《対談》ミュージカル「スタミュ」吉谷光太郎(演出)×杉本美佳(アニメプロデューサー)

「スタミュ」は、2015年10月より12月までTOKYO MXで第一期が放送され、その後はOVA発売、そして2017年4月から6月まで第二期が放送され、現在、2019年7月より第3期が放送中だ。舞台化はミュージカル「スタミュ」のタイトルで2017年に上演され、その後、2018年にteam柊単独レビュー公演、そしてミュージカル「スタミュ」-2ndシーズン-、2019年の1月にはミュージカル「スタミュ」スピンオフ『SHUFFLE REVUE』、5月にはteam柊単独公演『Caribbean Groove』、そして、いわゆる『本公演』ミュージカル「スタミュ」-3rdシーズン-がいよいよ始まる。出演者もシリーズ史上最多人数!この人気シリーズの『発祥』から今回の見どころまでをアニメプロデューサーの杉本美佳さんと演出の吉谷光太郎さんにあますことなく大いに語っていただいた。

「私、歌って踊る作品が好きなのです(笑)」(杉本美佳)
「ミュージカルが題材の作品をさらにミュージカルにする、すなわちそのままなので、難しいなというのはありましたし、話題になったのはよかったです」(吉谷)

――今回のミュージカル「スタミュ」はアニメとは違ったオリジナルの内容になるとのことですが、振り返ってみますと本当に作品数も多く、すっかり人気コンテンツですが、アニメ放送が決まった時点で舞台化はすでに決まっていたのでしょうか?
杉本:実はまったく決まっていませんでした。単純にTVアニメでミュージカルという題材を描きたいな、ということで企画が決まったので、アニメ化の話が立ち上がったときには全く舞台化のお話もなかったです。舞台の制作チームがうち(ユニバーサル)にはないので、自社でもどうにもならなくて。
吉谷:アニメがはじまった2015年当時だったらまだ、メディアミックスは珍しかったですよね。
――ということは、アニメでミュージカルをやりたい、と考えていたのでしょうか。
杉本:私、歌って踊る作品が好きなのです(笑)。社内では、女性向けでオリジナルアニメを開発する、ということだけ決定していました。
学園モノ要素も取り入れられる『タカラヅカ男版』という方向性が決まり、それから多田監督や構成のハラダさんに担当していただき、要素が固まっていきました。多田監督がアニメ「黒子のバスケ」の監督を手掛けていらっしゃったので、スポ根要素も入れようということになって、スポーツものによくあるチームやバトル展開を提案していただきました。
吉谷:アイドルにもチーム○○ってありますけど、そこでアイドルにいかなかったのは?
杉本:先輩後輩といった学園生活を十分に描きたかったのもあるし、アイドルのような幅広い年齢がいる要素は避けたかったというのがあります。
――確かにアイドルものになってしまうと、学園生活より仕事がメインになりますしね。
杉本:それに、環境もかなり変わってくるので同じ経験を分かち合える同じ年代、ということにこだわったんです。
――そして待望の舞台化につながっていって・・・・・。
杉本:お話をいただけたのはとても嬉しかったです!と同時に、キャラクターが多い作品ですし、ミュージカルをさらにミュージカルにするということでどんな舞台ができあがるのか楽しみでした。
吉谷:「幕末Rock」のようなライブではなく、ミュージカルが題材の作品をさらにミュージカルにする、すなわちそのままなので、難しいなというのはありましたし、話題になったのはよかったです。
杉本:略称は「スタミュミュ」か、とファンの方たちも話していました(笑)。

<初演より>

「アニメでは映像として主人公である星谷をフィーチャーしますが、実際はサイドにteam柊がいたりして、『team鳳がこれをやっているとき、team柊たちはここにいたんだ』ということがわかるのは、舞台ならではと思います。」(杉本)
「アニメーションでミュージカルを作るということ自体が、さらに難易度の高いことをされているなという印象を受けました」(吉谷)

