ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“はじまりの巨人”、「絶対に逃げない」己に勝つ!

 

大人気コミックの「ハイキュー!!」舞台化、早くもこれが6作目で、次の秋の公演で烏野高校のキャストが卒業することが決まっている。サブタイトルは“はじまりの巨人”。物語は夏合宿後、春高予選を目前に控えた日向翔陽(須賀健太)と影山飛雄(影山達也)は白鳥沢高校の超高校級のエースである牛島若利(有田賢史)と遭遇する。絶対王者の白鳥沢高校に勝たなければ、全国出場は果たせない。決して負けられないのだ。いよいよ始まる春高予選、変幻自在な条善寺高校、それから和久谷高校との次世代”小さな巨人“との対決!これをクリアしないと次のステージには進めない。

 

開演前、舞台上にはボール、体育館のざわめき、笛の音、ボールの音、これがだんだんとクレッシェンドになる、幕開きだ。

まずはこれまでのお話をコンパクトに。“小さな巨人”に憧れた主人公・日向翔陽、「あんな風になれたらかっこいいと思った」と言う。ランニング風景、映像で本当に沿道を走っているように見せる。それから白鳥沢高校の超高校級のエースである牛島若利に遭遇する二人。「お前の試合を見たことがある」と牛島がいえば「あなたをぶっ倒して全国に行きます!」という日向翔陽。端から見ると『怖いもの知らず』な発言の日向。そしてタイトルロール。いつもの台詞、大音量の音楽、背景の漫画の映像、キャスト一人一人のパフォーマンス、そしてフォーメーション。いつものオープニングだが、何度観ても飽きないシーンだ。

1幕は条善寺高校との試合がメインになる。1年前に監督が変わった事で練習内容が根本から変化し。 「アソビ」がモットー、高い運動能力を活かした型に嵌らない試合運び、主将の照島遊次(船木政秀)はバレーを遊びと捉えており、その清々しいまでに楽しそうで笑顔。運動神経は抜群だ。サンバっぽいラテン系の楽曲主体で試合がダンサンブルに進行する。この型破りな動き、コリオ、観ている方は手に汗握る、というよりもなんとなくウキウキとしてくるから不思議だ。最初は劣勢な烏野高校であったが、次第に追いつめていく。普通は追いつめられるほどに緊張感がアップするのだが、このリズムのせいで、ちょっとノリノリになれる。照島は実に楽しそうに見えるが、ちょっとした仕草に彼の闘志も垣間見える。常にテンションアゲアゲなキャラクターだ。コミックを読んでいるファンなら「おお〜」な技も飛び出す。条善寺高校のメンバーは言う「思い切り楽しく遊ぼうぜ!」と。これはある意味正しいのかもしれない。全力で楽しむことによって強くなれる、ここにこのチームの真骨頂がある。ラテンダンスの動き、ストンプ、あっという間の1幕。

2幕は和久谷南高校との戦い。その前に客席を巻き込んでの応援の練習があるので、ここはしっかりと振りを覚えて欲しいところ(笑)。まずは和久谷南高校、「和久」なだけにワクワク振りがあるので、恥ずかしがらないでやるのがコツ。応援をするのは中島一家、”家族応援団”として原作にも登場する。和久谷南高校のメンバーが客席通路から入ってくる。で・・・・・・それで終わらない!対抗して烏野高校の応援も練習。その声に合わせて烏野高校のメンバーも客席から登場!それから試合が始まる。ジャージーな楽曲で開始!パーカッションの音が力強い。和久谷南高校の中島猛(柳原凛)、和久谷南高校の男子バレー部主将、身長は決して高くない。空中戦でのテクニックに秀でている。実は鳥野高校vs和久谷南高校の間に音駒高校と梟谷高校との試合が挿入されているのだが、どっちもキャストは2人ずつ。鏡のパネルを使っての試合シーン、ここは緊迫感もあり、重層的に見えて秀逸な場面だ。

コミックを読めばわかるが、この試合で田中龍之介(塩田庸平)と澤村大地(田中啓太)が衝突。澤村が負傷離脱してしまうも、代わりに縁下力(川原一馬)が入ることに。彼は大人しい性格、練習の厳しさに耐えられずバレー部から遠ざかってしまった過去があるゆえ、「次期主将」と言われることに対する引け目にも繋がっている。そんな彼が思いがけずにチームキャプテンをすることに。「絶対に逃げない」と言う彼、一瞬一瞬が彼にとっては自分との戦い、対戦校との戦いと同時に自分と向き合い、己の弱い心と戦う。共感も出来、しかも心揺さぶられる瞬間だ。白熱した戦い、互角の勝負、スローモーションや意外性のあるフォーメーション、直線的なダンス、ワイヤーアクションもあり!試合終盤は目が離せないシーンになっている。試合結果をいうのは野暮、原作を読んでいるファンなら言わずもがな。また、映像で青葉城西高校とい伊達工業高校との試合を見せるが、これも見応えあり。

