の誕生と消滅の様子と重ねながら描く。
世界各国で民族的対立が激化している現代においても、アクチュアルなテーマであ る、ナショナリズムを題材にした作品です。彼らの姿を通して、郷土愛とナショナリ ズムとは何か?という問いを、観客に投げかけていく。

チャペックが生きた時代のチェコとは?
1918 年、ハプスブルク帝国から解放され、チェコ民族が三百年ぶりの独立をした。トマーシュ・マサリク初代大統領の下、高度な民主主義とヒュー マニズムが推進される一方で、同国内には、少数派のドイツ語話者=ズデーテン・ドイツ人もおり、民族問題を抱えていた。
本作は、新しい“国民”のための文学をチェコ語で確立をしようとするカレル・ チャペックが、ドイツ語を母語とするドイツ系住民と対立する様子や、そのドイツ系住民がヒトラーの思想に絡め捕 られていく様子を、チャペックの代表作『山椒魚戦争』をモチーフに使いながら描く群像劇。カレルの他、兄で 画家・作家・舞台美術家のヨゼフ・チャペック。親友で軍医・作家のフランティシェク・ランゲル。恋人で女優のオル ガ・シャインプフルゴヴァー。そして、大統領トマーシュ・マサリクらが活躍します。周辺国が軒並み軍事独裁体制 に移行する中で、民主主義を貫き通した東欧で唯一の国、チェコスロバキア第一共和国。その時代に、もがき苦しみ ながらも、民主主義と平和を守ろうとした芸術家たちの姿を、是非、劇場で。

作・演出:鈴木アツトより
『ロボット(R.U.R.)』『山椒魚戦争』で知られるチェコの劇作家・小説家カレル・チャペックと、チェコスロバ キア共和国内に住む、ドイツ語話者たち(ズデーテン・ドイツ人)との関係を描きたいと思い、この物語を書い ている。
チェコスロバキア共和国は、第一次世界大戦中の 1918 年に、ハプスブルク(オーストリア)帝国の解体によっ て生まれた新しい国だった。しかし、新生の共和国は領域内に、様々な民族を抱え込んでいた。特に、ハプスブ ルク帝国時代に支配言語であったドイツ語の話者たちは、チェコ時代になって、二級市民扱いされたことによっ て不満を溜め、軋轢が生まれていった。その鬱屈は、二十年をかけて大きくなっていき、やがて、ドイツ語話者 が多く住むズデーテン地方をナチスドイツに割譲するという、ミュンヘン協定に繋がっていく。 同じ土地を故郷に持ちながら、母語が違うというだけで、分断されていく国民たち。文化は言語を通して生まれ、 育まれる。だからこそ人間は母語に誇りを持つ。しかし、同じ言葉を喋らない人々に対して不寛容になり、時に 恐怖心さえ持ってしまう。母語は、個人のアイデンティティーと分かち難く結びつき、“よそ者”を作り出す、人 間の原罪の一つだ。チャペック兄弟の人生を借りながら、この母語と国家をめぐる物語を届けたいと思う。

劇団印象「国家と芸術家」シリーズ
第二次世界大戦時に国家という枠組みに翻弄されたエーリヒ・ケストナー、藤田嗣治、 ジョージ・オーウェル、カレル・チャペックの四人に注目し、“自由”な視点や思想で作品を創り出す芸術家たちが、なぜ国家や国民によって“自由”が縛られるということが生じるのか、を描くシリーズ。

劇団印象-indian elephant- について
“印象”と書いて”いんぞう”と読む。劇作家・演出家の鈴木アツ トを中心に 2003 年に設立。「遊びは国境を越える」という 信念の元、”遊び”から生まれるイマジネーションによって、 言葉や文化の壁を越えて楽しめる作品を劇作し、観劇後、劇 場を出た観客の生活や目に映る日常の景色の印象をガラッ と変える舞台芸術の発信を目指している。

概要
日程・会場:2022年10月7日(金)~10月10日(祝)   東京芸術劇場シアターウエスト
作・演出:鈴木アツト
ドラマトゥルク:沈池娟(シム・ヂヨン)
出演
二條正士:カレル・チャペック
根本大介:ヨゼフ・チャペック
岡田篤弥:フランティシェク・ランゲル
今泉舞:オルガ・シャインプフルゴヴァー
山村茉梨乃*:アレナ・チャプコヴァー
岡崎さつき:ヤルミラ・チャプコヴァー
柳内佑介:ヤン・マサリク
井上一馬:トマーシュ・マサリク
勝田智子:ギルベアタ・ゼリガー
アンサンブル
河波哲平、佐藤慶太、佐藤勇輝、星野真央、堀慎太郎、松浦プリシラ亜梨紗
後援:チェコセンター東京
文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業
企画・主催:特定非営利活動法人 劇団印象 indian elephant