『THE 北翔まつり』北翔海莉インタビュー

元宝塚歌劇団星組トップスター北翔海莉の芸能生活25周年を記念して、東京と大阪にて『THE 北翔まつり』が9月に開催。
感謝の気持ちを込めたスペシャル企画として、芝居とショーの2部構成で新たな北翔海莉の世界をお届けする。
共演には、元宝塚歌劇団・宙組出身、北翔と共に初舞台に立った同期の風莉じん(かざり・じん)、元宝塚歌劇団・宙組出身で北翔とは 縁の深い星吹彩翔ほしぶき・あやと)に加え、同じく元宝塚歌 劇団・雪組出身、退団後の舞台で北翔と何度も共演した亜聖樹(あせい・いつき)。 そして数々の舞台やドラマに出演する実力派俳優・小林功(こば やし・いさお)、劇団赤鬼など俳優のほか演出・脚本を手掛け幅広く活躍している川浪ナミヲ(カワナミ・ナミヲ)、さらに北翔 の伴侶であり「松竹新喜劇」の未来を担うメンバーとして活躍している藤山扇治郎(ふじやま・せんじろう)と、本作が初舞台でお披露目となる美治(よしはる)が出演。25年間に出演した懐かしい和物の作品より、芝居と数々の名曲を披露する。25周年を迎える北翔海莉さんのインタビューが実現した。

――25周年を振り返って。

北翔:本当に長い道のりでした。正直、あっという間という言葉ではなく、何度も何度も立ち止まりそうな試練もありましたし、それを経験するたびに、まさか25年も続けるとは思ってもなかったというのが正直なところですね。ここまで活動できたのも、やはり宝塚から変わらず応援してくれたファンの方々のおかげです。そういう方々への感謝祭みたいなものとして、この公演を企画しました。
 25周年なので(12月の)ディナーショーだけでも本来よかったんですけど、ディナーショーとは違ったものをひとつ、感謝祭としてやりたいなと思いました。また、私自身が歌劇団時代もそうだったのですが、卒業後も和物の公演が大変多く、主演公演も、卒業後も和物…着物を着る機会がすごく多いんです。そういう和物の名作はディナーショーで、意外と歌う機会がなかったんですよ。『これは今回、和物のショーを!』、っていうのがまず第一の目的。今までの25年間、自分の主演作品や思い出の名曲みたいなものを、全部和物のメドレーにして作ろうというところから企画がスタートしました。

――そういえば、和物ってこういう公演では珍しいですね。例えば、ブロードウェイミュージカルメドレーとかはよくありますけど。

北翔:そうなんですよね、どうしてもミュージカルに転びがちですし、やってるジャンルがそうなりますが、私は意外と和物の方が多かったりするから「これは逆に洋物のミュージカルは一切入れない、和物だけの世界観にしよう」と思い立って。だから着物しか着ないんです、今回は(笑)。

――それもまた新鮮な感じで。タイトルが「THE 北翔まつり」。

北翔:(このネーミングを考えたのは)私です(笑)。キラキラした横文字の題名も考えたんですけど、25年経つっていうことはですね、私を応援してくださるお客様も25年経ってるわけで(笑)。横文字ではなくファンの方たちが、絶対忘れない題名にしたいと(笑)。タイトルが出なくて「ほらほら、あれあれあれ」みたいにならない題名にしようと思ったの(笑)。 「THE 北翔まつり」なんて言ったら誰もが覚えているでしょう(笑)。そういう意味で、潔くこれにしました。

――まつり、っていったらうちわとか持っていきたくなりますよね。

北翔:感謝祭で、お祭り騒ぎするような内容になってます。そういう意味では本当に楽しんでいただける、ということで。こういう名前にしました。

――今回は2部構成で、一部がお芝居で、二部が和物のショー、見どころと共演の方々についてお願いいたします。

北翔:まず最初に、第二部から構成を考えたんですけど、ショーだけだったら面白くないな、と思って、お芝居も作ろうということになりました。
ここ何年間のコロナ禍、この題名の通り、まず健康でいて「またお会いしましょう」というのが合言葉になってたんじゃないかなというところから考えて、この題名が作品の名前として一番いいかなと思ったんですよね。元々「先づ健康」っていう演目は、すでにあるもので、松竹新喜劇のお話なんですが。私が宝塚の現役時代に松竹新喜劇が本当に好きで、よく見てた作品の一つです。
改めて自分が結婚して子供を育てていく立場になって、子供を育てる、イコール、自分もこうやって育ててもらったんだなっていう…「親孝行ってなんだろう」と考えた時に、この作品には色々なメッセージが込められているんですよね。いろいろ些細なことに気付けるヒントになるような脚本なんです。今の自分にとってもそうですし、皆さんにもよくある話で、うなずいてもらえるような、軽い気持ちで観られるような。「そうだなー」ってうなずいてお家に帰って、あったかい気持ちで家族に接してもらえるような内容にしたくて。それでこの作品を選びました。

