旺なつき&阿知波悟美 劇団NLT Musical「O.G.」場末のキャバレーで起こるミラクル。

2016年初演、旺なつきと阿知波悟美が「いつか二人で歌もある芝居をしてみたいね」と始まった「ミュージカルOG」、東京で開幕した。
開演前、前説は池田俊彦、役どころはキャバレー「ミラクル」のボーイ。楽しい前説で客席が温まる。ジャンケン大会もあったりして、始まる前から大いに盛り上がる。

舞台上はキャバレーの楽屋、昭和なキャバレーなので、かなり古い感じ。カレンダーが貼ってある。スミ子(旺なつき)登場、続いてカズエ(阿知波悟美)。スター歌手を目指して上京したものの、ずっと歌舞伎町のキャバレーの歌手。気が付いたら38年、それなりに歳を重ねた。すっぴん、ジャージ、おしゃれとはほど遠い。二人のやりとりがクスッと笑えて、客席からは頻繁に笑い声が。小ネタも満載。

ミュージカルなので、もちろん歌が入るのだが、内容がユーモアたっぷり、キャッチーなメロディ。そして何より描かれているキャラクターがリアル、当て書きされているので、キャラクターと本人の雰囲気が完璧にマッチ、ダンスも!阿知波悟美がムーンウォーク、二人で踊るシーンは、ちょっと宝塚チック(笑)、そして旺なつきの驚愕の柔軟性を披露、開脚180度で客席からどよめきが起こる。そんな二人が、ひょんなことでミラクルを起こす、というのが大体の流れ。

このミラクル、イマドキなミラクル、あれよあれよという間に、大ブレイク、人生何が起こるかわからない!そしてこの二人を温かく見守っているボーイの松尾、池田俊彦がいい味を出してくれる。この松尾もまた、夢を描いて上京、演歌歌手になりたいと思い描いていたが、お金のために始めたキャバレーのボーイ、こちらも気が付いたら勤続30年以上。ずっと二人を見守ってきた、そして同志の連帯感も。

とにかく、2人のパワーがすごいの一言に尽きる。笑いの中に哀愁、年齢を重ねた分だけ、深みがある。旺なつきは宝塚歌劇団入団年は1977年、阿知波悟美は1986年に『レ・ミゼラブル』初演キャストとしてマダム・テナルディエ役を演じている。キャラクターの年齢と本人たちの年齢は、ほぼ同じ。

ラストは、楽しいショータイム、客席はキャバレーの客席、虚と実の境目はない。ピアノの生演奏、二人の友情、想いがリアルに伝わる。夢と現実、そして奇跡、ノンストップの1時間45分、シンプルで秀逸なミュージカル。ずっと全国を回っての東京公演。最初は物語の舞台にもなっている新宿、小さな劇場(パイプ椅子を並べて客席80ぐらいだったそう)から始まり、評判を呼んで、なんと200回近く上演したそう。とにかく、また上演してほしい。O.G.はold girlの略、いつまでもgirl。

物語
ここは新宿・歌舞伎町に残る、最後のキャバレー。
昭和の残り香ただようこのお店「キャバレーミラクル」もあと一週間で閉店することが決まっていた。
スター歌手を夢見て上京し38年。
いまは、この店のシンガーとして歌い続けている2人の女性、スミ子(旺なつき)とカズエ(阿知波悟美)。
明日を夢見て、夢に敗れ、愛と幸せを求めながらも、ステージで生きる事を選んできた彼女たち。
いま、場末の歌手人生が終わろうとしている。
そんな彼女たちに起こった『ミラクル』。それは‥‥?

概要
劇団NLT Musical「O.G.」
日程・会場:2023年4月11日(火)、12日(水) 博品館劇場
脚本・作曲:まき りか
演出:本藤起久子
美術:根来美咲
照明:奥田賢太
音響:佐藤日出夫
衣裳:天野桃子
振付:大原晶子
歌唱指導:安部誠司
音楽監督:村井一帆
舞台監督:竹内一貴
制作:劇団NLT
企画:阿知波悟美
出演
旺 なつき
阿知波悟美
池田俊彦
金森 大(ピアノ)
公式サイト:http://www.nlt.co.jp/now/og/index.html
劇団NLT次回公演
「THE FOREIGNER」(ザ・フォーリナー)
日程・会場:2023年8月2日〜8月6日 池袋 シアターグリーン BOX in BOX
作:ラリー・シュー
翻訳:小田島恒志
演出:グレッグ・テール
出演:
海宝弘之 葛城ゆい 桑原一明 川崎敬一郎 大槻千草 小泉駿也 吉越千帆