中村勘九郎&中村七之助登壇 御園座四月『陽春花形歌舞伎』取材会レポ「見た目のインパクトを楽しんでいただけたらいいな」(勘九郎)

御園座にて4月1日から22日まで『陽春花形歌舞伎』が上演される。
昼の部は、年齢、性格が異なる多彩な役柄の早替りが見どころの鶴屋南北作、於染久 松色読販『お染めの七役』を七之助丈が勤め、夜の部は、十八世中村勘三郎が三世實川延若より直伝され受け継がれてきた三役早替り、本水を使った立廻りなど、見せ場にあふれた『怪談乳房榎』を勘九郎丈が披露。
また、勘九郎丈、七之助丈は 2018 年に新開場した御園座に初お目見え。
2月も終わりに近づいた某日、都内で取材会が行われた。登壇したのは、中村勘九郎、中村七之助。
まず、主催の御園座より公演の説明があった。今回、初の試みとして学割を始める。当日券のみの販売になるが、2階席の各ランクを半額にするとのこと。例えばC席は通常3000円となるが、学割になると1500円になる。また、2018年に新しくなった御園座だが、この新しい御園座に中村勘九郎、中村七之助は初お目見え。
中村勘九郎は早速「新しくなった御園座に初めて立たせていただきます。襲名以来、11年ぶり御園座久しぶり、早替わり、私は3役で七之助は7役。自信を持って!」と挨拶。


続いて中村七之助は「ずっと、なぜか出てなかった、中村屋は名古屋にゆかりのあるところ、嬉しく思っています。話し合った結果、早替わり合戦になりました。1本ずつの見やすい形にしようと。いつも歌舞伎を楽しんでいらしゃる方はもちろん、新しいお客様にとって見やすくなっていますのでいつもより料金も安くなっているはずです。『御園座、行きたいけど、うーーん』と足踏みしていた方、是非来て頂けると!」とアピール。また中村七之助は「玉三郎のおじ様から手取り足取り教わりました。早替わりが注目されるけど、演じ分けが大事。『単なる衣装パレードになっちゃだめだよ』と。」と語る。

中村勘九郎は「子供の頃に父が演じていた姿を…子供の頃から憧れていた役です。家のシャワーがあれば、必ずやって。『いつか二人でやろう』と言って。憧れていた役を東京でもNYでもさせていただき、赤坂ACTシアターでも公演させていただきました。新鮮な気持ちで観ていただけると思います。初めてご覧になるお客様にはとても観やすいものになると思います。学割も!若い人たちに観るきっかけになる公演になれば」と語る。

御園座について中村勘九郎は、ルーツが尾張の出身ということで「名古屋、尾張は中村屋発祥の地であり、祖父(十七世勘三郎)は御園座でいい役をつけてもらって名古屋で育てられたと言っておりました」と語る。「いつも以上に力をもらえるような気がします。父も御園座で度々出演しておりました。久しぶりに伺えるのを楽しみにしています」また、なんでも、今回のためにエレベーターを作ったそう。中村七之助は「これからの演目にプラスになる」とコメント。まさに”進化”する劇場、というわけだ。また、御園座のエピソードとして「東京で公演をして、その後に舞踊公演を御園座で2日ほどやった時に、今でも覚えているのですが、10代だった頃、花道から出てきまして、僕がまだ何者だかもわからない頃で。振り返ったらお客様がすごい拍手で。もう幸せだったっていう…」と語る。
中村勘九郎は「この3役、前にやったのは6年前。一つ一つの役の理解、より濃く鮮明に描けるんじゃないかなと思っています。早替わりの技法、チラシにも書いてありますが(「三世實川延若より直伝されたる十八世中村勘三郎から習い覚えし」)、直伝で伝わっていく、とてもアナログ。そこも楽しみに」とコメント。またNY公演でのエピソード、2階でできなかったので新しい仕組みを作ったそう。

中村七之助は「喜多村緑郎さんと夫婦役ですが…OKしてくださって。夫婦関係を作るのはとても楽しみです」と語る。こちらも見どころの一つになりそう。中村勘九郎も喜多村緑郎については「早替わり、いくらこっちが早くやっても、その間を埋めるのは大変。でも緑郎さんは阿吽の呼吸がわかっていらっしゃる」と絶大な信頼を寄せる。また、演じ分けの心構えとしては「形です」と中村七之助。「『声で変えるな』と口酸っぱく言われました。出てきた時に『あ、この人はこういう人だ』っていう歩き方、首の傾け方などでわからせないといけない、と言われました」と語る。
また役については中村勘九郎は「正助は父がやるとコミカルで可愛らしい。それぞれの持ち味、自分にあったのをやればいい、役になりきろうと。自分は白いキャンパス、役の上にその色を塗れるような役者になりたいと追い求めていましたが、それだけではダメで、お客様は役を観にくるのはもちろんですが、役者を観にくる人が多い。『パッとでて来ればいいんだよ』と言われますが、苦手とするところ。最近はそれがすごく楽しくなってきた。自由っていうんでしょうか、できるのでは、と思います。経験と積み重ねじゃないかなと思いますね、40代になってこれからどんどん発信していけるんじゃないかな」と語る。また、子供たち、中村勘九郎の長男勘太郎、次男長三郎、2人とも今回の公演にも来るそう。「バージョンアップしたものをたくさん楽しんでほしい」と勘九郎。「勘太郎はいろんな本を読みふけってて、そこからいろんなヒントを出してくれるので頼もしいですね。僕の知らないことばっかり知ってる(笑)、びっくり」と笑顔で(パパの顔に)。中村七之助も「観てほしいですし、これから女形の機会も増えるかと思うので、勘太郎は今年中学生かな?あと3年で新春花形歌舞伎に出る歳に!いろんなジャンルの女形を見てほしいですね。お染とか、あと3年もしたらやるんじゃないでしょうか。僕も一生懸命にやります」と話した。

楽しみな御園座の公演、MCより「歌舞伎を難しいと思ってる方、観た事のない方へ」と注文。中村勘九郎は「昼夜ともに歌舞伎が持っているエンターテインメント性を色濃く持っている作品たちなので、見た目の華やかさもそうですが、ストーリーもそんなに考えなくても観られる作品でもあるので、見た目のインパクトを楽しんでいただけたらいいなと思います。女形だけでも、衣裳の美しさもありますし、装置の美しさも兼ね備えている、本当に春にぴったりの作品でございます。3人のキャラクターが目まぐるしく変わる、あとは立ち回りもありますし、見た目に楽しい作品に。これは最初に観ておいて損はない、4月ですし、お祝いも兼ねてきてくだされば。C席だったら学割だったら1500円、映画より安い!是非是非きていただきたい」と締めて会見は終了した。

概要
御園座四月『陽春花形歌舞伎』
2023年4月1日〜22日 御園座
昼の部 『お染めの七役』
夜の部 『怪談乳房榎』
出演:中村勘九郎 中村七之助 他
御園座公式サイト:https://www.misonoza.co.jp/