原作:にしのあきひろ、脚本・演出:なるせゆうせい 音楽劇「Zip&Candy」自分が動けば世界は変わる、自分も変わる!

鬼才・にしのあきひろ二冊目の絵本として出版された『Zip&Candy』。ロボットファンタジーであるこの絵本を、なるせゆうせいがアレンジし、音楽劇として舞台化される。
ダブル主演のジップとキャンディは、元SUPER☆GiRLSで女優として着実に実力をつけている浅川梨奈と、映画『カメラを止めるな!』のヒロインであり、今作がカメ止め後初主演舞台となる秋山ゆずきが、8公演ずつ演じ分ける。(全16公演中8公演がジップ浅川梨奈、キャンディ秋山ゆずき、さらに8公演がジップ秋山ゆずき、キャンディ浅川梨奈)。
旧型ロボットのキャンディ(浅川梨奈、秋山ゆずき/Wキャスト)のモノローグ、「外の世界を見てみたい」とつぶやく。一方、カレルヤ博士(緒月遠麻)は最新型のロボットを完成させる、名前はジップ(浅川梨奈、秋山ゆずき/Wキャスト)。ジップは男の子で闊達なロボット、天真爛漫といえば聞こえはいいが、思ったことは口にして行動に移す。そしてライト(加藤凛太郎)とレフト(松村泰一郎)というウイングを操って空を飛び回る。自分から積極的に動くキャラクターだ。

キャンディは外の世界に憧れてこっそりテレビを見るが、サンドイッチ博士(星田英利 )に見つかって怒られてしまう。彼女は、なぜ、博士が怒るのかがわからない。ひょんなことで、この対照的なロボットが出会う、それが周囲の人々を巻き込み、大騒動に。この2人の出会いによって人々の人生が動き出す。土星の治安維持のために心を砕くステイ区長(校條拳太朗)、その息子のヒア(内海啓貴)、友達がいない、ちょっと寂しい少年だ。貧しいビン(米原幸佑)、カン(西田薫子)、ペットボトル(中村翼)、彼らは最新型のロボットを欲しがっている、キャンディを作ったサンドイッチ博士にジップを発明したカレルヤ博士、この騒動を通して彼らもまた変わっていく。

悪人は一人もいない、ただ、何かが足りない、何かが欲しいと思っている。友達が欲しいヒアは自分から働きかけて、人と関わっていこうとするが、父が権力者、それゆえに利用されたりもする。一方の父であるステイはデパートであるアンドロイドを購入、それはママボ(平田りえ)、いなくなった妻に似ていたからだ。そしてカレルヤ博士もまた自身が抱えていたある寂寥感からジップを作ったのだった。
このキャラクターたちが抱えている一種の『寂しさ』が実は大きなエネルギーとなっていく。負の方向ではなく、自分を変えよう、変わりたいというプラスの欲求、ただ、それが時には空回りしたり、周囲を巻き込んだりもする。それでも自ら動いて何かを得ようとする。また、良かれと思ったことが裏目に出たりもする。それでも前に進もうとする心。そういった心情を歌で綴る。テーマ的な楽曲の歌詞「自分が動けば世界は変わる」。ここに出てくるキャラクターは全てが能動的だ。一見受け身に見えるキャンディも、だ。博士のいいつけを破ってまで外に出た勇気、そしてジップのために行動する。その結果は必ずしもハッピーだったとは言い難いものであったが、それで後悔はしていない。ジップはもともと積極的に行動するキャラクターでちょっと自己中なところもあったが、様々な出来事を通して、”誰かのために”という意志も生まれ、それを行動に移す。
終始、アナログな表現、空は飛ぶが、フライングは使わない。心で飛ぶ、というのであろうか、単なるマイムを超えての動きで、ここが舞台らしさ。ゲネプロではジップが浅川梨奈、キャンディは秋山ゆずき、良いコンビネーション、回によって役が入れ替わるが、こちらも楽しみ。校條拳太朗はある意味、老け役であるが、なかなかの貫禄を見せ、米原幸佑は軽やかな明るい貧乏人を演じてアクセントに。星田英利は出番は少ないが、存在感があり、サンドイッチ博士の悩みを深みを見せて表現する。カレルヤ博士演じる緒月遠麻はさすがの歌唱力。

