怪しく耽美な世界が東京に舞い降りる!『怪奇幻想歌劇「笑う吸血鬼」』東京公演

 

2018年4月19日(木)に怪奇幻想歌劇『笑う吸血鬼』の東京公演が開幕した。本作は「based on origin」projectの第1弾として『地元出身クリエイターによる地元発の舞台』を掲げ企画された丸尾末広氏の名作漫画「笑う吸血鬼」の舞台化作品で、2017年末に大阪にて上演され話題となった。そんな話題作が満を持して東京にて上演となる。

原作「笑う吸血鬼」は、1998年からヤングチャンピオン(秋田書店)にて連載され、2000年に単行本化。2016年9月にはKADOKAWAのビームコミックスにて新装版として全2巻で刊行されている不朽の名作漫画。未だに根強いファンがいる同作品を、関西発劇団の中でも異彩を放つ2人である丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)と山崎彬(悪い芝居)が初のタッグを組むことで舞台化している。

「第45回伊藤熹朔賞 新人賞」を受賞した舞台美術(竹内良亮)にも注目だ。満月に覆いかぶさるような巨大な骸骨が印象的なステージに様々な映像や照明と渾然一体となることで、怪しく耽美な吸血鬼の世界が実現されている。朱に染まり、闇に包まれるステージが丸尾末広の美しき耽美画の世界へと観客を誘うことだろう。さらに、音響効果や楽曲にちりばめられた不協和音が観る者の心をかき乱し、危うくも悲しい物語へとのめり込ませる。

物語は、謎の駱駝女(らくだおんな)から血を受けたことで、十四歳の美少年・毛利耿之助が吸血鬼となることから始まる。そして第二の吸血鬼となった同級生の宮脇留奈。2人の運命は……。原作1コマ1コマの構図やセリフが忠実に再現され、歌とダンスによる“怪奇幻想歌劇”として実現された舞台版は原作ファンも納得の出来栄えに違いない。

その一方で、耿之助と同じ学校に通う辺見外男と橘マコトの2人の物語は原作では別々のエピソードで描かれていたが、舞台版では同じ時系列の中で描かれている。その違いによって、原作に忠実なストーリーでありながらも、舞台版として短い時間の中でうまく再構成されていると感心させられる。

主人公・耿之助を演じるのは大原海輝。吸血鬼へと変貌した自分がその世界に溺れていく様を楽しむような姿と、吸血鬼となった留奈への思いに悩む姿を熱く演じきっていた。ある事件に巻き込まれたことで、怪しく儚い吸血鬼の世界へと身を落とすことになる留奈役の飛鳥凛は、美しくも単純なヒロインではない難しい役回りに体当たりで挑む。

外男役は、東京公演からの新キャストとなる千綿勇平が務める。吸血鬼に憧れ、放火を繰り返すという外男に対して千綿による狂気の演技が魅せる。幼い頃に行方不明となった姉を捜すマコトを演じるのはゆうたろう。純粋な心を持ちながらも、最後に訪れる運命を受け入れるマコトを演じる姿に目を引かれた。

大原ら4人の俳優たちの周りを固めるのは、駱駝女役の柄谷吾史、沼夫人役の野村麻衣(悪い芝居)、バヤカン役の森田真和。それぞれ違った背景を持つ吸血鬼たちを演じる3人が存在感と共に舞台に安定感をもたらす。

不朽の名作漫画「笑う吸血鬼」と関西気鋭のクリエイター、そして若き俳優たちがコラボレートした新しくも耽美な世界。これからの「based on origin」project」に期待したくなる作品だ。

なお、初日を迎えたキャストからコメントが届けられたので紹介する。

柄谷「駱駝女役の柄谷吾史です。舞台は総合芸術なんだと改めて感じる舞台です。何一つ欠けても成り立たないのです。そんな舞台、怪奇幻想歌劇「笑う吸血鬼」を是非ご覧下さい。そして、感じて下さい。劇場でお待ちしております。」

千綿「外男を大阪公演から引き継ぎ、ただなぞるだけでなく、僕が入ったことで新しい外男としていい変化をもたらせるように努力してまいりました。『笑う吸血鬼』、この世界観を多くの人に感じて、浸ってもらいたいです!」

ゆうたろう「お芝居は勿論、歌、ダンス、殺陣と盛り沢山でこの作品の世界観にのめり込める舞台になっているので出来るだけ瞬きしないでご観劇いただきたいです!僕個人としてもこの世界観で美しく生きたいなと思っていますので是非楽しみにしていてください。」

飛鳥「いよいよ東京公演始まります!大阪で沢山のパワーを吸い込んだ作品…東京公演を迎えるにあたり新たなキャストも加わり、同じ作品とは思えない空気感になりました。泣いても笑っても最後!全力で皆様にお届けします。千秋楽まで走り続けます。沢山の方々に笑う吸血鬼が届きますように」

大原「毛利耿之助として、今の僕に出来る全てを注ぎます。【笑う吸血鬼】こそが今の僕にとっての今のハライソです。生きていて、考えていても中々言えないことって多いって思います。その中でも僕はどんな事があっても美しく生きたいと思っています。それが誰かにとっての醜さでも。卑しさでも構わない。誰かにとっての最高と最悪で、ありたい。そして皆さんにとっての渇望とハライソを願って」

 

【公演概要】

怪奇幻想歌劇「笑う吸血鬼」(全労済ホール/スペース・ゼロ提携公演)

期間:2018年4月19日(木)~22日(日)
会場:全労済ホール/スペース・ゼロ

出演:
毛利耿之助役:大原海輝、宮脇留奈役:飛鳥凛、橘マコト役:ゆうたろう、
辺見外男役:千綿勇平、駱駝女役:柄谷吾史、
橘和子役:幸田尚子、沼夫人役:野村麻衣(悪い芝居)、バヤカン役:森田真和、
中山知美役:中西柚貴(悪い芝居)、永田悟役:池田謙信、
近藤哲也役:浅野康之(劇団鹿殺し)、カン役:近藤茶(劇団鹿殺し)
町田尚規、新津昭江、増本優子

原作:丸尾末広『笑う吸血鬼』(ビームコミックス/KADOKAWA 刊)
脚本:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
演出:山崎彬(悪い芝居)
音楽:岡田太郎(悪い芝居) 振付:MAMORU(BE THERE)
企画・プロデュース:4cu
制作協力:プラグマックス&エンタテインメント
製作:怪奇幻想歌劇「笑う吸血鬼」製作委員会(4cu、サンライズプロモーション大阪)   「based on origin」project

©丸尾末広 ©怪奇幻想歌劇「笑う吸血鬼」製作委員会

公式サイト:http://kgk-waraukyuketsuki.com

公式Twitter:@kgk_warauk

 

文:櫻井宏充