ファミリーミュージカル『ジョン万次郎の夢』上演

劇団四季は創立70年を迎える。その記念公演として3月11日(土)~4月2日(日)、自由劇場(東京・竹芝)にてファミリーミュージカル『ジョン万次郎の夢』を上演。
2014年以来9年ぶりの上演となる。

『ジョン万次郎の夢』は、幕末、日本人で初めてアメリカへ渡ったとされ、日米の架け橋として幾多の業績を残した中濱万次郎(ジョン万次郎)の半生を描いた四季オリジナルのファミリーミュージカル。近代日本の大転換期に生き、持ち前の好奇心と不撓不屈の精神で未来を切り開いた万次郎。そんな彼の生き様は、グローバルな世界に生きる私たちに、大きな感動をもたらしてくれるはずだ。

劇団四季ファミリーミュージカルの歴史は、1964年『はだかの王様』までさかのぼり、半世紀以上にわたり「命の大切さ」、「愛と勇気の尊さ」、そして「友情と連帯の喜び」など、生きる上で大切なことをメッセージに織り込んだ作品を上演。
現在ファミリーミュージカルのレパートリーは36作を有し、四季創作活動の大きな柱の一つ。

本作は2020年に全国公演が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により全公演が中止となりました。3年の時を経て、満を持しての上演。また、奇しくも今年はジョン万次郎漂流180年の節目の年。4月29日(土・祝)からは全国各地を巡演。

万次郎は、1827年、現在の高知県土佐清水市中浜の貧しい魚師の家に次男として生まれ、9歳で父を亡くし、幼い頃から出稼ぎに出ていた万次郎。14歳の時、足摺岬で操業中に漂流し、奇跡的に南海の孤島・鳥島に漂着。143日後、米国の捕鯨船に奇跡的に救出されるものの、鎖国下の日本では、身柄の引き渡しもままならず、ハワイ経由で日本人として初めてアメリカ大陸に降り立つことに。
ここで万次郎は、「ジョン・マン」という愛称で可愛がられ、ホイットフィールド船長の厚意で、英語・数学・測量・航海及び造船学などを学び、トップの成績で卒業。さらに、3年4か月にわたる世界一周の旅で、捕鯨船の副船長としても活躍。行く先々の港で、「どうして日本人は遭難して困っている船乗りを助けないんだ」と詰問され続けた彼は、21歳の時にグアム島から、大恩人の船長に手紙を出す。-「私が日本を開港させて見せます。ジョン・万・日本人」-漂流から10年、24歳になった万次郎は、日本開国を想い、死を覚悟して鎖国日本に帰る決意をする。
1851年、ハワイを経て琉球に上陸。鎖国の掟を破った罪に問われ、長期間拷問を受けたが、その翌年、何とか故郷・中浜に帰り着き、母と再会。その後、万次郎は江戸で通訳も務めるなど、各地で講師としてアメリカの文化や世界の海での冒険を語り伝え、その努力が実り、33歳の時に勝海舟に請われて咸臨丸に乗り組み、再びアメリカの地を踏む。坂本龍馬ら多くの幕末の偉人も万次郎から聞いた世界観に影響を受けたと言われ、激動の幕末における影の重要人物であったと言える。
1853年、アメリカのペリー提督が日本に開国を要求すると、幕府に急遽、出頭を命じられた万次郎は、幕府直参として国家の難事に尽くすことに。万次郎の説得に、幕府は、二百余年にわたる祖法を破り、開国に踏み切る。「日米和親条約」締結に至るまでの万次郎の功績は計り知れないものがある。
1898年10月12日、万次郎は71歳、東京の地で、静かに生涯を終えました。
万次郎が得た思想や技術は、直接的、間接的問わず、当時の多くの若者たちに影響を与えたといわれ、あの坂本龍馬も、万次郎の体験を伝え聞き、開眼したと言われている。実際、劇中でも、多くの歴史の偉人たちが登場。薩摩藩当主として、万次郎を保護した恩人・島津斉彬、開国の父と言われる勝海舟、後に「学問のすゝめ」を著し、慶應義塾大学を創設する福沢諭吉など、彼らも万次郎と出会い、人生が変わっていきました。

音楽を手がけたのは、「津軽海峡冬景色」、「時の流れに身をまかせ」など多くのヒット曲を生み出した故・三木たかし氏。四季においても『夢から醒めた夢』、『ミュージカル李香蘭』をはじめとする「昭和の歴史三部作」など、数々のミュージカル作品でその才能を発揮。本作では、ダイナミックな音楽が作品にさらなる厚みを。
時代設定が江戸末期であり、歴史上の人物も多数登場するこの作品では、実に緻密な時代考証が行われ、数多くの文献を紐解き、漁師の生活や風俗、またこの時代特有のデザインや、髪型、着こなしなど、あらゆる要素を研究。
舞台装置にも創意工夫を、例えば、万次郎の乗る漁船が難破してしまう場面は、歌舞伎の伝統的手法である“浪布”と“浪衣”(浪布の下に入り、全身を使って波のうねりを表現する黒子)によって表現。“和”のアプローチで、荒々しい海原の様子を創り上げている。

ストーリー
第一幕
鎖国が続く幕末日本。土佐(現在の高知県)国の漁村に住む少年・万次郎は、ある日、仲間とともに初めての漁へと出発した。ところが、海が荒れ、船は難破。無人島に流れ着いてしまう。
絶望の淵に立つ万次郎たち。そんな彼らに手を差し伸べたのは、付近を航行していたアメリカの捕鯨船員だった。はじめは、聞いたことのない異国の言葉に戸惑うが、身振り手振りで交流。航海を共にする中で徐々に打ち解けていく。
皆からは、親しみを込めて、ジョン・マンと呼ばれるようになった。好奇心旺盛な万次郎は、異国へ興味が湧く。もっと知りたい―その意思は、彼に渡米を決意させていく。その後、万次郎はアメリカ東部の港町フェアヘブンに上陸。ホイットフィールド船長とその夫人が、彼の親代わりとなった。
現地で様々な学問を修め、刻々と動く「世界」の姿を知った万次郎だが、とある事件をきっかけに、いつまでも閉鎖的な態度を取ろうとする日本の行く末を案じるようになる。そして、自らが国を開く力になろうと、帰国の途に就くのだった。
第二幕
帰国した万次郎。しかし、アメリカの進んだ文明の話をしたところで、多くの役人達には一向に通じない。彼を理解し、保護した人物は、薩摩藩当主・島津斉彬だけだった。
そんな時分、日本中を揺るがす大事件が勃発する。黒船で来航したアメリカのペリー提督が、日本に開国を迫ったのだ。万次郎は、今こそ自分が役立つ時と、仲介を申し出るが、その希望は受け入れられなかった。
しばらくの後、私塾を開き、西洋の学問を教える彼の許へ、福沢諭吉と名乗る青年が訪ねてきた。曰く、幕臣 勝海舟が咸臨丸という船舶で、米国へ向かう。ついては同乗を願いたいという。積年の大志を遂げる機会と感じた万次郎は、その請願を受け入れ、再び米国へと向かう。
はたして彼は、日米の架け橋となるのか…。

概要
劇団四季ファミリーミュージカル『ジョン万次郎の夢』
日程・会場:2023年3月11日(土)~4月2日(日)   自由劇場(東京都港区海岸1-10-53)
予約 :  インターネットSHIKI ON-LINE TICKET http://489444.com 他
(24時間受付)
問合せ :  劇団四季 ナビダイヤル 0570-008-110
公式サイト:https://www.shiki.jp/

撮影:下坂敦俊