歌劇「明治東亰恋伽~月虹の婚約者~」月の輝く夜に舞い降りた真実の愛と自己革命

「明治東亰恋伽」は、携帯用恋愛音声ドラマゲームとしてスタートし、「明治」を舞台に作り込まれた世界観と魅力的なキャラターが紡ぐ、緻密なストーリーが絶大なる支持を集め、累計プレイヤーは30万人を超え、発売イベントのチケットは即完売。PlayStation Portable®版・ PlayStation®Vita版の発売、劇場アニメ化に続いて、新作アプリの配信、 TVアニメ化、実写ドラマ&映画化が決定しているなど、今後も様々な展開が期待されている人気作品。 前作の歌劇「明治東亰恋伽~朧月の黒き猫~」は2016年に上演され、大好評を博し、それを受けての今回の舞台化である。そして2017年、再びの上演、サブタイトルは『月虹の婚約者』。
幕開きに響く時計の音、「よってらっしゃい、みてらっしゃい」と威勢の良い声が響く。そして「始まり、始まり〜」。最初のシーンは森鴎外(荒木宏文)とエリスの別れのシーン、時は明治、今でこそ国際結婚はもはや珍しくもないが、当時は珍しいどころか家族は猛反対、国境を越えて、の恋愛は成就しないのだ。エリスの姿は消え、代わりにちょっと小柄な少女が・・・・・・「ここは、どこ?」少女の名は綾月芽衣(鈴木桃子)、自称・奇術師、チャーリー(安里勇哉)の手によって明治時代にタイムスリップ、しかも場所は鹿鳴館、パーティーの真っ最中であった。

教科書でしかお目にかかったことのない歴史上の偉人(文学史系)が次々と・・・・・・菱田春草(橋本祥平)、川上音二郎(遊馬晃祐)、泉鏡花(北川尚弥)、小泉八雲(汐崎アイル)、横山大観(橘龍丸)、なかなか『豪華』な文人たち。訳のわからない状況で、しかも彼らから見たらJKの制服姿は奇異な格好、早速警官の藤田五郎(吉岡佑)に捕まるが、そんな彼女を救ったのは何と森鴎外(荒木宏文)。森鴎外といえば「舞姫」「高瀬舟」など多くの小説を発表し、しかも翻訳家であり、陸軍軍医であり、しかも官僚(高等官一等)、とにかく大変な人物。さらに婚約者のフリをして欲しいと言われ・・・・・。

このとんでもない状況で綾月芽衣は懸命に生きる。カルチャーショックなことが次々に起こる。例えば、うっかり「500円もあれば牛丼が・・・・・」と言ったら「500円!」と卒倒しそうな偉人たち。そんな笑えるネタをところどころ挟みつつ、進行する。婚約者のフリとはいえ、優しい鴎外にフレンドリーで面白可笑しい偉人たち。次第に鴎外に惹かれていくが、鴎外もまた芽衣に心傾いていく。
森鴎外と綾月芽衣の恋愛を主軸にし、泉鏡花と川上音二郎のサイドストーリーもクロスさせていく。そして物語は史実も絡ませて実と虚のハーモニーを奏でる。例えば、鴎外は実際にドイツに行った時にドイツ人女性と親しくなり、それをベースにして書かれたのが「舞姫」で、ヒロインの名はエリスである。また川上音二郎は泉鏡花の作品を実際に舞台化している。そういった史実もちょっと押さえておくと興味もわいてくる。そのほか、小泉八雲のノリの良さ、菱田春草と横山大観のコンビ、宴会のシーンで皆、酔っ払うシーンがあるが、とりわけ横山大観は日本酒が好きで、特に広島の酔心がお気に入りであった。

満月の夜にやってきた芽衣は、次の満月に自ら望めば元の世界に戻れるとチャーリーに言われる。しかし、彼女の心は揺れ動く。そしてクライマックス、さあ、どうする?というのがだいたいの流れ。

ストーリー展開はとにかくスピーディ、そして歌とダンス、前半は音楽が途切れない印象で、特にヒロインが迷い込んだ鹿鳴館のシーンでは3拍子のワルツ風の楽曲、雰囲気も優雅に。また物の怪をアンサンブル陣がダンスで表現するのだが、仮面などで不気味さを醸し出す。初演から引き続きのキャスト陣、荒木宏文の森鴎外はどこまでも紳士で生まれの品の良さも醸し出し、恋愛に生きるキャラクターを好演、綾月芽衣演じる鈴木桃子はちょっと自分に自信が持てない、そして次々に自分の身に降りかかるアンビリーバボ!な出来事に体当たりでぶつかるヒロインを演じて共感できる。鴎外と芽衣の心の変化、彼らを取り巻く周囲の偉人たちもまた芽衣が気になる様子、各キャラクターに見せ場があり、心の変化も細かく描写、セリフも印象的なものが多く、心に刺さる。

単なる恋愛、「BOY MEETS GIRL」ではなく、恋愛という体験を通して自己革命を起こす。それヒロインのみならず、鴎外も、だ。「ここに来て鴎外さんに会って変わりたいと思った」と言うヒロイン。恋愛はもたれ合いな関係ではないし、単なる甘いものでもない。恋愛体験から様々なことを学び、気づきを得る。そして「BOY MEETS GIRL」の典型的な物語シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」、そして龍神伝説がベースになっている泉鏡花の「夜叉ヶ池」をスパイス的に使い、物語に奥行きを与える。鴎外と芽衣が最後はどうなったか、というのは野暮。彼らは自分の意思で道を切り開き、未来を変える。輝く満月の夜には恋のマジックがある。

