藤原竜也主演 舞台『中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~』開幕 役に生きる、歌舞伎に生きる、ひたむきに。

歌舞伎全盛であった江戸時代中期に実在した破天荒な歌舞伎役者 中村仲蔵。梨園の血縁ではない彼は、市川團十郎に見出されて異例の出世を遂げた。その波乱万丈な人生は落語や講談でも語り継がれ人気演目。ドラマ化もされ2022年度文化庁芸術祭テレビドラマ部門の大賞を獲得。

唯一無二の中村仲蔵の物語を、ドラマ版の脚本監督 源孝志が舞台戯曲として書きおろし、蓬莱竜太が演出。中村仲蔵役を務めるのは藤原竜也。そして市原隼人、浅香航大、尾上紫、廣田高志、植本純米、古河耕史、斉藤莉生、今井朋彦、池田成志、髙嶋政宏ら、実力派が出演。
哀しげな声の長唄、1人の男が…彼の名は中村仲蔵(藤原竜也)、「名人仲蔵」とよばれた名優であり、江戸時代の伝説の歌舞伎役者ともいわれている。女性が声を荒げて「躾」をしている。彼女はお俊(尾上紫)。「覚えの悪い子だねえ」もはや「躾」というより、今時の言葉でいえば「DV」、それを”眺めている”仲蔵、思い出している、子供の頃のことを。懐かしさと痛さと入り混じった感情。そして名前、中村仲蔵、中村座で育ったから、と伝九郎(廣田高志)、「イケてねえ」と抵抗するも名前は中村仲蔵に。

團十郎(髙嶋政宏)が現れて「お前が柱になれ」と言い、コン大夫(池田成志)も出てきて予言する「『仲蔵狂乱』、後の世まで語り継がれる」と…。舞い踊る仲蔵、波乱万丈の役者人生を送る、そして語り継がれる役者に、印象的なプロローグ。
グッと時間は遡り、そこから33年前、仲蔵は10代、まだ前髪がある、若者らしく足取りも軽く、忙しく楽屋裏を小気味よく走る。江戸時代の彼らの日常が描かれる。立体的なセットで楽屋が描かれる、当時はこんな感じだったのかもしれない、という雰囲気。仲蔵は孤児、お俊に拾われた身、血筋がものをいう世界、そんなものはない仲蔵だが、なぜかそれでも彼の瞳の先には道が見えていた。

仲蔵が苦労し、紆余曲折を経て「中村仲蔵」になるまでを描いている。順風満帆とは言いがたく、猪の役があまりにも出来がよかったがために、「出過ぎた真似を」とばかりに壮絶な“楽屋なぶり”、血まみれに。現代ならそっこーOUTな酷いもの、やられっぱなしでぼこぼこにされる仲蔵、ここはかなり凄惨な手加減なしのシーン。裏切りや陰謀、人を陥れることなど朝飯前な世界。

落ちるところまで落ちた仲蔵だったが、それでもやっぱり「役者が好き」な性分、1幕はそんなダークな歌舞伎界と仲蔵が落ちていき、そこから役者として生きることを決意するまで、2幕は仲蔵が「中村仲蔵」になっていく様を描いている。藤原竜也がとにかく鬼気迫る仲蔵を表現、2幕の「外郎売」は思わず見入ってしまうし、「仮手本忠臣蔵」の定九郎、これを閃いたきっかけ、そしてそれを取り入れての劇中歌舞伎はこの2幕のハイライト、破れ傘が風情があり、かっこいい。

また、2幕冒頭の踊り(ダンス)が今風でシンプルに楽しい。セリフもテンポよく、セットがヒエラルキーをビジュアル的に見せる。また、わかる人にはわかる小ネタも!
脇を彩るキャラクターも個性的かつインパクト、市川團十郎、”劇中歌舞伎”では威風堂々と登場して大立ち回り、髙嶋政宏の見得は一見の価値あり。市川隼人は三味線の稽古の成果を披露、これが思わず聞き惚れてしまうほど。