哲学的で内省的なところもあるが、ファンタジーゆえの楽しさ、そしてピリッとしたシニカルさもあり、大人が見ても子供が見ても楽しい舞台、すっきりはっきりとしたハッピーエンドなのかと言われるとそうではないところもあるが、ラストシーンは希望の光が見える。ロボットは人間ではないが、人間よりも人間臭いロボット。もしかしたら現代人の方がロボットぽいかもしれない。楽しくもあり、考えさせられる舞台であった。

なお、ゲネプロに先駆けて囲み会見があった。登壇したのは浅川梨奈、秋山ゆずき、校條拳太朗、米原幸佑。浅川梨奈は「個人的には、ジップは小学生の時の自分とそっくりで言葉がしっくりくる、似ている」とコメント、一方の秋山ゆずきは「キャンディの方がわかりやすい、自分に近いのはキャンディかな?お芝居としてはジップの方がバーーンという感じ」とコメント。楽曲が意外と多く浅川梨奈は「二人合わせて10曲ぐらい?」と語る。ダンスは「結構、がっちり」と校條拳太朗。そして浅川梨奈は「いつもの5倍ぐらい温かい目で見てもらえたら(笑)」と笑いを誘った。もし生まれ変わるとしたら?の質問には浅川梨奈、秋山ゆずき二人とも「ジップ」だそう。理由は「最新型だから」(浅川梨奈)、「空が飛べるから」(秋山ゆずき)。それに対して米原幸佑は「新しいPCは苦手(笑)」といい、校條拳太朗は「旧型」と回答。またそれぞれの印象については秋山ゆずきは浅川梨奈に対しては「可愛いと思ったら結構、男前!」、役にぴったり!そして浅川梨奈は「すごく真面目に一つ一つのことを取り組む。勉強になりました。引っ張ってくれるので、みんなまとまって楽しく稽古できた、典型的なA型!」とコメント。ちなみに浅川梨奈はB型、秋山ゆずきはA型(一同、納得、米原幸佑曰く「すごい!」)。最後にPR。
「16公演と長いので
・・・・絵本原作でお子さんが見てもわかりやすく楽しんでも見られる、親子連れでも!温かい作品です」(米原幸佑)
「作品を知っている人はさらに!」(校條拳太朗)
「新しいキャラもたくさんあって、押しキャラを日替わりで!可愛らしいキャラクターがたくさん!絵本も買って楽しんで!」(秋山ゆずき)
「心があったまる素敵な作品です。歌あり、踊りあり、キャラクターも個性的です。ステージの楽しさ、賑やかさが伝わります。雨女で雨の日の始まりが多いです(笑)」(浅川梨奈)

<ストーリー>
これは地球から遥か遠くの土星の裏側のお話。ジップと名付けられたロボットは、カレルヤ博士と助手コケルの手によって誕生した最新型のロボット。ライトとレフトという左右のウイングを操り、どこまでも高 速でひとっ飛び。だが、ある日、その最新鋭のロボットを欲しがるビン・カン・ボトルという貧困民たちに 撃ち落とされる。ジップが墜落したのはサンドウィッチ博士の研究所。そこでキャンディという旧型ロボットと出会う。その研究所から一歩も出たことがないというキャンディのため、ジップは外の世界に連れ出す が、それが予期せぬ展開に・・・。土星の治安維持に努めるステイ区長、そのボンボン息子ヒア、はたまた、 地球への帰還を企むカンバック一味ほか、個性豊かなキャラクターたちも巻き込むロボットファンタジー。

【公演概要】
タイトル:音楽劇「Zip & Candy」
原作:にしのあきひろ 「Zip & Candy」(幻冬社)
脚本・演出:なるせゆうせい
日程:2019 年 7 月 4 日(木)~14 日(日)
会場:俳優座劇場
チケット:プレミアム席¥9,800 S 席¥7,800 ※プレミアム席は非売品プレミアムお土産付き 好評発売中!
キャスト:浅川梨奈 秋山ゆずき/校條拳太朗、米原幸佑、内海啓貴、反橋宗一郎、古畑恵介、加藤凛太郎、足立英昭、岩城滉太、田中孝宗(劇団俳優座)、後藤紗亜弥、中江早紀、中村翼、あまりかなり、西田薫子、平田りえ、松村泰一郎/緒月遠麻/星田英利 他
主催:音楽劇 Zip & Candy 製作委員会
公式サイト:http://zipandcandy-stage.com/
公式ツイッター:@zipcandystage
問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799