中村雅俊の芸能生活45周年のアニバーサリー公演が上演中だ。一部は芝居、中村雅俊は勝海舟の父である勝小吉を演じる。
幕開きは明治座らしい華やかなオープニング、客席通路から瓦版屋が登場し、客席を盛り上げる。幕が開けば舞台は賑やかな江戸時代の街、たくさんのシャボン玉が宙をフワフワ、客席まで！花道から物売りが登場、噂話をする人々、女性を追いかける侍、浪人ではなくお奉行様！それはダメでしょ！と思う間もなく、「よ！待ってました！」の声が！勝小吉（中村雅俊）が登場！出世から外れたことを小馬鹿にする侍たち、早速アクション、「覚えてろよ！」の捨ぜりふ、この展開に客席は大いに盛り上がる。そこへ、女性と一緒に勝麟太郎（東啓介）がやってくる、追われている様子、浪人風な侍３人。麟太郎は「争うつもりはない」というが、小吉はそんな息子が歯がゆい、「戦うんだ！麟太郎！」と檄を飛ばすも・・・・・、決して刀を抜かない麟太郎。小吉はすぐに手が出る方だが、麟太郎は真逆、平和的に物事を解決しようとする性格だ。そんな小吉を兄の彦四郎（田山涼成）は「また、暴れたのか」と呆れ顔だ。そして「隠居しろ」と言い出す。さらに息子の麟太郎までに「隠居した方がいい」と言われるように。そんな折、街では辻斬りが・・・・・・物騒な・・・・・・。そこで小吉の甥である想一郎（寺脇康文）はある行動に出るも・・・・・・。
真面目な時代劇かと思いきや、お笑いあり、奇想天外な展開あり、実在の人物が登場しながらのファンタジー、史実では小吉は着道楽で喧嘩を好み、剣の腕も立ち、日頃の行いのせいで役を得る事はできず、刀剣の売買や町の顔役のような事をして過ごしていたと言われている。そんな史実に基づいたセリフもあり、ここは興味深い。
また、途中でなぜかギターケースを持ってくるシーンもあり、ファンは期待！ちょっと弾いてくれるのでここはファンサービス（本人の歌はなし）。街の人々が賑やかに歌い踊る、ここは文句なく楽しいシーンに。
そしてラスト近く、甥の想一郎が！絶体絶命のピンチに！そこへ！颯爽と！空から！じゅうたんに乗って！ここは見所！そして、小吉の持っている刀が！武将が多数出てくるゲームに出てきそうなすごい刀が！「江戸時代だよね」というツッコミは野暮、この刀を使った立ち回りは抱腹絶倒だ。麟太郎はまっすぐに生きている父を尊敬、そして危なっかしい行動に出る夫を暖かく見守る妻・お信（賀来千香子）、小吉を慕う街の人々、いつも小吉の行動に苦虫を潰したような顔の兄の彦四郎に、そんな小吉が好きな甥の想一郎、実はなんだかんだと言っても皆、小吉が大好き。明治座らしい、楽しい賑やかな舞台、役者も揃い、安定感のある座組、そしてアニバーサリーらしい華やかさ、ラストシーンはまた、人々が行き交う街の雑踏、江戸時代はもうすぐ終わることを観客は知っている。そんな時代とはどこか無縁に人々は日々を生きている、そんなことに思いをはせることもできるエンディング。文句なく楽しい芝居であった。
３５分の休憩をはさんで、二部はライブ。中村雅俊といえば『ギター』、ところがサックスを持って登場、大きな拍手が起こった。ユーモア溢れるトークを挟みながら、たっぷりと歌唱、ハーモニカやキーボードの演奏を挟みつつ、こちらも大いに盛り上がった。また途中で詰襟姿とセーラー服姿の学生が登場し、踊る（70年代風）また、９月29日より45周年のコンサートツアーも始まり、7月1日にはベストアルバムをリリース、中村雅俊に『隠居』の文字は似合わない。
＜第一部＞
芝居『 勝 小吉伝 ~ああ わが人生最良の今日~ 』
≪STORY≫ 江戸もそろそろ終わりを告げそうな頃。一人自由気ままに生きている男がい ました。 その男とは、戊辰戦争で江戸無血開城を果たした男・勝海舟・・・・・・・の父・勝 小吉。
やりたいことはする、思ったことは言う、考えるよりも先に体が動く… その性格が災いして出世の道から外れたが、その潔さに心惹かれて 頼りにしてくる人がたくさん!町を歩けばみんな知り合い!
しかしある時、小吉は街で問題を起こし、兄の彦四郎から「隠居しろ」と詰め寄られ,
「おれはまだじじいじゃねえ!」と言いつつも、小吉、大ピンチ! その頃、街では辻斬りが横行し、小吉の甥・剣豪の想一郎が一肌脱ぎますが、
思いも寄らぬ誤解を招き、こちらも大ピンチ!
こんな勝手な男を小吉の妻・お信は、冴え渡る機転と広く深い博愛すぎる心で 受け止めます。 そして、この父と母の背中を見て育った息子・麟太郎は、強烈なリーダーシップでこの国を変えていく男に成長していくのです。
最後に「俺みたいになるな!」とわざわざ本に書き残して人生を全う した勝小吉を、中村雅俊が熱演します!
[スタッフ]
脚本 鹿目由紀
脚本・演出 鴻上尚史
[出演]
勝小吉 中村雅俊
女房お信 賀来千香子
勝麟太郎 東 啓介
君江 愛加あゆ
片目 山崎銀之丞
男谷彦四郎 田山涼成
男谷想一郎 寺脇康文
＜第二部＞
中村雅俊 LIVE 「 yes!on the way 」
中村雅俊が贈る代表曲を中心とした45周年アニバーサリーライブ。
【公演概要】
日程：2019年7月6日(土)~7月31日(水)
一部 脚本 鹿目由紀 / 脚本・演出 鴻上尚史 「勝小吉伝 ~ああ わが人生 最良の今日~」
二部 中村雅俊 LIVE 「yes! on the way」
開演時間：12:00/17:00
劇場HP：https://www.meijiza.co.jp
