新国立劇場演劇研修所 第16期生 試演会『燃ゆる暗闇にて』に挑戦

2020年入所の第16期生が8月の朗読劇『ひめゆり』をへて、試演会『燃ゆる暗闇にて』に臨む。

1949年初演の『ある階段の物語』で新しいスペイン演劇の幕開けとなるデビューを飾ったアントニオ・ブエロ・バリ ェホの本作は、翌50年に上演され、劇作家としての地位を確立した秀作。20世紀半ばのフランコ政権の圧政に反発する寓話としても捉えられ、近現代スペイン演劇史の中で重要な作品のひとつとして位置づけられている。
舞台は、ある盲学校。そこでは、杖を持たずに勉学やスポーツに励むという校長夫妻の教育方針のもと、 生徒たちは幸せで穏やかな学校生活を送っていた。そこに、白杖を持って歩く、転校生イグナシオがやってくる。彼は目が不自由なことに絶望し、目が見えることへの強烈な憧れを持っていたが、この学校に対する彼の反逆的な態度は、周りの生徒たちにも影響を及ぼし、学園内の人間関係も変化していく。
自由がなく抑圧された時代に書かれた本作は、無力感や敗北感にまみれた現状から抜け出そうと足掻く者と、現状の幸せを盲目的に受け入れている人々が対照的に描かれており、当時のスペイン情勢と無批判な市民たちへのバリェホの痛烈な批判が込められている。 盲目や苦悩の暗闇と可能性や希望の光の交差を描くことによって人間の普遍的な姿に深く斬り込んだこの作品を、2017年第11期生の試演会にて『ある階段の物語』を手がけた田中麻衣子の演出で。
稽古の様子

また稽古開始の前に「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」にて100%の暗闇の中を、視覚障がいのあるインストラクターに導かれながら白杖を片手に90分間探検。また、7月には、インスティトゥト・セルバンテス東京にて同文化部長ハビエル・フェルナンデスより20世紀半ばのスペインの政治情勢と、劇作家 アントニオ・ブエロ・バリェホについての特別講義を受けた。

ものがたり
守られた空間内で、杖を使わずに自由にふるまう教育方針の盲学校に、転校生イグナシオがやって くる。彼は目が見えないことを生徒たちに突きつけ、優等生カルロスと対立する。その影響は他の 生徒たちにも広がり、恋人同士のカルロスとホアナの関係にも変化が……。

2023年4月入所の第19期生を募集。
出願期間は2022年11月28日(月)~12月15日(木)郵送必着。
詳細は、新国立劇場演劇研修所ウェブサイトを。

概要
新国立劇場演劇研修所 第16期生試演会『燃ゆる暗闇にて』
日程・会場:2022年10月18日(火)〜10月23日(日)  新国立劇場
作:アントニオ・ブエロ・バリェホ (Antonio Buero Vallejo)
翻訳:佐竹謙一
演出:田中麻衣子
キャスト
新国立劇場演劇研修所 第16期生
伊海 実紗
越後 静月
岸 朱紗
笹原 翔太
都築 亮介
藤原 弥生
松尾 諒
宮津 侑生
安森 尚
米山 千陽
新国立劇場演劇研修所 修了生
林田航平(2012 年修了)
坂川慶成(2015 年修了)
神野幹暁(2022 年修了)
後援:スペイン大使館
協力:インスティトゥト・セルバンテス東京
演劇研修所長:宮田慶子
主催・制作:新国立劇場

新国立劇場演劇研修所ウェブサイト:https://www.nntt.jac.go.jp/dramastudio/

写真提供:新国立劇場
宣伝デザイン:荒巻まりの