なお、ゲネプロの前に囲み会見があった。登壇したのは荒木宏文(は森鴎外)、鈴木桃子(綾月芽衣)、橋本祥平(菱田春草)、遊馬晃祐(川上音二郎)、北川尚弥(泉鏡花)、吉岡佑(藤田五郎)、汐崎アイル(小泉八雲)、橘龍 丸(横山大観)。初参加は橘龍 丸、後のメンバーは初演からの続投。すでに大阪公演も終了し、作品の確かな手応えも感じているキャストの面々。最初からこなれた感じで和気あいあいな雰囲気。吉岡佑は「愛あるお客様で盛り上がりました。笑顔でパワーアップを!」と元気良く。汐崎アイルは「役者人生の中で大阪初日、東京で千秋楽っていうのは初めて」と語る。橋本祥平は「2年前からレベルアップしています」と胸を張る。荒木宏文は「すでに3公演行っていますので、より良い形を模索しています。舞台は生もの、より良いものを、より良い作品を」とコメント。鈴木桃子は初演の頃は不安があったと言うが「このお芝居を温かく受け入れてくださる、大切に演じたい」とコメント。北川尚弥は「毎回、新鮮に!」とコメント。遊馬晃祐は「プレッシャーを感じていましたが、盛り上がって・・・・・」と語る。大阪公演はかなり好評だった様子が窺える。橘龍 丸は「愛が溢れていた!」とコメント。荒木宏文は公演が決まった時の感想を聞かれて「前回よりもパワーアップしたものを届けたいというプレッシャーがありました」と座長ならではの重圧もあったそう。「新しいものを作っていかなければならない、スタッフさんの意気込みを感じました。どこまでできるかわからないけどやるっきゃない。このカンパニーの座長ができることの幸せ、始まってからは大きなプレッシャーもなく幸せです」と語った。

最後に一人ずつ「日々、進化していく舞台です。最高のものを!」(橘龍 丸)、「最後までお客様と一緒に!」(遊馬晃祐)、「パワーアップしています」(北川尚弥)、「みんなと一緒に楽しんで!」(鈴木桃子)、「2年前の初演からあっという間!新しいキャストも加わってパワーアップ!」(橋本祥平)、「みんなで作り上げた『めいこい』です!」(汐崎アイル)、「2年ぶりで・・・・・公演ができたので!」(吉岡佑)「また森鴎外ができるのが嬉しい。恋にどっぷりはまるのはなかなかできないいこと。人生の中での恋愛が伝えられるように!」(荒木宏文)としめて会見は終了した。

煌々と輝く満月の夜に舞い降りた恋物語、浪漫溢れるステージ、お見逃しなく!

<あらすじ>

高校生の綾月芽衣(鈴木桃子)は、赤い満月の夜に出会った自称・奇術師、チャーリー(安里勇哉)の手によって明治時代へタイムスリップしてしまう。現代の記憶もなく、気が付くと鹿鳴館のパーティーに 迷い込んでしまった芽衣。華やかなパーティーには菱田春草(橋本祥平)、川上音二郎(遊馬晃祐)、泉鏡花(北川尚弥)、小泉八雲(汐崎アイル)、横山大観(橘龍丸)といった歴史上の偉人達が列席し ていた。自分の状況を呑み込めないまま会場を彷徨っていた芽衣は警備を担当していた警察官の藤田五郎(吉岡佑)から尋問を受けてしまう。窮地に立たされた芽衣を『自分の親戚だ』と偽り救ってく れたのは森鴎外(荒木宏文)だった。
しばらくの間、森邸で過ごすことになった芽衣は鴎外から婚約者のフリをして欲しいと頼まれる。助けてもらった恩を返すため、偽婚約者としての日々を送る芽衣。 芝居だと分かってはいても心優しい鴎外にだんだんと惹かれていく。しかし、鴎外にはエリスという忘れられない女性がいることを知ってしまい……。

東京公演 8月25日開幕!歌劇「明治東亰恋伽~月虹の婚約者~」 ハンカチ必須の王道ラブストーリー、大阪公演、好評にて終幕!

【概要】
作品名:歌劇「明治東亰恋伽~月虹の婚約者~」
公演期間:大阪:2018/8/18(土)~8/19(日) 森ノ宮ピロティホール
東京:2018/8/25(土)-9/2(日)  シアター1010
全14公演
原作:MAGES.「明治東亰恋伽」
演出:吉谷光太郎
脚本:桜木さやか

キャスト: 森鴎外役:荒木宏文
綾月芽衣役:鈴木桃子、菱田春草役:橋本祥平、川上音二郎役:遊 馬晃祐、泉鏡花役:北川尚弥、
藤田五郎役:吉岡佑、小泉八雲役:汐崎アイル、横山大観役:橘龍 丸
チャーリー役(声の出演) :安里勇哉
主催:歌劇「明治東亰恋伽」製作委員会
公式HP :http://kageki-meikoi.com/
公式Twitter:@KagekiMeikoi
コピーライト:© MAGES./LOVE&ART  © 歌劇「明治東亰恋伽」製作委員会

文:Hiromi Koh