関西の小劇場から大劇場へ! 劇団壱劇屋10周年を締めくくる作品は かつて多くの話題をさらった 野田秀樹の戯曲「TABOO」を再構築!

関西の小劇場を中心に活動する劇団壱劇屋が、その10周年記念として、野田秀樹による 戯曲「TABOO」を劇団の座長・大熊隆太郎が劇団ならではのアレンジを加えて大胆にリメイク・演出。唐沢寿明、渡辺いっけい等が出演した同作の初演は1996年、実に20年以上の 時を経て名作を蘇らせるということもあり、この公演を10周年の締めくくりにふさわしい 「挑戦」としている。

ストーリーは日本の南北朝時代を舞台に、時の天皇の子であるが「バカ」との烙印を押さ れ役者として育てられた一休(山本貴大)が、旅芸人の萠(高安智美)と出会い恋を、大道 芸人のダルマ(丸山真輝)と出会い芸事の高みを探し続けるが、南朝の復興を目論む熊楠 (竹村晋太朗)により、自らの出生を利用され、南北朝の戦へと巻き込まれていく……とい うもの。冒頭からキャストそれぞれが仮面をかぶっての群舞はなまめかしさと妖しさを含む 動きとフォーメーション、ただならぬストーリーを予感させる。和風の舞台ではあるが衣裳 に洋風の小物や意匠をあしらっており、セリフには現代的な要素を取り入れている。

セットはほぼないに等しいが、場面転換・効果音などで人の声や鳴り物を使用するところ は、さながら狂言を見ているよう。ヒップホップ、モダンバレエなど多種多様なダンスを取 り入れており、これまでにも多くのジャンルに挑み、成功させてきた劇団壱劇屋のスタイルそのものだ。

物語は一休の出生から始まる。芸事を中心とした展開、滑稽なミュージカルシーンなども 登場し、観客を笑いへといざなう。ここで、萠役の高安智美が可愛らしくもしたたかな表情 を見せ、長台詞としなやかなダンスで見事に演じている。

後半、「死」をテーマにした群舞が行われるとストーリーは一変。これまでのコミカルな 要素も、登場人物の狂気をはらんだ様子も、激しい戦乱の場面を強調する。ここで一休役・ 山本貴大の演技が、それまでにない力強いものへと変化していく様はぜひ劇場で観てほしい! また、舞の名手・世阿弥陀(大熊隆太郎)のソロダンス、雪の小面役の藤島望とのデュオは、ボロボロになった萠が見せる激情や、熊楠はじめ登場人物たちの思惑などと シンクロし、その不穏さを一層かきたてる。

終盤、一休が戦地で舞うシーンでは、ほぼ無音・音楽なしの中で踊り続ける。その様子も また、妖しくも美しい。そして愛憎入り乱れたラストシーンへ……。12月14日に行われた プレ公演では、終演後すべての観客の視線が舞台へと釘付けになっていた。劇団壱劇屋の集大成としてふさわしいといえるだろう。

《あらすじ》
バカとして育てられた天皇の子、
名を一休。
南北戦争の火種になると、命を狙われ逃げおおせ、旅芸人の一座へ拾われる。
バカは役者を始め、芸を磨き、恋を覚え、 師匠に憧れ、「せぬ芸」へと辿り着く。
バカの出自を知る者たちにより、
南北の戦に巻き込まれる一休だが
己の芸を完成させるべく道を探し続ける。

＜劇団壱劇屋とは？＞