明治座『夫婦漫才』「3パターンの楽しみ方ができる参加型の演劇」

2017年に各地で大評判を呼んだ『夫婦漫才』。 2月8日、 明治座公演が開幕した。 テレビドラマから演劇まで幅広い知識を持つコラムニストのペリー荻野さんが『夫婦漫才』を観劇。 「3パターンの楽しみ方ができる参加型の演劇」とは!? その魅力を語る。

ハイ、 笑いました~!ハイ、 泣きました~!また笑いました~…って、 忙しいな、 どっちやねん!!と、 突っ込まれそうですが、 ホント、 笑って泣いてというお芝居が多々ある中で、 この「夫婦漫才」は、 その決定版と言ってもいいくらい。 明治座の客席のあっちゃこっちゃで笑い声としんみり涙があふれていました。
しかも、 ただ「いい芝居」だけじゃないことに気がつきました。 なんと「3パターンの楽しみ方ができる参加型の演劇」なのです。 最近、 映画館では、 名場面で観客が歓声や拍手、 指笛まで鳴らす「応援型」の上映が増えていますが、 この「夫婦漫才」もなかなかのものです。


参加の仕方、 その1は、 主人公の信子(大地真央)と伸郎(中村梅雀)の夫婦コンビ、 「横山伸郎・信子」の漫才のファンになること。 なにしろ、 夫婦喧嘩が面白すぎて、 漫才コンビにスカウトされた二人です。 息はぴったり。 大地流マシンガントークVS梅雀下がり眉毛。 想像しただけで笑えますが、 実際に見てみると、 さらに可笑しい。 考えてみれば、 大地真央は、 淡路島出身で関西弁のネイティブ。 上方漫才のしゃべくりでは、 イキイキとして見えます。 加えて、 次々登場するチャーミングなドレス。 まさに水を得た真央さん。 また、 途中、 梅雀はベースギターを弾く場面も。 ベーシストとしても活躍する梅雀もとってもイキイキしている。 演技力に関西弁、 ベースという得意技が加わった最強のふたりが舞台に立つ。 私たちはそのステージの観客になって、 大いに笑って拍手できるわけです。

二つ目は、 長屋の隣人としての参加。
ふたりは、 信子が生まれたおんほろ長屋でずっと暮らしています。 住民と大家さん(お笑い界のレジェンド、 『かしまし娘』の正司花江)は、 困ったときは助け合い、 いいことがあった時はともに喜び、 哀しいことがあったときはともに泣く。 こんな生活ぶりを見ているうちに、 なんだか自分たちも隣人のひとりになったような気がしてきます。 木造アパートや長屋に暮らした経験のある方なら、 懐かしさもひとしおのはず。 お芝居は、 昭和7年から、 戦争を経て、 大流行したダッコちゃん、 大阪万博や阪神優勝、 漫才ブームなども織り込まれ、 あの頃の自分は…と、 懐かし心がくすぐられます。 と、 同時に「あんたの横にはいつもうちがおる」こんな言葉に、 平成も終わろうという今だから胸打たれる。 大事な人には、 自分をむき出しにして素直に寄り添ってもいい。 ちょっと勇気ももらったりして。 私は昭和のころ、 苦労した自分の両親にも、 SNSで人との距離に悩む友人にもこのお芝居を見せたいな~としみじみ思いました。

そして三番目は、 お芝居の観客としての参加。
作品の原作者は、 大阪出身のクールな二枚目俳優豊川悦司。 また、 脚色はドラマ「TRICK」「忘却のサチコ」などで個性的な役を演じ、 「ちょっと出てるだけでも、 とっても気になる」俳優でもある池田テツヒロ。 演出は近年、 話題の作品を数多く手がけているラサール石井。 三人の個性がぶつかると演劇はこうなるかと新発見した気持ちにもなります。
「夫婦漫才」が、 博多座はじめ、 各地で大人気になったというのも納得です。 おもろい夫婦が、 今回は東京、 大阪、 東北の各地を回って、 どんなことになっちゃうの!? 心配したり、 慰められたり、 あらら、 すっかりこの夫婦の友人気分。 もちろん、 これも楽しい。
「みんな、 うちの美貌のおかげやで!」
信子にオチをつけられちゃいました。

○公演概要○
「夫婦漫才」
日程・場所
2019年2月8日(金)~2月17日(日)明治座

原作:豊川悦司
演出:ラサール石井
脚本:池田テツヒロ
出演:
大地真央 中村梅雀
川崎麻世 村上ショージ 竹内都子 上杉祥三
野添義弘 福本伸一 弘中麻紀 未沙のえる 南翔太
吉沢京子 正司花江 ほか
公演公式サイト:https://www.meijiza.co.jp/lineup/2019/02/