尾上紫は立ち振る舞いが優雅、流石。またコン太夫を演じる池田成志が飄々とした雰囲気でアクセントに。2幕では「仮手本忠臣蔵」の説明を立て板に水の如くに!今井朋彦の金井三笑は不敵な笑いを浮かべ、一癖も二癖もあるキャラクターで存在感を示す。浅香航大の中村伝蔵、人の良さそうな。
ひたすらに芝居がしたい、歌舞伎がやりたい一心で突き進んでいった中村仲蔵、その生き様と心意気、ひたすらに役者バカ。

求道者というのはこういう人物、サブタイトルは”歌舞伎王国 下克上異聞”、この「仮手本忠臣蔵」の定九郎以降、実悪の諸役に腕をふるい「千本桜」の権太、「曾我」の工藤(釣狐の工藤)、「荵売」の大日坊、「関の扉」の関兵衛など、仲蔵の型、仲蔵振りと呼ばれ、後世に残る優れた表現を残している。純粋な役者バカな生き様は共感を呼ぶ。公演は東京は25日まで、その後、広島、宮城などを周り、3月27日からSkyシアターMBSの柿落とし公演として上演される。

藤原竜也より
中村仲蔵という役者が生きた歌舞伎の世界とどう向き合うのか、稽古序盤は何もかもが手探りでした。昔、蜷川幸雄さんが待つ稽古場に向かう時の吐きそうな不安と緊張感が久々に甦ったくらいです、でも稽古を重ねるうちに、芝居の根本部分は何も変わらないということがわかってきました。歌舞伎の所作などについてできる限りの努力をするのは当然としても、歌舞伎だからと構えすぎず、自分がいつも演劇と向き合う姿勢で、稽古に臨んできました。仲蔵のように光り輝く一本の道をまっすぐに歩く人生でありたいという願いを持ちながら、未知のものに挑戦していく気概を持ち続けたいです。
ようやく初日を迎えられてお客様の前で表現させてもらえることが僕としても嬉しい限りです。

ストーリー
時は江戸時代中期、舞台は歌舞伎の黄金期を迎えようとする芝居街・日本橋堺町。江戸三座と称される劇場や芝居茶屋がひしめくこの芸能の町に、一人の孤児が運命的に流れ着く。
中村座で唄方をつとめる男と、振り付けを教える女の夫婦に養子に貰われたこの孤児こそ、歌舞伎史上不世出の天才役者と呼ばれるようになる初代中村仲蔵(藤原竜也)である。養母の厳しい稽古で踊りの才能を開花させた仲蔵は、役者として舞台に立つ夢を膨らませるが、血筋がものをいう歌舞伎界の高い壁が立ちはだかる。しかし芝居に取り憑かれた若者は、無謀にも最下層の大部屋役者から成り上がる下剋上の道を選んだ。歌舞伎界の頂点を巡って裏切りや策謀が渦巻く舞台裏の抗争に巻き込まれつつも、ひたすら芸の道を疾走する仲蔵。しかし彼を待っていたのは苛烈な“楽屋なぶり”だった。

概要
舞台『中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~』
キャスト
藤原竜也
市原隼人
浅香航大
尾上紫
廣田高志
植本純米
古河耕史
深澤嵐
斉藤莉生
今井朋彦
池田成志
髙嶋政宏 ほか
スタッフ
脚本:源 孝志
演出:蓬莱竜太
主催・企画制作:ホリプロ
期間会場:
東京:2024年2月6日(火)~2月25日(日) 東京建物Brillia HALL
広島:2024年2月29日(木)~3月1日(金) 広島文化学園HBGホール
名古屋:2024年3月7日(木)~3月10日(日) 御園座
宮城:2024年3月15日(金)~17日(日) 東京エレクトロンホール宮城
福岡:2024年3月22日(金)~24日(日) キャナルシティ劇場
大阪:2024年3月27日(水)~3月31日(日) SkyシアターMBS
公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/nakamuranakazo2024/

撮影:引地信彦