舞台「真・三國無双 官渡の戦い」

 

この「真・三國無双」シリーズはコーエーテクモゲームスから発売されているゲームソフトのシリーズ。シリーズ全世界累計販売数は1800万本を超える。

ゲームタイトル通り、中国三国時代の歴史書『三国志』やそれらから派生した小説『三国志演義』モチーフにしつつも、本シリーズ独自の設定が存在する。

基本的には大筋は『三国志』の物語に沿って進行する。黄巾の乱から始まり、虎牢関の戦い、官渡の戦い、赤壁の戦い、合肥の戦い、夷陵の戦い、五丈原の戦いと続いていくのだが、使用する武将によって違いがある。

さて、今回の舞台、官渡の戦い、原作によると中国後漢末期の200年に官渡において曹操と袁紹の間で行われた戦いで、後の赤壁の戦い、夷陵の戦いと共に『三国志』の時代の流れにおいて重要な戦いとされている。狭義では終盤で行われた官渡で行われた戦いのみを指しているが、広義では曹操と袁紹の抗争を含む大きな戦役を指している。白馬の戦いを前哨戦とし、袁紹のところにいた劉備が汝南方面で撹乱戦を起こし、中原一帯を巻き込んでいった。

今回、フューチャーされている郭嘉だが、若い頃から将来を見通す才能があった。天下が乱れようとした時、名前や経歴を隠して密かに英傑たちと交際を結び、俗世間から離れて暮らしていた。そのため多くの人は郭嘉の存在を知らず、有識者の間でだけ名が知られていた。郭嘉は袁紹の下を訪れたが、袁紹の人物に失望して、仕官せずに去った。

その頃、郭嘉の同郡出身に戯志才という人物がおり、曹操の策謀の相談役として尊重されていたが、早くに亡くなっていた。曹操が戯志才の後継者を誰にすべきか、同じく潁川出身の荀彧に対し相談を持ちかけたところ、荀彧は曹操に郭嘉を推挙した。曹操は、召しだされた郭嘉と天下のことを議論し「わしの大業を成就させるのは、必ずやこの者だ」と言った。また郭嘉も退出するなり「真に我が主君だ」と言ったそう。

さて、今回の舞台では、郭嘉(和田琢磨)が曹操(谷口賢志)のところにやってくるところから物語が始まる。幕開きは土砂降りの雨の音から始まり、雷鳴が轟く、風雲急を告げる、といった出だしだ。重層な楽曲、早速の激しいアクション、立ち回り。観客はテンションが上がる瞬間だ。早々に今回のストーリーを彩るキャラクターが集まり、豪華絢爛に決める。袁紹(松浦司)は郭嘉を「生意気な小僧」と言う。

ある程度原作を押さえていれば、だいたい物語の流れはわかるが、ゲームならではのところもあってここは注目ポイント。【天下】に近づいても、いつ、どのような形で形勢が逆転するかわからないのが、この『三国志』の時代。多くの武将が現れては消えていった。郭嘉の策士ぶり、クールだが内に秘めた熱いものを時々ほとばしらせる。そんな姿を和田琢磨がツボを押さえた演技で魅せる。谷口賢志の曹操、重厚な役作りで場面を引き締める。

もちろん、原作の舞台化ではなく、あくまでも「真・三國無双」なので、戦いの場面はゲーム感いっぱい。アナログな演出に映像や派手な楽曲、特殊効果をシンクロさせて、舞台上に「真・三國無双」の世界観を炸裂させる。そしてビジュアル的にかっこいいアクション、刀さばきは西田大輔の真骨頂。とにかくスピーディ、ひとつひとつの仕草も様になっている。

適材適所な布陣、郭嘉は頭の回転が早いだけでなく、情にも厚い。そして各武将たち、それぞれの信じる正義、理想とする国の在り方は異なる。そして、武将なら誰でも夢を見る、天下統一。さらに兄弟の絆もしっかり描かれており、こういった心情は揺さぶられる。いわゆる【荒事】になるが、心の機微がちょっとした仕草で表現、ただかっこいいだけでなく、泣かせる場面もある。こういった武将ものは、これだから面白い。この先の物語も気になってくる。

 

【概要】
舞台「真・三國無双 官渡の戦い」

構成・演出・振付:西田 大輔

出演
郭嘉 役:和田琢磨
夏侯惇 役:渡辺和貴
張遼 役:田川大樹
曹丕 役:白又敦
楽進 役:反橋宗一郎
荀彧 役:奥谷知弘
孫策 役:山口大地
孫権 役:川隅美慎
劉備 役:仲田博喜
関羽 役:磯貝龍虎
袁紹 役:松浦司
張郃 役:寿里
賈充 役:小野健斗
曹操 役:谷口賢志

原作・監修:株式会社コーエーテクモゲームス
企画・製作・主催:ADKアーツ

〈東京〉
日程:2018年4月26日(木)〜5月1日(火)
会場:全労済ホール/スペース・ゼロ
〈大阪〉
日程:2018年5月5日(土)〜5月6日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ

チケット料金(税込):
プレミアムシート 9,800円 ※客席前方席/非売品プレミアムッズ付き
指定席 7,800円

公式WEB:http://smusou-stage.com/

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文:Hiromi Koh