――最近の舞台ではミュージカル「スタミュ」スピンオフ team柊単独公演『Caribbean Groove』はただ劇中劇をやるだけではなくて、キャラクターが舞台を終えたあとも舞台にしていたのがよかったと感じました。
吉谷:登場人物が役柄から「スタミュ」の世界へと戻る部分ですね。
杉本:ミュージカルとして演劇“だけ”、辰己琉唯ではなく彼が演じる“クリス”としての姿だけをみせるという選択肢もあったと思います。ですが「スタミュ」のキャラを観に来ているお客様もいるはずなので、劇中劇の前後に「辰己琉唯」を登場させました。
吉谷:逆にそうであることで、本編で辰己琉唯が“クリスを演じている”という姿を描けたのではないかと思います。
杉本:公演が2回終わったような感じを受けますよね。櫻井さんが演じる「辰己琉唯」、辰己琉唯が演じる「クリス」という二重構造で。役者さんのファンもキャラクターのファンも楽しめる内容になっていたところが好評をいただけました。

<team柊単独公演『Caribbean Groove』より>

――ベースとしてチームのキャラクターもはっきりしましたね。初演こそアニメに沿った内容でしたけれど、アニメで描かれていない部分を舞台でやるというのは一つのやり方だなと思いました。
杉本:そこは吉谷さんのおかげで出来上がっていたと思います。アニメでは“この画面の外にはどんな物語があるのか”ということは絵では出しようがありません。アニメでは映像として主人公である星谷をフィーチャーしますが、実際はサイドにteam柊がいたりして、「team鳳がこれをやっているとき、team柊たちはここにいたんだ」ということがわかるのは、立体感のある舞台ならではと思いますね。
吉谷:舞台を創っている僕らからすれば、アニメーションでミュージカルを作るということ自体が、さらに難易度の高いことをされているなという印象を受けました。
杉本:「スタミュ」の曲と振付はキャッチーさを全面に押し出すために、あえてポップス多めにしています。でも舞台化したときにミュージカルっぽくない曲ばっかりでそれを逆に舞台化するほうが難しそうだなと思いました。背景も急に花が咲いたりとか、アニメ的な描写が多いですし……。(笑)
吉谷:アニメで、あるワンカットで衣装を着替えるシーンは、舞台では物理的な事情もあって無理だったりするので、それも含めてどれだけ制限のある中で遊べるかな、と試行錯誤を繰り返しました。アニメが持つ“テンポ感”を舞台にどれだけ踏襲できるか、舞台ならではの機構を使って、少しでも浮いているように見せたりしたかった。なので!最初から“動くセットにしよう!”と決めました。今回もセットが動いていないことがほとんどないんです(笑)。
――アニメにどういう手法で近づけるか、が2.5次元舞台の壁というか課題ですよね。
吉谷:実は“キャッチーなポップス”なのがすごく助かっています。ガチガチに固めなくても遊んでいい部分があるなと感じられたので。生徒役の子がセットを動かしていてもショーの一部に見えてくるような、いい意味のヌケ感がある。物語としても起承転結がはっきりしていて、より誰もが楽しめる作品だなと感じます。

「初演と2ndがアニメベースなので、それがあるからこそ今回できたオリジナルストーリーだなと思っています」(杉本)
「役者と演出がディスカッションしたりするシーンもあったりするんです。舞台ができていく経過をエンタメにするというのは、あまりないことだと思いますね」(吉谷)


フランシス役 樋口裕太


アレクサンドル=ベルナルド役 法月康平

――そして、今回初めてのオリジナル展開なんですよね。

吉谷:オリジナルキャラは新進気鋭の23歳の演出家っていう設定で、それを僕が演出するなんて(笑)。また、作中にちょっとした「舞台あるある」を仕込んだりしています。スタミュって今まで裏方にフィーチャーしたことがなかったんですよね。
杉本:月皇のお父さんが演出家というくらいでしたね。
吉谷:演出家が星谷たちと相対するということによって、またキャラクターの表情、反応も変わってくるので、今までのスタミュを観てきている人にも新鮮な感覚が味わえるのではないかと思います。
杉本:初演と2ndがアニメベースなので、それがあるからこそ今回できたオリジナルストーリーだなと思っています。最初からスタミュは“お仕事アニメにはしない”というのが前提であったので、演出家という裏方のキャラクターは出さなかったんです。ただ、初演、2ndとやってきた「スタミュミュ」の歴史に対するお返しという意味でオリジナルストーリー、そしてオリジナルキャラを登場させることにしました
吉谷:ストーリーも、ええ!?舞台、フランスですか!?修学旅行でフランス行っちゃう!?そんな部分もスタミュらしいですよね(笑)。
杉本:スタミュらしさが存分に詰まっていると思います(笑)。また、青春モノなので、星谷のがんばり、そして星谷を演じる杉江さんほか周りのキャラたちのがんばりがリンクするというのも「スタミュミュ」の良さでもあるんじゃないかな、と思います。
吉谷:役者と演出がディスカッションしたりするシーンもあったりするんです。舞台ができていく経過をエンタメにするというのは、あまりないことだと思いますね。
杉本:今回、揚羽、蜂矢、北原、南條も初登場で、彼らもいい一石を投じてくれていて、そこも楽しみです。また、オリジナルに合わせた新曲も盛りだくさんです!
――新曲は楽しみですね。それでは、最後に締めの言葉をお願いいたします。
吉谷:もちろんたくさん動く舞台セットもありますし、キャラクターも過去最大人数で、ショーとしてのパワーも最大ということを楽しんでいただきたいなと思っているのと、誰がどのタイミングで観ても楽しめる青春ドタバタミュージカルに出来上がっているので、肩の力を抜いて楽しんでいただければと思います。
杉本:今回は現在放送中の第3期より後のお話になっているので、アニメを観終わってから観劇するのも面白いお話になっていると思います!
――ありがとうございました。公演を楽しみにしております。

