《インタビュー》 ミュージカル「また、必ず会おう」と誰もが言った。 脚本・作曲 まきりか

「こんなに泣ける本はない」と評判の小説の初ミュージカル化、小説には「偶然出会った、たくさんの必然」という副題が付く。ささいな嘘がきっかけで一人旅をすることになった男子高校生の成長を描いている。2012年、公益法人読書推進運動協議会による「若い人に贈る読書のすすめ 24冊」の1冊に選出され、2013年には佐野岳の主演で映画化された。ミュージカル版では主人公の和也を舞台「銀河英雄伝説」のユリアン・ミンツ役やミュージカル「ヘタリア」のイタリア役を好演した長江 崚行が演じ、元宝塚雪組トップスターの杜けあきや「ザ・コンボイ」オリジナルメンバーの石坂勇ら実力者が脇を固める。このミュージカルの作曲と脚本を手がけたまきりかさんに作品の魅力や作曲と脚本を創造するにあたって心がけた事などについて語ってもらった。

まるで自分自身が17歳になって旅をしているかのような、そんな気持ちになるんです。

――原作を読んだ感想、感動したところなどお願いいたします。旅先での出会いが主人公に気づきや成長をもたらしているところがポイントだと思いますが。

まきりか:この物語は17歳の主人公 和也の成長物語ではあるのですが、和也が出会う人々からかけられる言葉の数々が、まるで自分に語りかけているように心に深く刺さるところが、原作の一番の魅力だと思います。
「すべての出会いは必然」「自分の使命をみつけるまで好きなことを何でもやりなさい」「他人のメガネをかけて世の中を見るな、自分の物差しを持て」など、大人になった今でもドキッとするような言葉が、どんどん投げかけられてくるうちに、まるで自分自身が17歳になって旅をしているかのような、そんな気持ちになるんです。
また、その出会う大人たちも、人生の中で様々な「傷」を抱えている。それもまた、いまの自分に照らし合わせてなんらかの共感を得るところです。
とにかく珠玉の言葉がいっぱい詰まった、爽やかな青春小説です。

――この物語の主人公のキャラクターに関しての率直な印象をお願いいたします。

まきりか:熊本の高校2年生という設定ですが、ほんとうにどこにでもいる普通の子という感じです。本人は自分を嘘つきで見栄っ張りだと言っていますが、それって誰の心にもある部分ですよね?
でも和也の長所は「素直なところ」。とりあえず言われたことを素直に受け止めてみる、実践してみる、こういうスタンスってとても大事なことですよね。彼が4日間の旅で大きく成長できるポイントは、この「素直さ」にあると思ってます。

――脚本・作曲の創作過程において特に留意した点があればお願いいたします。

まきりか:まず、原作を読み終えたときの、なんともいえない「爽やかな読後感」を、舞台を観終わった時のお客様にも同じように感じていただきたい、というのが、創作ポリシーの第一にありました。私はいつも、脚本と歌を同時に書くのですが、今回の曲は根底にずっと「爽やかさ」が流れています!
また、原作では、主人公が旅先で順番にいろいろな人と出会っていくロードムービー的な物語なのですが、せっかくの舞台でただ登場人物が順番に出てくるだけでは面白みがないので、そこは演劇・ミュージカルならではの要素を盛り込み、原作とは違った演出をしています。

