稲垣吾郎 主演 モボ・モガプロデュース 舞台『多重露光』開幕

モボ・モガプロデュース最新作、稲垣吾郎主演、いまもっとも期待されている劇作家、横山拓也による書き下ろし、演出には、読売演劇大賞演出家賞を受賞の俊英、眞鍋卓嗣を迎えてお届けする『多重露光』。
「多重露光」とは、1コマの中に複数の画像を重ね写し込むこと、を意味するように、カメラを持つ稲垣の表情に様々な思いが重なって見えてくる。
愛おしさ、憧れ、狂おしさ、恨み…稲垣はじめ出演者たちの感情が重なり合う本舞台となる。

主人公・山田純九郎(稲垣吾郎)のモノローグ。「暗室に入るのが好き」「父は戦場カメラマン(相島一之)」母親(石橋けい)は言う「あなたにはお父さんの血が流れている」と。少々お節介な幼馴染(竹井亮介)や、取引先の中学校教員(橋爪未萠里)は彼を気にかけ、何かあれば写真館を訪れる。昭和な雰囲気漂う写真館、スタジオに椅子、クマのぬいぐるみ、なかなか年季が入っている。そんなとき、お嬢様だった麗華(真飛聖)がやってくる。息子、実(杉田雷麟・小澤竜心 ダブルキャスト)もいる。彼女の家はかつて、毎年のようにやってきて家族写真を撮っていたのだった。裕福で絵に描いたような幸せそうな一家だった。それがきっかけで、純九郎の心に小波が立ち始める…。

時間軸が行きつ戻りつ、純九郎の父母の関係、純九郎が生まれる少し前に父は家を出て行った。淡々としているが、心に吹く隙間風、今は母親は死去してるが、その影は消えない、過重な期待は彼の心にのしかかったまま。そんな折にやってきた麗華と息子の実、彼の中に少しばかりの淡い予感が芽生える。実にアシスタントの話を持ちかけ、実もその気になって純九郎と関わり始める。

途中で純九郎の心情と実の心が重なってくる。タイトルにもある「多重露光」。多重露出ともいい、1コマの中に2枚以上の複数枚の画像を重ねて写し込む(露光する)写真技法のこと。写真を重ねることで、ソフト感やキラキラ感を倍増させ幻想的な演出を加えたり、全く違う被写体を重ねることでストーリーを感じさせるような1枚に仕上げたりすることができる。だが、それは人工的でナチュラルに撮影した写真とは違う。そこに主人公の「幻想」「理想」がうっすらと見えてくる。

戦場カメラマンだった父は実は…。

また、現在の麗華、一見幸せそうだが、彼女の現在の家族もまた「多重露光」なことが見えてしまう。そして「多重露光」を”演じよう”とする。孤独な純九郎を理解する幼馴染、コメディリリーフ的な役割かと思いきや、後半は友に寄り添う、「お前はお前のままでいい、立派にならなくていい」と言う。心温まる瞬間。そしてラスト近く、1人の老人が純九郎を訪問する。訝しく思う純九郎、彼の正体は…思いがけない人物だった。

家族、そして愛、人との関わりで見えてくるもの、人は心の中に「こうあってほしい」というものがどこかにあったりする。そこに近づけたいと思うかもしれない。「近づいたら隙間が埋まるかも?」という淡い期待。シャッターを切れば、1枚の写真の中に「理想」が収まるのか、答えは「否」、だから複数の画像(2~9枚)を重ね合わせて「作りたい絵」を作る、多重露光で。主人公の心の中に常にある「多重露光」、ラストは、そこから思いがけない形で一歩踏み出す瞬間で終わっている。

のりしろの多いエンディング、観客の想像力を掻き立てる。作家・横山拓也の温かい眼差しが全編を貫く。ノスタルジックな写真館、そこに集まる人々、演者の巧みさ、時折映像を使いつつ、登場人物の心情を最大限に見せる眞鍋卓嗣の演出。休憩なしのおよそ2時間に詰まっている人間模様と心。涙する瞬間もあるが、ラストは光が見える。その光は仄かなものかもしれないが、そこに微かな期待と希望が見える。

