映画&舞台 連動興行『怜々蒐集譚(Reirei Syusyu Tan)』Zu々主宰:三宅 優 特別インタビュー

1998 年の初出より現在までシリーズが描き続けられている石原理の人気コミック『怜々蒐集譚』より「其は怜々 の雪に舞い」を中心として初舞台化&映像化となる本作は、互いに相手の才能と人物に魅了され、それゆえ愛情 と嫉妬がうずまく傑出した小説家 2 人と、彼らを取り巻く人間模様をサスペンス要素を織り込み描いていく。物語の舞台は華やかなる大正時代、人の想いは時に不思議な出来事を呼び覚ます。雪山で遭難した傑出した小説家が残した原稿とその想い。人をかどわかす赤い焔をまとったような女。人気挿絵師の出泉と新人編集者の南、歌舞伎役者の葛葉が人の想いが織りなす謎に迫る大正浪漫ミステリー。キノドラマ(舞台)とキネマ(映画)の連動企画となっている。
文壇を賑わせた、若きふたりの作家のスキャンダル。烏鷺(相葉裕樹)の裏切りによって訣別したはずのふたりは、なぜ烏鷺の失踪後、また繋がることになったのか、をキノドラマ(舞台)で描き、事件解決の先にある、若き日の二人、烏鷺と乙貝(相馬圭祐)の互いへの想いが交錯する愛憎の物語をキネマ(映画)として同期間に上演・上映し、作品の世界観をそれぞれのジャンルの特性を活かして表現する。映画と舞台は別ストーリーでありながらも、共通するキャラクター(俳優)が登場することにより、本作品の世界観をより深めることができ、さらに大正という時代設定に相応しい衣裳やロケ地、舞台セットにおいて日本の様式美の部分を視覚的に際立たせていく。
この意欲的な企画、その発想の原点や見所などをZu々主宰でありプロデューサーでもある三宅 優氏に語ってもらった。また最新の稽古場ショットも到着、合わせてご紹介!

 

「プロデューサーとなった後、舞台化して自分が観たい、誰かにも観せたい、と思う作品と考えた時、思い出しました」

ーー「怜々蒐集譚」は映画(キネマ)と舞台(キノドラマ)と連動興行というユニークかつ挑戦的な企画ですが、この企画の発想と発端を教えてください。

三宅:日台共同映画「南風」(2014年 監督:萩生田宏治)に企画協力として参加した経験があり、いつか機会があったら、また映画に携わりたいと考えていました。そして今回の公演の原作にあたる「其は怜々の雪に舞い」が、キャラクター二人の過去に深くかかわった部分を描く事で作品の世界観を深められると考えて、過去の部分を映画化する事を思いつきました。監督の武島銀雅さんは、Zu々プロデュースの旗揚げ「Being at home with Claude~クロードと一緒に~」の時には、カメラマンとモントリオール監修として携わっていて、カナダへ帰国後も、Zu々プロデュース公演のトレーラーのほとんどを手掛けていました。そのため、今回の映画に関しても、プロデューサーが見たい絵、映画を撮れる監督という信頼から、カナダから来日してもらっての撮影となりました。

ーー原作はコミックですが、原作の面白さとこの作品を選んだ理由をお願いしたします。ミステリー要素もあり、また時代設定も大正時代の終わりで雰囲気もありますね。

三宅:原作であるコミックは1998年に描かれています。当時はプロデューサーという現職とはまったくかけ離れた仕事についていましたので、単に読んで「素敵な作品だな」と記憶していただけです。プロデューサーとなった後、舞台化して自分が観たい、誰かにも観せたい、と思う作品と考えた時、思い出しました。

「舞台だけ、映画だけをご覧頂いても、ひとつの作品として完結するようになっていますが、両作品ご覧頂くと、より世界観が深まり、楽しんで頂けると思います」

ーー映画と舞台、それぞれの見所をお願いいたします。

三宅:映画はなぜだかとてもインターナショナルなスタッフ混成になりました。武島監督がモントリオール在住なので、彼の知人で日本にいるフランス人のカメラマンに依頼し、彼が通常仕事をしているスタッフなどに声をかけた結果でしたが。そのため、日本の大正という時代を撮っても、先入観のない、かつ外から見た人(外国人たち)の目に映るとても綺麗な日本が撮れています。舞台は、日本人のみのスタッフです。繊細な心の動きを丁寧に描いていく演出なので、登場人物それぞれの背負った“想い”を感じてもらえたら、と思います。

ーー実力のある俳優さんが集まりましたが、演者さんの魅力を教えてください。

三宅:お答えするのが難しいですが・・・強いて書くなら20代から50代まで、たたづまいがとても美しい演者さんが揃ってくれた、と思っています。そのたたづまいの美しさが、日本の大正時代を描くのに必要な“何らかの上品さ”を付け加えているように感じています。

ーーこの連動企画のPR、興味を感じている読者、観に来るお客様に向けて締めの言葉をお願いいたします!

三宅:「どちらから先に見たらよいですか?」「どちらがおススメですか?」と聞かれます。どちらもおススメですし、どちらから見て頂いても、もう一方の作品を見たい、と思って頂ける両作品に仕上がってきています。舞台だけ、映画だけをご覧頂いても、ひとつの作品として完結するようになっていますが、両作品ご覧頂くと、より世界観が深まり、楽しんで頂けると思います。新国立劇場小劇場でお待ちしてます。

――ありがとうございます。公演を楽しみにしています。

<STORY>大正末期。雪山で遭難した小説家・烏鷺(相葉)の未発表原稿が、同業者である乙貝(相馬)の家で 発見された。かつては誰よりも親しく、そして婚約者・公美子(瀬戸)を烏鷺に奪われ、決別したはずの乙貝 が烏鷺の原稿を所有していた理由とはーー。二人の傑出した小説家が互いに対して抱く想いの正体に、人気 挿絵師の出泉(藤原)と新人編集者の南(溝口)、歌舞伎役者の葛葉(味方)が迫る。

【公演概要】
キネマ(映画)&キノドラマ(舞台)連動興行『怜々蒐集譚(Reirei Syusyu Tan)』
日程・場所:
2019年2月16日(土)〜2月27日(水) 新国立劇場 小劇場
<出演>
南:溝口琢矢
出泉七朗(いでいずみななお):藤原祐規
幽興斎葛葉(ゆうきょうさいくずは):味方良介
来島(くるしま);鯨井康介
烏鷺公美子(うろきみこ):瀬戸早妃★
吉乃(よしの):宮地花衣 ★
カフェのボーイ:野尻大介
医者:岸博之★
カフェの女給:宮下舞花
乙貝紅葉 (おとがいこうよう):相馬圭祐
烏鷺公外(うろこうがい) 相葉裕樹☆
☆キネマ(映画)のみ
★キノドラマ(舞台)のみ
公式HP:https://www.zuu24.com/rrsysy/

取材・文:Hiromi Koh