――構えないで観るって感じですね。

北翔:そうですね。25周年だから、一番最高にかっこよくって美しくって、「夢の世界を」っていうのではなくて。「よくある話よね」っていう「でも本当にこういうことって大切よねって改めて気付かされたわ」って思って帰っていただけるような内容にしたくてこれにしました。

――共演の方々も元宝塚の方とか、風莉じんさん、星吹彩翔さん、亜聖樹さん。 

北翔:風莉じんさんは私と同期生で、彼女もおなじ25周年なので一緒に(笑)、ぜひということで。星吹彩翔さん、亜聖樹さんも卒業後にご縁がある関係で今回、声をかけさせていただいて。小林功さんは『蘭 ~緒方洪庵 浪華の事件帳~』という作品で、藤山扇治郎さんと共演させていただいてたんですが、そのとき一緒に出演されてたんです。その方にもご縁がありまして、和物するなら、やっぱりこういう役者さんがいないと困るなと、締めていただくポジションとして小林功さんには恐れながら声をかけさせていただきました。

――キャストの皆さん、顔ぶれがなんとなくアットホームで。

北翔:はい。今回の一番のミソはですね、私と扇治郎さんとは夫婦の役じゃないというところ。親子の役をやるんですよ、私がおじいさんで、その息子が扇治郎さん(笑)。

――(笑)。

北翔:そこが今回一番の見どころじゃないかなと(笑)。

――そこはポイントですね。

北翔:はい(笑)。楽しんでもらえたら。

――それでは、最後に締めを。

北翔:今回は本当に、応援してくださるファンの方々に対して、感謝の気持ちで、公演をお届けしようと思っておりますが、私のファンでない方にも……例えば結婚して出産した後、今まで培ってきたものを諦めてしまう方って多いと思うんです。
その環境にもよりますが、もし少し余裕ができて、もう一度自分が培ってきたものに再びチャレンジする機会があったとしたら、チャレンジするべきだよ、という一人のメッセンジャーとして私は舞台に立ちたいと思っているんです。
何よりも自分が25年間、歩んできて今回一つの節目で少し休憩に入るのかなと予想していたんです。でもたくさんのお手紙をいただいて、「みっちゃんの公演を生きがいに自分がまず健康でいられて、必ず劇場に行くんだ」「みっちゃんに会うために頑張って資格を取った」とか。“北翔海莉”の存在を生きがいに目標にしてくださる方が一人でもいる限り、私はやっぱり舞台を降りちゃいけないんだな、ということにあらためて気付かされました。
何よりも旦那さんである扇治郎さんが「みっちゃんは絶対に舞台辞めちゃダメだ。みっちゃんの舞台を僕はずっと観続けていたいから、辞めないでね」っていうことを言っていただけたので。
このありがたい関係に甘えずにしっかり、これからもあゆみを続ける、という意味で、新しい、今の、子供も産んだ私が、まだ今もなお、進化し続ける姿を観ていただきたいなと思っています。
最近、70過ぎのうちの父が、「孫が20歳になるまでは俺も生きてないなー」って言うんですよ。まあ、孫がいるおじいさんならみんな言っているようなことだと思いますけど(笑)。でも、松竹新喜劇に高田次郎さんと言う90歳を超えた役者さんがいらっしゃいますし、歌舞伎の世界にもいらっしゃるわけで。そういう方を観た後、「90過ぎてもこれだけ元気に人前に立てるなら、自分も頑張れるんじゃないかな」なんてことを父が洩らしたんです。
「あ、舞台役者ってそれだけ人に勇気を与えられる、夢を与えることができる職業なんだ」って、今までわかってたはずなのにちょっと忘れてかけていた自分がいました。そういう部分で何か夢や勇気を与えられる存在、メッセンジャーでありたいということをもう一度、自分の中に一つ芯を持って、今回挑みたいなと思っています。

――今年25周年、次は50周年(笑)。

北翔:そうですね(笑)。もしかしたら、5年刻みにやるかもしれませんが、ちょこちょこと(笑)。今回、息子も初お目見えで出演させていただくんですけど、舞台に立つということは一人の立派なプロ。とはいえ、上手くいくなんて思ってないですが(笑)。失敗しても、そういういろいろな経験を自分の人生の中に刻んでほしいと思いますね。

ーーありがとうございます。公演を楽しみにしています。

内容
1部
茂林寺文福 作 「先づ健康」 補綴/川浪ナミヲ 演出/帆足敏 協力:松竹株式会社
2部
「THE 北翔まつり」 構成・演出/北翔海莉 振付/山村友五郎
これまでの 25 年間に出演した懐かしい和物の作品より、数々の名曲をお届け。

概要
『THE 北翔まつり』
日程・会場
大阪:2023年9月14日(木)18:30、9月15日(金)12:00/16:00 国立文楽劇場
東京:2023年9月23日(土・祝)13:00/17:00、9月24日(日)12:00/16:00 浅草公会堂
問合:info@artistjapan.co.jp
主催・製作:北翔海莉事務所

WEB:https://hokushokairi.co.jp

撮影:金丸雅代
取材:高浩美
構成協力:佐藤たかし