2018年に紫綬褒章を受章、2019年に第26回 読売演劇大賞 最優秀作品賞・優秀演出家賞を受賞するなど、近年、その活動が高く評価される劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ（KERA）。
KERAの数々の戯曲の中から、選りすぐりの名作を、才気溢れる演出家が異なる味わいで新たに創り上げる、シアタークリエ連続上演シリーズ「KERA CROSS」(製作 東宝・キューブ)が今夏スタート。
第一弾として『フローズン・ビーチ』が7月12日より開幕（鈴木裕美演出 7/31～シアタークリエ他）。
『フローズン・ビーチ』は、1998年、KERAが作・演出、劇団「ナイロン100℃」公演として新宿・紀伊國屋ホールにて初演され、女優4人で紡ぐミステリー・コメディであり、世相を鋭く映し出しながら、16年にわたる女性同士の心の機微を描く密室劇の傑作として、第43回岸田國士戯曲賞を受賞した。女性の心理を繊細に描く名手と言われるKERAの、その才能を世に知らしめた、ナイロン100℃初期の代表作として知られている。
その傑作が、人間群像を深く描き切る人気演出家・鈴木裕美の手によって、今、新たに命が吹き込まれる。
初日も押し迫った７月、都内で公開稽古が行われた。披露されたのは冒頭の部分。１場、1987年の夏のある日。丁々発止のやり取り、この時点でかなりの完成度。本番さながらの出来栄えで初日が楽しみな、およそ15分の稽古披露であった。
それから演出家も交えての初日に向けての会見が執り行われた。
まずは鈴木裕美が「この間、通し稽古を行いまして・・・・・男らしい女優さん！面白くなっています！ぜひ、みなさん劇場に！」と開口一番。確かに女優陣は皆、たくましい！鈴木杏は「KERAさんの本は大変で、楽しみながら苦しんでいます（笑）、充実した稽古で、これから、あと稽古は１週間ちょっとです・・・・劇場でお待ちしています」と語る。ブルゾンちえみは初舞台であるが、稽古段階ではかなりの出来栄えだが「わからないことがたくさんあって、その都度、相談に乗っていただき、アドバイスもいただき、日々、できるようになっていくところに楽しさを感じています。もっとよくなれるように！」と意欲を示す。朝倉あきに代わってキャスティングされた花乃まりあは「遅れてお稽古に参加させていただきまして、みなさんに暖かく迎えられて、感謝しています。とても難しく、自分自身との戦いが続いておりますが、今できるすべてのことを！」と語るが、かなりの完成度を見せた。シルビア・グラブは「裕美さんが言ったように（皆）男らしい（笑）裕美さん含めてですが、和気藹々としてますが、でも体育会系みたいな。私はずっと笑っている稽古場です・・・・面白い作品になると思います」と語る。役所としてはかなり笑う役でしょぱなから笑い声が響く。またそれぞれの役所などについては鈴木杏は「小者（笑）、若いっていうところもありますが、思いが溢れていってどんどん空回りしていく。いじらしい一面もあります」とコメント。ブルゾンちえみは「台本読んだ時は『この人、わけわからない』、論理的ではない、本能で動いている・・・・・でも憎めないっていうのが見えてきまして。稽古を通してだんだんとわかってきて市子に愛着が湧いてきました。お客様に『あの子可愛い役だから』って思ってもらえるように！」と語る。花乃まりあは「二役ですが萌は、もともと体が弱い、そういうことの上に成り立つ開き直り、生きていく上でも強さ、可愛らしさを持った人だなと。愛は、全ての登場人物に対して自分が優位に立とうと必死になるんですが、周りのキャラクターが強烈すぎて自分が運びたいところに運べない（笑）ところがすごく惜しい人だなと（笑）、この人惜しいな、楽しいなと思っていただければ」とコメント。シルビア・グラブは「楽観主義で、常に笑って楽しんでいたい人、空気が悪くなるとすっとぼけて場を明るい方に持って行こうとする・・・・・おとぼけキャラです（笑）、見えないからなのかもしれませんが。なかなかない役で苦しみながらも楽しんでいます（笑）」と語る。またメイクについて聞かれたブルゾンちえみは「ブルゾン感を残しつつ、でも完全に消さずに・・・・・」とコメントし、それに対して鈴木裕美は「ブルゾンで来てちえみで帰る時がある（笑）」と笑いのコメント。本番は・・・・？観てのお楽しみ。ブルゾンちえみの演技について鈴木杏は「すごく・・・・なんとも言えない面白さ、真剣にやればやるほど、面白すぎてこっちが破壊されちゃう（笑）、稽古途中で笑っちゃって稽古にならない時が！」とコメント。ブルゾンちえみは「KERAさんの本が面白くって・・・・」と返す。鈴木杏は「笑かそうとしていない時が一番、面白い」と太鼓判（笑）。鈴木裕美は「すごく風通しがいい、誰が何を言ってもいい感じ。楽しい作品になりつつあります。みなさん、頭がいいのと、他人を受け入れる、尊重する、面白がるのがすごくある。『出来ない』という人一人もいない、そこは全員似ていますね」とコメント。良い座組、カンパニーであることが垣間見える。また鈴木杏は「やろと思えばいくらでも稽古できる」と語り、鈴木裕美は「私たちがやる『フローズン・ビーチ』になって来ているな、と」コメント。ブルゾンちえみは「結果的には35億点と言えるように」と意気込んだ。また途中から合流した花乃まりあは「最初は『えらいこちゃ』って思ったんですけど、みなさんとても優しくって愉快で尊敬出来ます。裕美さんが『わからないことをわからない』と言うことを許してくださるので・・・・正直に頑張りたい」と改めて意欲を示す。
また、この戯曲については皆、いちおうに難しいと語る。ますます楽しみな舞台、最後に鈴木裕美は「サスペンス・コメディです。この人たちが殺したり、殺されたり、殺そうと思ったりするんです。同時に救ったり救われたりすることも起こる不思議な本で、時代性、バブルって言う時代がどうだったかとか、いろんなことが書かれていますが、この４人の女優が楽しいです。この方たちのファンであれば絶対に観た方がいいです！」とコメント。そして鈴木杏は「舞台『フローズン・ビーチ』、あと１週間ちょっと稽古して、東京もそうですが、いろんな場所に伺います！いろんなことが起こる、こんなに傷だらけになりながらも、離れられないでいる女の話、楽しんでいただけるように！お待ちしております」と締めて会見は終了した。
＜キャスト＞
鈴木杏
ブルゾンちえみ
花乃まりあ
シルビア・グラブ
【公演概要】
原作：ケラリーノ・サンドロヴィッチ（KERA）
演出：鈴木裕美
日程・場所：
＜プレビュー公演＞
2019年7月12日〜7月14日杜のホールはしもと・ホール
＜新潟＞
2019年７月25日 長岡市立劇場大ホール
＜福島＞
2019年７月28日 いわき芸術文化交流館アリオス大ホール
＜東京＞
2019年7月31日〜8月11日 シアタークリエ
＜大阪＞
2019年8月16日〜8月18日 サンケイホールブリーゼ
＜静岡＞
2019年8月21日 静岡市清水文化会館マリナート
＜愛知公演＞
2019年８月23日 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
＜高知公演＞
2019年8月28日 須崎市市民文化会館
＜高松公演＞
2019年8月31日 レクザムホール（香川県民ホール）小劇場
企画・制作：東宝 キューブ
公式HP：http://www.keracross.com
取材・文：Hiromi Koh