<ストーリー>
STAGE は永遠じゃない。いつかは自分で幕を引く。最高の演出で。
それが――美学というものだ。
『憧れの高校生』を追って、音楽芸能分野の名門・綾薙学園に入学した星谷悠太は、team 鳳の仲間と共に、学園の花形であるミュージカル学科への入科を果たした。 2年生に進級し、新しい出会い、新しい試練を経て、ついに果たした憧れの高校生・鳳樹との共演。team 柊、team 楪、team 漣と いう仲間を得て、一回りも二回りも大きくなったカンパニー。 そんな星谷と仲間たちが迎える新たな物語の舞台は――フランス!?
夏の卒業記念公演と秋の綾薙祭公演を終えた星谷たちミュージカル学科2年生。冬の一大イべントである修学旅行でフランスのパリへとやって来た。束の間ミュージカル俳優の卵であることを忘れて楽しむ星谷たちだったが、蜂矢がスリに遭遇したことで平和 ムードが一変。スリを追ってパリの街に迷い込んだteam 鳳が謎の男たちに拉致された!? 残されたメンバーの前に突然現れたのは、里帰り中(&付き添い)のあの人たち!?
時同じくして――フランス演劇界には大きな動きが……。 キーパーソンは新進気鋭の若手演出家・アレクサンドル=べルナルド(通称アレックス)。優秀だが傲慢な彼のお目当ては、日本ミュージカル界のプリンス・月皇遥斗。しかしブロードウェイ遠征中の遥斗は彼の舞台には立てないと告げる。その代わり、と遥斗が提示した未来の日本ミュージカル界の担い手たちとは……。
青春ドタバタ・ミュージカル、新たな幕が上がる――。
<出演>
星谷悠太役 杉江大志、那雪透役 山中翔太、月皇海斗役 反橋宗一郎、天花寺翔役 橘龍丸、空閑愁役 新里宏太
辰己琉唯役 櫻井圭登、申渡栄吾役 北川尚弥、戌峰誠士郎役 丹澤誠二、虎石和泉役 高本学、卯川晶役 星元裕月
揚羽陸役 大見拓土、蜂矢聡役 石田隼、北原廉役 澁木稜、南條聖役 小波津亜廉
楪=クリスチアン=リオン役 釣本南、漣朔也役 TAKA(CUBERS)
フランシス役 樋口裕太/アレクサンドル=ベルナルド役 法月康平

仲田祥司、吉田邑樹、多田滉、千大佑、田邉凜、村上拓哉、安久真修、伊藤春斗

【公演概要】
作品名:ミュージカル「スタミュ」-3rd シーズン-
日程・場所:
<東京公演>
2019年8月12日(月祝)~25日(日)18公演/日本青年館ホール
<大阪公演>
2019年8月29日(木)~9月1日(日) 7公演/森ノ宮ピロティホール
原作 : ひなた凛
脚本 : ハラダサヤカ
演出 : 吉谷光太郎
振付 : ただこ
主催 : ミュージカル「スタミュ」製作委員会
公式HP : http://star-mumu.com
公式Twitter: @star_mumu
取材・文:Hiromi Koh
構成協力:佐藤たかし