観客はそのリアリティのある感情に共感。公演は22日まで。ちなみにこの作品の作家である横山拓也は写真好き。セリフにカメラに関する蘊蓄が出てくるが、登場人物の名前(ライカ、ミノルタetc.)にも注目したい。

公開稽古の前に簡単な会見があった。登壇したのは稲垣吾郎、真飛聖、相島一之、演出の眞鍋卓嗣。稲垣吾郎は眞鍋卓嗣とは「初めまして」状態。ワークショップ初体験だったそうで「誰に向けてやっているのだろう?と、ちょっと恥ずかしかった(笑)」とコメント。そして「役者に寄り添ってくれる優しい方」と評した。

真飛聖も「否定しないで、さらに提案してくださる。プラスアルファでお考えを伝えてくださるから、自分の中で『間違っていない道に行っている』と自信につながりました」と笑顔。「まさに真鍋マジック」と相島一之。演出の眞鍋卓嗣は「「人柄が良くて、チームワークもバッチリ。普段やっている小さな団体と同じように作品に向かい合って議論してくださる時間もあり、とても良いものでした」と語る。

そして稲垣吾郎は実はカメラ大好き、自室に暗室もあるそうで(!!!)。相島一之が首から下げていたカメラを手に取って蘊蓄を語り出したり、セットの暗室の方へ行って現像について解説、もうカメラ愛が止まらない(笑)、相島一之は「どんだけカメラが好きなんだ!」「主人公、そのもの」と(笑)。また取材陣のカメラを見て「みなさんオートフォーカスですね」と(笑)。

最後にPR。
稲垣吾郎「フィルムで撮ることに興味を持っていただければ…誰もが抱えている過去への思い、そこに優しく寄り添っている物語です。改めて家族との関係、自分を愛することの大切さを感じていただける作品になっています。ぜひ、劇場で」と締めて会見は終了した。

イントロダクション
「生涯かけて撮りたいものを見つけなさい」
親からの漠然とした言いつけに、僕は呪われている。
町の写真館を細々と営むカメラマンに、本当に撮りたい写真なんかあるわけない。
鬱々とした日々の中、突如現れたのは、あの家族写真に写る“お嬢様”だった。

山田純九郎(稲垣吾郎)は、写真館の2代目店主。戦場カメラマンだった父(相島一之)には会ったことがなく、町の写真館の店主として人気のあった母(石橋けい)からは理不尽な期待を背負わされた子供時代。
写真館で育ち、写真に囲まれた人生は、常に写真に苦しめられてきた人生でもあった。
毎年、愛に溢れた家族写真を撮る裕福な同級生の一家があった。45歳になった純九郎の元に、その憧れの一家の“お嬢様”であった麗華(真飛聖)が訪ねてきた。またその息子、実(杉田雷麟・小澤竜心 ダブルキャスト)と関わっていく中で、純九郎は、かつて強く求めた家族の愛情に触れられそうな予感をもつ。親の威光、無関心、理不尽な期待、そして、隠し持った家族写真…それらが多重露光の写真のように純九郎の頭の中に常にあって、幸せという未来の焦点がなかなか合わない。幼馴染(竹井亮介)や、取引先の中学校教員(橋爪未萠里)が何かと気にかけてくれるが、純九郎に欠落した愛情が埋まることはなかった。純九郎は、自分の求める愛を、人生の中に収めることができるのだろうか。

概要
モボ・モガプロデュース
『多重露光』
日程・会場:2023年10月6日(金)~10月22日(日)日本青年館ホール
作:横山拓也
演出:眞鍋卓嗣
出演:稲垣吾郎/真飛聖 杉田雷麟・小澤竜心(Wキャスト)竹井亮介 橋爪未萠里 /石橋けい 相島一之
企画・製作:(株)モボ・モガ

バックステージツアー概要
実施日時
10月10日(火)11:00開演の回 公演終了後
10月12日(木)17:00開演の回 公演終了後
10月19日(木)17:00開演の回 公演終了後
実施内容:バックステージへご案内
注意事項:※出演者の参加はありません。※抽選・抽選結果発表方法の詳細は後日告知。※10組限定(当選番号(座席番号)のお客様のお連れ様も一緒に参加可)

公式ホームページ:https://tajuroko.com/