ミュージカル『東京ローズ』新国立劇場で日本初上演。フルオーディションで、飯野めぐみ, シルビア・グラブ, 鈴木瑛美子, 原田真絢, 森加織, 山本咲希_ 小川絵梨子&藤田俊太郎 コメントも。

新国立劇場のフルオーディション企画第6弾。初のミュージカル!
戦時中、米兵から「東京ローズ」と呼ばれた謎の女性アナウンサーのひとり、アイバ・トグリ(戸栗郁子)の物語。イギリスのBURNT LEMON THEATREの2019年の話題作を藤田俊太郎の演出により日本初演!

太平洋戦争時、米兵の士気を失わせるため、日本が放送したプロパガンダ放送「ゼロ・アワー」。正体不明の女性アナウンサーたちは、「東京ローズ」という愛称で呼ばれ、米兵のラジオアイドルともいえる存在に。終戦後、アメリカ人記者たちの「東京ローズ」の正体探しが加熱する中、ある一人の女性が名乗り出た。米国籍、日系二世のアイバ・トグリ(戸栗郁子)。
本作はこのアイバ・トグリが戦中戦後の歴史の波に飲み込まれながら、アメリカと日本、二つの祖国にアイデンティティを引き裂かれ、自身の権利を奪われながらも、決してあきらめることなく闘う姿を、女性6名のキャストによって描くミュージカル。
翻訳は新国立劇場 演劇芸術監督の小川絵梨子が手掛け、演出は新国立劇場では『東京ゴッドファーザーズ』 (2021年)で緻密な物語の世界観を丁寧に描き出した藤田俊太郎が担う。
`22年12月から始まったオーディションには936名の応募者がエントリー、二度にわたる映像審査を経て、1月下旬から2月初旬にかけて一次、二次選考を実施し、飯野めぐみ、シルビア・グラブ、鈴木瑛美子、原田真絢、森加織、山本咲希の6名が選ばれた。
今回の藤田による演出では、主人公アイバを6人がリレー式に演じる。そして、男と女、アメリカと日本、差別する側とされる側、裁く側と不当にも裁かれる側、相反する立場の役柄を 6 名全員で演じ分けていきます。耳に残るパワフルな楽曲、バンドの生演奏、そして圧倒的な歌唱力を誇る6名の歌声が、アイバ・トグリの物語を現代へと蘇らせる。

BURNT LEMON THEATRE は 2017年に活動を開始した英国の女性を中心メンバーとした演劇集団。”TOKYO ROSE” の作家キャラ・ボルドウィン、英国版の演出を手掛けたハンナ・ベンソンをはじめ、メンバーの多くが演出 と俳優、振付と俳優、作曲と俳優、など公演においては色々な役割を兼任しながら作品創作を行っている。 本国では、次代を担う演劇集団として、今最も注目を浴びている。
“TOKYO ROSE” は`19年にエディンバラ・フリンジで初演完売の BURNT LEMON THEATRE の代表作で。その年のUNTAPPED AWARD、Les Enfants Terribles Stepladder Award を受賞。ディベロップを重ねながら21年に英国内ツアーを行った。台本作詞はメンバーのメリー・ユーンとキャラ・ボルドウィン、作曲はウィリアム・パ トリック・ハリソンによる。日本軍が第二次世界大戦中におこなった連合国側向けプロパガンダ放送の女性アナウンサー「東京ローズ」として唯一知られているアイバ・トグリ(戸栗郁子)を描いた物語。

あらすじ
“Who is Tokyo Rose?”
アイバ・トグリ(戸栗郁子)は 1916 年にアメリカで生まれアメリカで育った日系二世。日本語の教育を受けることな く 1920~30 年代のアメリカで青春を過ごした。
叔母の見舞いのために 25 歳で来日し、すぐに帰国するはずが、時代は第二次世界大戦へと突入。アメリカへの 帰国も不可能となってしまう。そこでアイバは、母語の英語を生かし、タイピストと短波放送傍受の仕事に就く。 戦争によって起こる分断や、離散、別れ。多くの人々を襲った不幸がアイバ自身とその家族の身にも降りかかる。 やがてラジオ・トウキョウ放送「ゼロ・アワー」の女性アナウンサーとして原稿を読むことになったアイバ。彼女た ちをアメリカ兵たちは「東京ローズ」と呼んだ。 終戦後、アイバが行っていたことは、日本軍がおこなった連合国側向けプロパガンダ放送であったとされ、本国 アメリカに強制送還され、国家反逆罪で起訴されてしまう。 本国アメリカから、戦中日本の悪名高きラジオアナウンサー「東京ローズ」であった罪を問われることとなったアイバ。彼女は本当に罪人だったのか…?