長江崚行さんは、佇まいがとてもナチュラルで、和也のイメージにぴったりだというのが第一印象

――キャストさんの印象をお願いします。初めまして!の方もいらっしゃれば、何度かご一緒している方もいらっしゃいますね。

まきりか:初めてお会いするキャストの皆さんは、フライヤー撮影の時に同席させていただきました。長江崚行さんは、佇まいがとてもナチュラルで、和也のイメージにぴったりだというのが第一印象でしたが、舞台上での長江さんはさすがプロフェッショナルで多彩色なオーラを放つんですよね。とても魅力的な役者さんだと思いました。2.5次元ではないオリジナルミュージカルの主演ということに、とても気合いを入れてくださってると伺っていたので、私も、長江さんの新たな魅力を存分に発揮できるような歌をたくさん書かせていただきました。
杜けあきさんは、「新幹線おそうじの天使たち」「ソーォス!」に続き、ミュージカルでご一緒するのが3作目となります。最初は「おそうじのおばちゃん」、次は「京都の肝っ玉かあちゃん」、そして今回は「空港のおみやげ屋のおばちゃん」と、なぜか私の作品では、普段の杜けあきさんの華やかにして柔和なイメージとはかけ離れた役ばかり(笑)。しかし、どれも共通するのは、根底に深い愛があるということで、けあきさんはその強烈なキャラクターに、愛と茶目っ気をつめこんでくださいます。今回も、安心して思いっきり素敵なおばちゃん像を書かせていただきました。
石坂勇さんは、私がまだ舞台の世界の仕事を始める前からいちファンとして拝見していた方なので、今回ご一緒させていただくのがとても嬉しく、楽しみです。「柳下さん」という役をやっていただくのですが、原作では関西人。ここは、石坂さんならではの新たな柳下をつくっていただきたいと思い、原作からかなり書きかえたところでもあります。「舞台版またかな」の大きなポイントになると思います。
いかさんこと松岡侑李さんは、その柳下の娘、千里役になります。松岡さんの、撮影でお会いした時の印象そのまま、清楚なかわいらしさとカッコよさを併せ持つ、素敵な女性として描きました。石坂さんと松岡さんの親子愛は、大注目していただきたい場面です!
その他、総勢11名の、バラエティ豊かな素敵なキャストが集結した今回の舞台です。
和也の母親役の多岐川装子さんは、以前私が作プロデュースしたミュージカル「SNOW MANGO」にご出演いただいて以来2度目。
医師役のAdamさんは、私の初作品である「WAY OUT」ご出演以来、「DAICHI」に続いて3度目となります。
警官役の豊田豪さんは、以前バトルイベントの審査員をやらせていただいた際にご出演されていて、それがきっかけで今回ご一緒することになりました。
今回、まったく初めましての関根慶祐さん、桐矢彰吏さん、安城うららさん、西村秀人さんも、事前に映像資料などをいろいろいただきながら、それぞれの役を書かせていただきました。
プロフィールを拝見しても「各界から集結した個性派ぞろい」という印象なので、和也が旅で次々に新たな出会いをしたかのごとく、この出会いと化学変化を、お客様にも楽しんでいただけたらいいなと思っています。

シンプルだけど心に深く残る、秋にふさわしい作品です

――最後に締めの言葉をお願いいたします。個人的には『生演奏』っていうところに惹かれました、しかもピアノとヴァイオリンのみですね。

まきりか:映画化もされたベストセラーということで、物語は間違いなく面白いです!あとは「ミュージカル」としてどう楽しんでいただけるか、ということで、今回いち押しなのは、もちろん音楽!
ピアノとヴァイオリンのみの生演奏で、いまミュージカル界で大活躍中のピアニスト村井一帆さんと、「踊るヴァイオリニスト」として知られるRiOさんのペアという、ここだけにしかない貴重なバンドになります!
生音の美しい調べと、11人の役者による、シンプルだけど心に深く残る、秋にふさわしい作品です。ぜひ劇場でこの感動を味わっていただきたいです。お待ちしています!

――ありがとうございました。公演を楽しみにしております。

<物語>
熊本の高校 2 年生 和也は、クラスメイトに「小さな嘘」をついてしまったことがきっかけで、夏休みに親へ内緒で東 京への一人旅を実行する。しかし帰りの飛行機に間に合わず、わずかな所持金のまま空港に取り残されてしまう。 落胆する和也をみかねた土産物屋の昌美に声をかけられ、家に泊めてもらうことになる和也。昌美との出会いをきっか けに、和也は自力で熊本へ帰ることを決意する。 そこからの様々な大人たちとの出会い。娘の結婚を賛成できないトラック運転手、親不孝をしてしまった美容師、友達 を裏切った警察官、自分の人生を生きてこなかった医者など……旅の途中での彼らとの出会いによって、和也に成長と 変化をもたらしていくが、彼らもまた、和也に自分の生きてきた道を重ね合わせ、変化を遂げていく。 すべてが必然のタイミングで……。

【概要】
原 作:「また、必ず会おう」と誰もが言った。(喜多川泰著 サンマーク出版刊)
日 時:2018年 11月 14日(水)~11月 18日(日) 計 7公演
場所:全労済ホール/スペース・ゼロ
脚本・作曲:まき りか
演 出:本藤 起久子
出演:長江崚行 杜けあき/松岡侑李・石坂勇
多岐川装子/関根慶祐/豊田 豪/Adam/桐矢彰吏/安城うらら/西村秀人
演奏:村井一帆(ピアニスト)/RiO(ヴァイオリニスト)
主催:文化放送/ミュージカル「またかな」実行委員会
制作協力:NLT
制作:ちあふる
企画製作:全栄企画

公式HP:http://matakanamusical.com

公式Twitter:https://twitter.com/matakanamusica