次の秋公演で烏野高校のキャスト陣が卒業する。ちょっと寂しくもあり、ではあるが、その雄姿をしっかりと見ておきたい。

なお、ゲネプロの前に囲み会見があった。登壇したのは烏野高校キャストの須賀健太、影山達也、川原一馬、条善寺高校キャストの船木政秀、和久谷南高校キャストの柳原凛。そして脚本・演出のウォーリー木下。

須賀健太は「いい初日を迎えられそう。毎日毎日、刺激的な日々です」と挨拶。影山達也は「負けられない戦いです。全力で!」と言い、川原一馬は「初演からのポジションです。新しい演劇の形を作りたい」と意欲的なコメント。船木政秀は「初参加です。全力で盛り上げたい、烏野にいい影響を与えたい」と語る。柳原凛はバレーボールそのものに思い入れがあり「毎日、練習していた」と振り返る。

また演出家から「初心に帰る」という言葉も出た。須賀は「稽古場からみんなの気持ちは感じていた」と言い「烏野として3年以上、年々、年老いています(笑)」とやや自虐気味。「下からつきあげられて・・・・・・でも、負けていられない!一緒にご飯食べに行ったり。同士、絆で繋がっているな」とコメント。日本青年館が気に入ったようで「綺麗な劇場!」と満足そう。そして対戦校について「身体が動ける人ばかり!」と語るが、バック転は当たり前。川原が「運動量が増えている」と語ったが、今回は試合シーンが多く、皆、ダンスにバレーのジャンプに身体を張ったシーンの繰り返し。さらに「おじさんと言われている(笑)」とこちらも自虐ネタ。そこへ船木が「フナッキーって呼んで」と。

それから須賀から今回の出演者が最多の33人、さらに登場するキャラクターは60以上とのこと。最後に「秋公演の思いも感じてください!」と締めてくれたが、エンディングは、まさにそんな感じ。ゲネプロ終了後の挨拶でも「SNS等でよかったところや良いところ(ここで一同笑い)をお願いします!」と座長らしく締めて無事にこの日の日程は終了した。

 

【概要】
原作:古舘春一「ハイキュー!!」(集英社「週刊少年ジャンプ」連載中)
脚本・演出:ウォーリー木下

■烏野高校
<日向翔陽>須賀健太/
<影山飛雄>影山達也/
<月島 蛍>小坂涼太郎
<山口 忠>三浦海里
<田中龍之介>塩田康平
<西谷 夕 >渕野右登
<縁下 力 >川原一馬
<澤村大地>田中啓太
<菅原孝支>田中尚輝
<東峰 旭>冨森ジャスティン/

■条善寺高校
<照島遊児>船木政秀
<母畑和馬>森永彩斗
<二岐丈春>鈴木遥太
<沼尻凛太郎>荒田至法
<飯坂信義>安川集治
<土湯 新>松原 凛/

■和久谷南高校
<中島 猛>柳原 凛
<川渡瞬己>正田尚大
<白石優希>木村優良
<花山一雅>Goku
<鳴子哲平>本川翔太
<秋保和光>蓮井佑麻/

■白鳥沢学園高校
<牛島若利>有田賢史/

■音駒高校
<孤爪研磨>永田崇人
<黒尾鉄朗>近藤頌利/

■梟谷学園高校
<木兎光太郎>吉本恒生
<赤葦京治>髙﨑俊吾/
※木兎光太郎役 吉本恒生降板のため、代役として東 拓海が木兎光太郎として出演いたします。

■烏野高校 OB・OG
<嶋田 誠 >山口賢人/
<田中冴子>佐達ももこ/

■烏野高校 マネージャー
<清水潔子>長尾寧音
<谷地仁花>斎藤亜美/

■烏野高校 顧問・コーチ
<武田一鉄>内田 滋
<烏養繋心>林 剛史

【東京】
期間:2018年4月28日(土)~5月6日(日)
会場:日本青年館ホール
【兵庫】
期間:2018年5月12日(土)~13日(日)
会場:あましんアルカイックホール
【福岡】
期間:2018年5月18日(金)~20日(日)
会場:福岡国際会議場 3Fメインホール
【宮城】
期間:2018年5月25日(金)~27日(日)
会場:多賀城市民会館 大ホール
【大阪】
期間:2018年6月1日(金)~3日(日)
会場:オリックス劇場
【東京凱旋】
期間:2018年6月8日(金)~17日(日)
会場:TOKYO DOME CITY HALL

 
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
(TBS/ネルケプランニング/東宝/集英社/キューブ)
 
公式WEB:http://www.engeki-haikyu.com

 
(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会

 

文:Hiromi Koh