翻訳:小川絵梨子より
『東京ローズ』は、BURNT LEMON THEATRE が制作したミュージカル作品です。今年の一月に BURNT LEMON THEATRE の劇作家、作曲家、演出家の方々にお会いする機会があり、この度の新国立劇場での 公演を大変喜んで下さっていました。また翻訳等で質問があればいつでもどうぞ、とあたたかく仰って下さり 大変にありがたく、心強く思っております。アメリカ国籍を持っていた『東京ローズ』の主人公は太平洋戦争 後に敵国に加担としたとして逮捕され、国家反逆罪で法廷に立たせられました。その後、有罪判決を受け 国籍を剥奪されますが、一方、日本で働いていた頃には敵性外国人と見做され、警察から圧力をかけられ ていたといいます。国家同士の戦争によって自らの存在を否定され、激しい人種的偏見によって二つの国 で尊厳を奪われた個人の物語。この『東京ローズ』は決して過去のものではなく、今の時代の物語でもあると思っております。

演出:藤田俊太郎より
新国立劇場フルオーディション企画第 6 弾。オーディションを通して、日々大きな喜びを感じました。歌唱映像で参加してくださった 936 名の歌声には魂、唯一無二の魅力がありました。全員とお会いすることは叶い ませんでしたが、対面での選考を共にした女優の演技者としての実力に心が熱くなりました。素晴らしい役 者の力、演劇の力をあらためて感じて震えるような気持ちです。 主人公の日系二世アイバ・トグリ(戸栗郁子)は生涯を通じて翻弄され続けます。「東京ローズ」と呼ばれ、 ラジオのアナウンサーとして、祖国アメリカ合衆国から反逆罪に問われます。本人はアメリカ軍人に対する プロパガンダ放送ではないと主張しましたが、戦争と人種差別の犠牲となったアイバは国籍を奪われました。 それでも後悔はない、人を恨まないと、アメリカ人として信念を貫きました。収容所で亡くなった母親、財産 を全て奪われた父親、家族の存在、ルーツ、語った真実は今を生きる私たちに多くのことを教えてくれます。 戦前、戦中、戦後。太平洋戦争の時代と格闘し、強く生きた一市民の姿を板の上に克明に焼き付けたいと 思います。
出演者は女性だけです。6 人がリレー式にアイバを演じ、全員でテーマを背負います。男性と女性、アメリカ 人と日本人、差別する側とされる側、終戦後のアメリカでの裁判で、裁く側と不当にも裁かれる側を演じ分 けます。台本、音楽、身体、テーマにカンパニー皆でとことん向き合いたいと考えます。演劇の言葉、新しい 価値観を模索する可能性に挑戦をしたいと思います。観客の皆様には、新しいミュージカルの誕生を是非 劇場で楽しんでいただけたらと思っています。 最後になりましたが、この作品を創り、私たちに日本初演の機会を与えてくれた BURNT LEMON THEATRE に心からの感謝と敬意を込めて。

概要
タイトル:『東京ローズ』
日程・会場:2023年12月7日(木)~24日(日) 新国立劇場 小劇場
芸術監督:小川絵梨子
出演
飯野めぐみ、シルビア・グラブ、鈴木瑛美子、原田真絢、森 加織、山本咲希
台本・作詞:メリー・ユーン/キャラ・ボルドウィン
作曲:ウィリアム・パトリック・ハリソン
翻訳:小川絵梨子
訳詞:土器屋利行
音楽監督:深沢桂子
演出:藤田俊太郎

新国立劇場公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp