ミュージカル「ルドルフとイッパイアッテナ」迷子になった黒猫ルドルフの大冒険!愛と友情と絆、だから僕はここにいる!

有名な作品である「ルドルフとイッパイアッテナ」、ミュージカル化、舞台化も数多くなされ、中身はよくわからなくてもタイトルだけは知っている、という人も多いであろう。1991年にテレビ絵本として放映、語りは毒蝮三太夫であった。
主人公はルドルフという名の猫、岐阜で小学生のリエちゃんに飼われていたが、魚屋に追いかけられてトラックに乗り、そのまま東京にきてしまったのだった。そんなこんなをスピーディにミュージカルナンバーで綴る。

某ミュージカルのようなスマートな衣装ではないが、どことなく可愛らしく、愛嬌もある。着いた先で出会ったボス猫、名前はいろいろあり、ルドルフに名前を聞かれて「俺の名前はいっぱいあってな・・・・」といったところルドルフに名前が「イッパイアッテナ」と勘違いされてしまう。

知らない土地でイッパイアッテナやちょっと年上のブッチーたちと一緒に過ごすルドルフ。餌をくれるおばあちゃん、給食のおばちゃん、クマ先生(本名は内田先生)ら人間の知り合いもできたが、やはりリエちゃんのところに帰りたいルドルフ。『天敵』である犬のデビル(名前が邪悪!)、イッパイアッテナをやたら憎んでいて・・・・・がだいたいの流れ。

いずみたくのミュージカル作品、曲がとにかく印象的でルドルフがデビルに立ち向かう前の曲などはドラマチック。観客は子供達が多く、物語に素直にのめり込んでいるのがよくわかる。デビルの衣装はかなり強そうで、メイクはヘビメタなノリ、しかし、単なるヒール役ではなく、どことなくユーモラスさも漂う。シンプルな物語であるが、なかなか奥が深い。

愛、友情、絆、といった普遍的なテーマの他にセリフで「教養」という言葉も出てくる。イッパイアッテナは猫なのに文字が読める。そして人間たちと交流するが、ここが『ファンタジー』、猫と人間という垣根を超えて交わりを持つこと、ルドルフは実に多くのことをイッパイアッテナから学んでいく。
ダンスも最新の振付というわけでないが、どことなくあったかい。そしてデビルvs猫たち、猫パンチも!炸裂!全体的に温かく、ラストは優しい気持ちになれる。子供向けではあるが、大人でも十分に楽しめる内容、上演時間は約1時間30分。


<作品について>
1987年に刊行され、シリーズ累計100万部を誇る斉藤洋の大ベストセラー「ルドルフとイッパイアッテナ」。子どもから大人にも大人気の児童文学、2016年には3DCGアニメとして映画化もされた。イッツフォーリーズでは、いずみたく最期の企画作品として1993年に初演。その後、キャストや演出を変えながらロングラン、全国で500ステージの上演を重ねる劇団の代表作となっている。
<あらすじ>
大好きなリエちゃんと岐阜で暮らしていた子ネコのルドルフ。ある日、ひょんなことからトラックで遠い町まで運ばれてしまいました。駐車場におそるおそる降りたルドルフは、頭の上から大きな声で呼び止められました。イッパイアッテナという、このあたりの野良ネコのボスです。イッパイアッテナはふしぎなネコでした。たくさんの名前を持ち、たくさんの知り合いがいて……そして何よりルドルフがおどろいたのは、イッパイアッテナが字を読める事でした。

【公演概要】
☆ミュージカル「ルドルフとイッパイアッテナ」
日程・場所:2019年3月27日〜3月31日 俳優座劇場
企画=いずみたく
原作=斉藤 洋(講談社刊)
脚本=杉原 泉
作詞=岩谷時子
脚本・演出=本藤起久子
作曲・編曲=近藤浩章
編曲=吉田さとる/佐藤由理
特別共催=公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団
提携=俳優座劇場
協力=株式会社講談社/株式会社オリオンズベルト/青年座映画放送株式会社/有限会社ジャンクション/麻布十番商店街振興組合
主催・企画・制作:株式会社オールスタッフ ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ

文:Hiromi Koh