山口乃々華,奥村佳恵,和田琢磨主演 新作ミュージカル『SERI〜ひとつのいのち』開幕 そこにいることが愛おしい。

“多様性の暗闇に光を当てる“がテーマの conSept の新作ミュージカル『SERI〜ひとつのいのち』が開幕した。


タイトルロールの千璃役には E-girlsを経て、活躍の幅を広げている山口乃々華。千璃の母・美香を演じるのは蜷川幸雄氏に見出され最近では『LUNGS』で好評を得たことが記憶に新しい奥村佳恵。そして女性二人を支える父・丈晴役には主に 2.5次元作品で活躍する和田琢磨が、自身初となる父親役にチャレンジ。

本作品では、母であり N.Yで働くキャリアウーマンとしての倉本美香氏本人の視点から8年間のお話が綴られた『未完の贈り物(2012年刊)』を原作とし、その千璃自身が感じたかも知れない事に想像を巡らせ、千璃とその 母・美香、父・丈晴の親子3人を通して、人と人が共感し共存するということの本質について問いかけていく。

 

始まり方はユニーク、暗闇の中でさまざまな音がする。よく聞く日常の音。演奏者、俳優陣が1人、また1人と登場し、ストレッチをしたり、チューニングしたり、笑い合ったり、なんだか和やかなカンパニーの雰囲気、それから、始まる。
最初の曲はテーマソングとも言える「SERI 〜ひとつのいのち〜」。「まるであなたの歌だから♪」と歌い、「きっと果てしない愛だから♪」と歌う。そして俳優陣はそれぞれの役になる。

子供が生まれる、それは夫婦にとっては一大事であり、喜ばしいこと。ニューヨークで暮らす美香と丈晴は、ごく普通の夫婦と同じように子供が生まれるのを待ちわびていた。名前を考える、子供の将来を妄想する、学校へいく、成長する、反抗期を迎えて扱いにくくなるetc.そんなことを考える2人。そして、その時がやってくる、子供が生まれた。だが、産声がない、カメラを構えて子供の写真を撮ろうとする丈晴、「やめろ」と医師に言われる。

 

なんと、生まれた子供は両眼ともに眼球がなく、知的障害も。これからどうすればいいのか、でも愛する子供、いろいろ考えるが、疲弊していく。回想シーン、結婚披露宴、友人たちに祝福されて結婚した2人、前途洋々だった。現実は、千璃との毎日で疲れ切っていく美香。絶望したある日、自殺した友人のことをふと思い出し…。

 

 

千璃の笑った顔を見た美香、そこから変わっていく。娘の笑顔によって気付きを得る。そんなこんなの状況が多彩な楽曲とともに綴られていく。千璃は山口乃々華、美香を演じるのは奥村佳恵、その夫・丈晴は和田琢磨、この親子3人を中心に物語は進行する。無垢な千璃、天真爛漫、そんな彼女の存在が両親を始め、周囲を変えていく、もちろん千璃は、ただそこに存在しているだけ。だが、その存在そのものが、意義のあること、それは千璃だけでなく、生きとし生けるもの全て。

 

さまざまな困難に見舞われる美香と丈晴、すれ違いや考え方や感じ方の違いで諍いが起こったりもする。それでも立ち向かう姿に、周囲の人々も何かが変わっていく。セットは俳優陣が動かすが、ただ動かすだけではなく、それが一種のパフォーマンスにも見える。千璃はもちろん、セリフはほぼない、だが、ダンスで千璃を表現、身体能力の高い山口乃々華がエモーショナルに魅せる。美香役の奥村佳恵は悩み、傷つきながらもなんとか前へ進もうとする姿を好演、丈晴、お父さん役は初めて、という和田琢磨は心の温かさと素朴さを滲ませる。それ以外のキャストは様々な役を演じるのだが、歌唱力も高く、安定した演技、産科医を演じる植本純米、別のシーンでは丈晴の母を演じるのだが、ここでは笑いが。

 

千璃は確かに普通の人々には想像もつかない障害を抱えている、だが、不幸ではない。セリフにもあるが、幸せかどうかは他者が決めることではない。絵に描いたようなパッピーエンドではないし、かといって、もちろんバッドエンドではない。だが、観る人の心に何かが残る。

M14、「ハッピー・アンブレラ」という楽曲がある。「色とりどりのアンブレラ♪」「たとえ雨だって怖くないさ♪」、いろんな色、そしてアンブレラがあれば。原作名は『未完の贈り物』。未完だからいい、未完だから未来がある、未完だから愛おしい。そんな作品であった。
ライブ配信は10月8日と15日、22日、アーカイブもあり。Twitterキャンペーン、感想投稿への「1いいね」「1リツート」を1円に換算した金額を、千璃ちゃんを応援する「一般社団法人未完の贈り物」へ、主催者から寄付する。ハッシュタグは#SERIへの贈り物

 

<取材会の様子>

あらすじ
ニューヨークで暮らす美香と丈晴は子供を授かった。千璃と名付けられた女の子。 初めての子供に未来への希望と夢に膨らむ二人だったが生まれた子供には両眼ともに眼球がなく、知的障害も抱えていた。絶望し途方にくれる夫婦。特に母である美香は自身を責め、周りの目を気にし、そして意思疎通がままならない我が娘に困惑し疲弊していく。 ある日、思い詰めた美香はマンションの屋上から千璃とともに身を投げようとするが、そのとき屋上から見下ろしたマンハッタンのある情景を耳にした千璃が笑う。初めて目にした娘の笑顔に触れ、“この子と生きていこう”と強く誓う美香。 しかし、その決心の先には終わりが見えない千璃の手術、夫婦のすれ違い、周囲の非難、法廷闘争・・・など想像を絶する難題が幾重にも待ち受けていた。

概要
conSept Musical Drama #7『SERI〜ひとつのいのち』
日程 会場:
東京:2022年10月6日(木)〜16日(日) 博品館劇場
大阪:2022年10月22日(土)〜23日(日)松下IMPホール
原作:倉本美香『未完の贈り物』
脚本・作詞:高橋亜子
作曲・音楽監督:桑原まこ
演出・振付:下司尚実
出演:
山口乃々華 奥村佳恵 和田琢磨
植本純米 小林タカ鹿 樋口麻美 辰巳智秋 内田靖子 長尾純子 小早川俊輔
演奏:桑原まこ(Key.)、成尾憲治(Gt.)、山口宗真(Reed)、平井麻奈美(Vc.)
アソシエイト・プロデューサー:川村徹也
プロデューサー:宋元燮
後援:一般社団法人未完の贈物 / 製作支援:杉本事務所
企画・製作:conSept / 主催:conSept、関西テレビ放送

公式サイト:https://www.consept-s.com/seri/

撮影:オノデラカズオ
(C)2022,conSept LLC